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Mov.42 青い鳥
しおりを挟む灰色に煙ってかすみ、ぐちゃぐちゃにゆらめく彼方の赤い星……陰った双眸にぼんやり映し、乾いた流動に押されてよろめきながらユキトは混沌と流れる地を踏んだ。その左横では紗季がひどくゆがんだ荒れ野と陰鬱な空の狭間を見つめ、ぽっかりと間を空けた後方でエリーがプロテクターを外されたカーキ色の制服姿――うつろな顔をした新田の手を引きながら足を前に運ぶ。赤黒い黄昏に染まったデス・バレーを越え、押し潰されそうなほど重苦しい暗黒の夜を経て、彼等は半ば流れのまま西方へ歩き続けていた。
(……僕の、せいだ……)
自分の肩越しに新田をうかがい、ユキトはまたほぞをかんだ。
(……あのとき、転がり落ちなかったら……――)
流動に突き飛ばされてガクッと片膝を突き、呪いに蝕まれた右手で崩れた体を支える……首が折れそうなくらい頭が重く、がんがん痛んでひび割れていく。
(……どうして、こんなことに……)
心配する紗季に大丈夫と答えて立ち上がり、後ろの2人から逃げるように歩き出す……抜け殻になった新田はもちろん、彼を献身的に介護するエリー――心を閉ざして手助けを一切拒み、食事から排泄まですべて独りで背負い込む少女の顔をまともに見ることができなかった。
(……黒の十字架でも、壊れて無くなってしまったものはどうしようもないだろうって、ワンも……)
「――斯波!」
緊張した呼び声に暗澹とした顔を向けると、紗季がヘブンズ・アイズをサッとスライドさせ、見えるようにそばへ送る。
「――Unknownが、複数近付いているわ……!」
「……!」
判然としない3Dマップ上で、白い光点が10ほど接近していた。まだ距離があるのと、空間のゆがみがいつになくひどいせいでモンスターなのかどうかも分からないが、こちらに気付いているらしいそれらは車かバイク並みのスピードで真っ直ぐ向かって来ていた。
「モンスターかも……――エリーちゃん、新田さんと避難してっ!」
警告されたエリーが無言で新田の手を引いて横に離れると、ユキトはこぶしをググッと固め、紗季はイジゲンポケットから出したブレイズウインドに矢をつがえた。だが、その警戒は間もなく驚愕に変わり、両名は3Dマップを見て目を疑った。
「……これ、警備隊よね?」
「……そ、そうだよ……警備隊……矢萩さんたちと……」
距離を縮めた白い光点は、矢萩と三人衆の他に数人――そして、潤のキャラクター・アイコンに変わった。遺跡にいるはずの警備隊が、どうして前方から来るのか?――混乱しているうちにゆがみの向こうから猛獣のうなり声に似た音が響き、土煙とともに――
「――四輪バイク?」
「――バギーだ!」
揺らめきからヴォオッッと姿を現す白いAVT(All Terrain Vehicle)、それに乗ってハンドルを握る者たち――デザインとカラーリングのせいで白虎にまたがっているようにも見える一団は十数メートル手前で停車して降り、矢萩を核に白くいかめしい制服姿が障害物のごとく並んだ。
「……ねぇ」紗季が目で示し、ささやく。「隊服のデザイン、変わってない?」
「うん……まるで軍服みたいだ……」
「よう、元気そうじゃないか、斯波」
うねった焦げ茶髪ごと左右にゆらりと頭を振り、矢萩がなめるようにあごを撫でる。
「――コネクトが通じなくなって大分経つから、どうなったのか気にしていたんだぞ」
「……――」
矢萩に焦点を合わせていたユキトは冷気を感じて横に目をやり、腕組みしている潤の視線に凍りついた。突き刺すまなざしからは、欝々とたぎる炎に似たものが感じられた。
「……ところで……」紗季が、闇で手探りするように問う。「どうして警備隊が、あたしたちの前から来るんですか……?」
「警備隊じゃない。〈ハーモニー軍〉だ」
「ハーモニー軍?」
「そうだよ、イジン。警備隊以上の組織を目指して改編されたんだ。それにしても……」
腕組みした矢萩は後ろに立つ三人衆――真木、中塚、入谷を振り返り、再び前を向いてユキトと紗季、離れたところで新田の手を握って体をこわばらせているエリーを見ていぶかった。
「――遺跡に接近するUnknownを確かめに出てみたら、西に旅立ったはずのお前らがなぜか東からやって来る……どういうことなんだ?」
「ま、まさか、そんな!」
色を失ったユキトはヘブンズ・アイズを開き、縮尺を小さくして「あっ!」と驚いた。空間のゆがみで像がぼやけ、流動の影響で周辺の地形は変化していたが、行く手にあるのは確かにコンコルディ遺跡だった。
「……これって、どういう……」
紗季と青い顔を見合わせ、雲間からのぞく赤い星を矢萩たち越しに見てユキトは立ち尽くした。過酷な環境をひたすら歩き、犠牲者まで出した挙句振り出しに戻るという現実に打ちのめされ、疲労困憊の五体が流動に揺られてふらつく。
「ふん、まあいい。おい――」
矢萩が目配せすると、軍服姿がユキトと紗季をザザッと囲み、それぞれ出現させた得物を構える。
「ちょっ、な、何するつもり?」
「びくつくなよ、イジン。詳しい事情を聴かせてもらうだけだ。無駄な抵抗はするな」
ぼう然としていたユキトは抵抗らしい抵抗もしないまま封印の手錠をはめられ、紗季や逃げようとしたエリーも新田ともども捕まった。手錠を鎖でつながれた彼等は徐行するATVに引かれ、赤い星の下にある遺跡へ虜囚さながらに連行されていった……
「……それで、どうしてこんな夜更けに僕らを呼び出したのですか? ここは、軍に見張られているんですよ?」
白ローテーブルを挟んで鎌田は北倉と顔を見合わせ、並んだアーチ型窓に引かれた艶めくカーテンの向こうを気にして尻をもぞもぞさせた。羽根柄ソファに座る彼等オリジナルTシャツ姿の上座では、カーテンを背にしたツインテールの天使が扇情的な脚を組んでアームチェアにふんぞり返り、定番のロリータ・ワンピース姿をルルフパレス1階応接間天井のシャンデリアの光で燦然とさせていた。
「気合を入れるためよ。プラチナクラスのあなたたちに」
「気合ですかッ、ルルりんッッッ! 分ッかりましたッッ! どうぞやって下さいッッ! ビンタでもパンチでも思う存分ビシバシとォッッッ!」
「今日昼過ぎ、ユッキーたちが軍に連行されて来たでしょ」
ヒートアップを無視してルルフは鎌田に振り、その後の動きはどうなっているのかと尋ねた。
「はい。軍にいるルルラーからの情報によれば、篠沢・エリサ・紗季と葉エリー、新田前リーダーは軍事務所――旧警備隊事務所地下留置場、斯波ユキトは不整地地帯にある自宅で取り調べを受けているそうです」
「黒の十字架について、何か得られたっぽい?」
「今のところ、これといった情報は得られていないようです。彼らの探索は無駄骨折りだったのかもしれませんね」
「まったく訳が分からないなッ。赤い星を目印にして旅を続けたんだろうにッ」
「謎なら、取りあえず置いておくわ。分からなければ誰も手にできないんだから。それよりも……また一騒動起きそう――っていうか、起こせそうなにおいがするのよね~ コリア・トンジョク離脱事件並み、あるいはそれ以上のがドッカーンと」
「あの事件並みの、ですかッッ?」
「そう。あのときは失敗だったわ。騒ぎに乗じて逃げ出していれば、こんな生活も終わりにできたのにさ。だから、今度はチャンスを逃さない。遺跡からさよならして、他のフェイス・スポットを見つけてそこに拠点を構えてやるわ。そのときが来たら、ツートップのあなたたちにはみんなをしっかりリードしてもらうわよ」
レーストリムグローブをはめた手でググッと肘掛けをつかんで身を乗り出し、ルルフは鎌田と北倉を妖しく潤む双眸で交互に見つめた。チャームが瞳を通じて両名をさらに深くとりこにし、半開きになった口から熱くとろけた吐息を漏出させる。
「お、お任せ下さいっ! 僕たちルルラーは、ルルりんのために粉骨砕身働きますよっ!」
「そうですッッ! 一致団結して軍でも何でもやっつけてやりますよッッッ! うおおおおッッッ!」
にんまりしてルルフはアームチェアの背もたれに寄りかかり、胸元にかかるブロンドの流れに指をゆったり泳がせた。大事に先立って呼び出し、恍惚に誘う芳しいフェロモン、天上のメロディさながらの甘い声、あがめずにはいられない麗姿と合わせていっそうがんじがらめにしようというもくろみは、見事に果たされていた。
「――2人とも、これからもルルのためにハイパーに頑張ってねぇ~」
「もちろんです! ハイパープリティ、ルルりんっ!」
「ハイパープリティッッッ! ルルりんッッッ!」
熱狂者たちが右手を高く挙げて敬礼したとき、玄関前で言い争う声が飛び込んで来る。見張りに立っているルルラーと誰かが押し問答をしているのだ。強引に玄関ドアを開けて踏み入る音に鎌田と北倉が腰を浮かすと、応接間に軍服を着たジョアンがずかずか入って来た。
「シャ、シャルマッッ! 無礼だぞッッッ!」
「そ、そうだ! 裏切り者の分際でっ!」
「Shit upッ!」
いきり立つコンビを一喝し、ジョアンは胸を張って白い軍服を見せつけた。
「――ボクに手出しをしたら、公務執行妨害で引っ張るぞっ!」
歯ぎしりする鎌田たちをふんと鼻で笑うと、ジョアンは悠然と座り続けているルルフを斜に見て結んだ唇をねじり、濃い眉をグッとひん曲げた。
「……見張りから不審な動きがあると聞いて来てみれば……こいつらとどういうwilesを考えてるんだ?」
「関係ないでしょ、ストーカー」
「ほっ、What?」
「追放された腹いせに寝返って、ルルの周りをうろつくキモいヤツ。顔を見るのさえハイパー不愉快なんだから、さっさとどっかに消えちゃってよ。シッシッ」
「そうだ! 僕たちはルルりんの顔を見に来ただけで、何もやましいことなんかしていない! 君はルルりんに相手にされたくて難癖を付けているんだろう? とことんみっともないなっ!」
「そうだッ、そうだッッ! 情けないヤツめッッ! 恥を知れッッッ!」
「ふふん、この場で土下座して泣いて謝るんなら許してあげることを考えなくもないけど? どうする、ストーカー?」
「……バっ、バカにするなッ!」
褐色の顔が怒りでゆがみ、激する。
「――ボクは警告しに来たんだッ! もしおかしなことをしたら、こんなコミュなんかすぐに潰されるんだからなッ!」
「はいは~い。それじゃ、とっとと帰って。もう二度と顔を見せなくていいからね~」
「……キ、キミは、いつまでこんなことを続けるんだ……! 改心しようと思わないのかっ?」
「うるさいなあ! いつまでもごちゃごちゃ言ってると、ひどい目に遭わせるよ!」
「早く出て行け! 権威を笠に着るのもいい加減にしろっ!」
「ルルりんをいじめるヤツは、何者だろうと断じて許さないッッッ! ぶち殺してやるぞッッッ!」
今にも飛びかからんばかりの鎌田と北倉にジョアンは後ずさり、胸をナイフでめった刺しにされたような顔でルルフをにらむと、応接間を飛び出して玄関から走り去った。
「まったくろくでもないヤツですね! あんなのがルルりんのそばにいたなんて悪夢ですよ!」
「ホントよ。今すぐにでもハーモニーを離脱したくなったわ」
「お気持ちは悶絶するほどよく分かりますッッ! 早いところ自由になりましょうッッッ!」
「そうだね……手を考えてみるから、カマックとロベーも頭をひねってよ。くれぐれも軍にこれ以上怪しまれないようにね」
「はいッ!」
「了解しましたッッ、ルルりんッッ!」
「うん。それじゃお開きにしよっか。監視の目があるからね」
意気込む鎌田と北倉を帰らせ、ルルフは応接間で座り続けた。外には警備に当たっているルルラーがいるが、ルルフパレス内には彼女以外誰もいない。
「……ふん、マジでうっとうしいヤツ……! あたしの邪魔は誰にもさせない。もっともっともっともっとポイントを手に入れてやるんだから……!」
地を出してひとりごち、ルルフは夢見る瞳をシャンデリアの光できらめかせていやらしく唇を緩めた。
まるで、冷たい沼に沈んでいるかのようだった。
掃き出し窓に引かれて乏しい陽を遮るカーテン……呼吸するほど胸に影が蓄積していくような部屋……ローテーブル越しに鋭く見据える軍服姿の矢萩あすろともう1人の将校――梶浦翔一。自宅の薄暗いリビング――ソファに座らされた上下スウェットのユキトは、グレーの太ももの間に手錠がはまった手を挟み、黒ずんだテーブルにすり減ったまなざしを落としていた。
「何遍言わせるんだ、斯波」腕組みした矢萩がいらつく。「お前たちが得たディテオと黒の十字架に関する情報を残らず吐け」
「だから、何も知らないんですって……昨日から、ずっとそう言ってるじゃないですか……!」
上目遣いでくすぶるように答える相手にため息をつき、矢萩はメガネ男子の梶浦に目をやった。
「斯波君……」梶浦が諭す。「我々が恐れるのは、君たちのつかんだ情報を野心家や小悪党どもが先に知ることなんだ。連中が我々を出し抜くようなことがあったら、取り返しのつかないことになりかねないんだよ」
「逆にこっちが先に情報をつかんで動けば、クズどもを二度と反抗できなくすることだってできる。黒の十字架にはとんでもない力があるそうだからな。お前、ハーモニーの平和と安定のために素直にしゃべろうとか思わないのか?」
「知らないって言ってるでしょう……! そんなに必死になるんなら、どうして僕たちだけで行かせたんですか?」
「佐伯リーダーは、お前らに期待していなかったんだよ。けど、こうして戻って来たら、色々取り調べるのは当然だろう?」
「だから、全部話したじゃないですか! モンスターと戦いながらひたすら西に進んで、新田さんがあんなことになって……いつの間にか遺跡に向かって歩いていた……それだけですよッ!」
声を荒らげ、左右のこぶしを固めるユキトに梶浦は迷いをにじませたが、矢萩は眉間のしわを深め、いら立ちで目をいっそう尖らせた。
「矢萩大尉、彼の言っていることは本当なんじゃ……」
「どうかな……」
腕組みを解いた矢萩はイジゲンポケットから出した日本刀・餓狼を握り、ぎょっとする梶浦を一瞥し、手錠がはまった異形の右手を見下した。
「――こいつは、この醜悪な右手からどんどん人間じゃなくなっている。そんなヤツの言うことを簡単に信用はできないな……――」
軍服姿がローテーブルの横に回ってユキトの鼻先に切っ先を突きつけ、唇を赤く切れ上がらせる。
「脅しじゃないぞ。星をひたすら追っていただけだとしても、何か気付いたことがあるはずだ」
「……だから、何も――」
切っ先がスッと下がり、刃が右太ももにズグッと突き立てられる。うめき声を上げ、血の染みが広がる太ももを押さえる様を見ながら矢萩は手首をひねり、傷をえぐった。
「や、矢萩大尉……!」
「心配するな、梶浦。ポーションを使えば傷も衣服も元通り。大事にはならないさ。――」
刀を引き抜いた矢萩は痛みに震えるスウェットパンツで刃の血を拭い、左手に出したポーションの蓋を外して傷にかけ、蛮行の跡を取りあえず消した。
「ほら、もう痛い思いはしたくないだろ? 言っておくが、ここは周りに何もない不整地地帯のど真ん中だし、詰所にいるヤツらには多少声が聞こえても気にするなと言い含めてあるからな」
「……こんなこと、篠沢たちにもやっているのか……?」
「さあな。あっちはあっちのやり方でやっているんじゃないか? こっちはこっちのやり方でやらせてもらう。さ、正直に話せよ……!」
醜く微笑し、矢萩は顔をそらした梶浦をよそにうっすら汚れた切っ先を再び向けた。
「――聞かれたことにちゃんと答えなさい!」
いら立つ潤の声が4畳半ほどの取調室に響き、向かい側にうつむいて座るエリーが体をいっそう縮める。向かい合わせた机越しに取り調べる潤――その斜め後ろには佐伯が腕組みをして立ち、峻嶮な顔付きでやり取りをじっと見つめる。私服のエリーと白い軍服姿の図は、経緯を知らない者が見たら街頭で補導された少女が事情聴取されているようにも見えるだろう。
「……知っていることをすべて話しなさいと言っているの」
佐伯を気にした潤は顔の朱を薄くし、自分の左側に浮かんでいるボイスレコーダーアプリ――ミミがーを横目でちらっと見て視線を戻した。
「――例えディテオを見つけられなかったとしても、赤い星を追っているうちに何か気付いたことがあるでしょう?」
「……に、新田さんは、どうしているんですか……?」
「また、それ……!」
机上の右手をこぶしにする潤にエリーは顔を上げ、おずおずと言った。
「……そろそろ、おトイレの時間なんです……もじもじするのがサインなんです……だから――」
「そんな話をしているんじゃないの!」
「だ、だって、に、新田さんは……新田さんは1人じゃ何も……わたしがお世話しないと……」
「あなたね、頭の中にはそれしかないの?」
「加賀美」
佐伯が腕組みを解いてたしなめ、厳しい表情のままエリーに近付いて斜め上から見据える。
「新田氏の面倒は部下に見させている。今のところはな」
「い、いつになったら、ここから出してくれるんですか? 新田さんのところに行かせてくれるんですか?」
「……自分は、彼を死なせてやろうかと考えている」
「えっ! な、な、何を言っているんですかっ?」
「君は――」
佐伯は再び腕を組み、辛辣な口調で言った。
「――生けるしかばねのような状態で生き続けることが良いと思うのか? 己の執着や自己満足を抜きにして」
「あ、当たり前じゃないですかっ! 新田さんは生きているんです! 生きているんだから、生きなきゃ! そ、それに、わたしは新田さんをリアルに戻してあげたいんですっ! 奥さんや赤ちゃんがいるところに帰ってもらいたいんですっ!」
「アストラルがあんな状態では、リアル復活してもおそらく植物状態だぞ?」
「そ、それでも、やらなきゃ――わたしが、やらなきゃいけないんですッッ!」
涙ぐみ、裏返った声で叫ぶエリーに潤は閉口し、佐伯は唇を結んだ。人見知りで、内気で、いつも新田の陰に隠れていた少女が、これほど激しく感情をあらわにするのは初めてだった。
「……気持ちはよく分かった。こちらの要求に応えてくれるのなら、君と彼を自由にすると約束しよう」
「ほっ、本当ですか?」
「コミュニティ・リーダーの名誉にかけて誓おう。だから話してくれ。どんな些細なことでも推測でも構わない。君が赤い星を追っている間に気付いたこと、すべて」
「……わ、分かりました」
エリーは真剣に見上げてごくっと唾を飲み、一呼吸間を置いてためらいがちに唇を動かした。
「……青い鳥って童話、知ってますか?」
「知っている。下の妹が、小さい頃よく読んでいたからな。探していた青い鳥は、自分たちのすぐそばにいたという話だろう?」
「そうです……」
僅かに逡巡、そして、これはあくまでも自分の推測に過ぎないと前置きがされる。
「……わたしたちは赤い星を目印に旅をし、その結果遺跡に戻って来ました……これって、青い鳥の話と似ていると思うんです。つまり、その……黒い十字架を持つモンスターは……この遺跡にいるのかもしれません……」
応援ありがとうございます!
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