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「大事な話しがあるんだ。」
悠太の言葉に芽依はスプーンをテーブルにことりと落とした。
「やっぱり…病気だったの……?」
「いやいや、僕の話しを最後まで聞いてくれる?」
「分かった。」
芽依はミネラルウォーターの入ったグラスを取ると、一気に飲み干して悠太の話しに身構えた。
「僕たちはさ、そらと大福のお陰でこうやって一緒に過ごすきっかけを貰ってここまで仲良くやってこられたと思う。大学生活も一緒に生活しながら毎日を送れて大変な事もあったけどいつも協力してくれて本当に感謝しています。4月からはまた生活リズムとか色んな変化があってすれ違いも起こるかも知れないけど、僕にとって1番大切なのは芽依だから、ちゃんと形にしておきたいと思うんだ。だから、僕と結婚してください。」
ジャケットのポケットからさっきの小さな箱を取り出すと、ダイヤのリングが中に収められていて、キャンドルの灯りにきらめいている。
「ごめんなさい…」
芽依は目からポロポロと大粒の涙を流しながら、ティラミスを残したまま席を立った。
「振られた…?」
悠太の頭の中にはプロポーズをして、芽依は泣きながらその場を去ったという事実をどう処理してよいのか混乱してその場で呆然としていた。
「お客様、お連れ様が出ていかれましたが…」
その状況を察してウェイターが悠太に声を掛けてきた。
その声で悠太はようやく我に返り「残してしまってすみません」とやっとの返事をすると芽依を追った。
キーも持たずに出ていったからロビーや出ていって居ないかフロントにも聞いたが外には出ていないと言う。
仕方なく部屋に戻ってみると、部屋の前でうずくまる芽依がいた。
「キーが無きゃ部屋には入れないよ。」
芽依を立たせると部屋に入れた。
せっかくの化粧が涙でひどい事になっていたから、パウダールームにあった化粧落としシートを芽依に手渡した。
「なんか、ゴメンね。僕の独りよがりで泣かせちゃってさ。思い返すとさ、僕って好きな人が出来るまで一緒に居させてって存在だったんだもんね。それがずっと引っかかってたんだ。だからというか、社会人になるとまた新しい人との出会いもあるし環境も変わるからその前にって思ってたんだ。」
「違うの…」
芽依は必死に言葉をひねり出した。
「もう何も言わなくていいよ。フォローして貰っても余計に惨めになるだけだから。」
芽依の言葉を遮って悠太は部屋を出た。
館内のバーに入るとオススメのカクテルを続けざまに煽り、時間を潰すと部屋に戻った。
すると、正面のガラスの向こうにある露天風呂に人の姿があった。
漆黒の夜の闇の中に露天風呂の灯りで照らされ浮かんだ姿はどう考えても芽依の裸の姿で悠太は今まで家でもバッティングしないように気を付けていたのに、初めてここでそんな姿を見てしまったことに余計に罪悪感が増してベッドルームに駆け込むと眠りに落ちた。
翌朝目を覚ますと芽依は既に用意を整えていた。
「朝ごはんいこ。」
昨夜の事が嘘みたいに芽依は上機嫌であの忌まわしい記憶のレストランに再度向かった。
「夜は分からなかったけど景色すっごくキレイだね。」
最悪の気分だったが、美味しい食事はどうやっても美味しい。
悠太の想定では最高に幸せな気分でこの朝食を味わっていたはずなのに…という思いでやるせない気持ちでいっぱいだった。
「あのさ、帰りの飛行機の時間を早めてもいい??」
芽依が唐突に切り出した。
「いいよ。」
このまま飛行機の時間まで芽依と過ごすよりもさっさと帰った方がまだマシだ。
芽依が空席を抑えるとすぐさまチェックアウトして帰路についた。
「あのね、寄っていきたい所があるから先に帰っててもらってもいいかな。私が帰るまで出かけたりしないで欲しいんだけど…」
「分かった。荷物の片付けもあるし出かけてもいられないよ。」
「ありがとう。」
そう言い残して芽依は電車で、悠太は芽依のキャリーも持ってタクシーに乗り込んだ。
家に帰ってくると荷物の片付けと洗濯を終わらせ、芽依の帰りを待った。
が、しかしいつになっても帰って来ないうえにLIMEの返事すらない。
いっそのこと婚約指輪を質屋にでも売って人生初の行為をそのお金でソープランドというものに行こうと思い立った。
まずはどのお店が良いかと選んでいるとお店も人も多すぎるしどう選んで良いか分からずこういうジャンルには詳しいというか、その道のプロのような先輩にメッセージでオススメを聞いた。
そして悠太は軍資金!とリングの入った箱を探した。
「あれ…?どこに入れたっけ…?」
探してもどこにも見当たらない。
芽依を部屋に入れた時にリュックに戻したつもりでいたが、やはりどこを探しても無い。
記憶違いで酔ってどこかに捨てた可能性も無くはない…。
なんというかもう全て上手く行かずにどうでも良くなってきた。
今回の旅行とリングで悠太の貯金は底をついていたし、入社も控えていたからバイトも先月で辞めてバイト代が入ってもギリギリで他に家を借りる術さえない。
癪ではあるが芽依に頼んで1ヶ月くらい置いて貰えばあとは給料と最悪ローンで何とかすればいい。
いや、ローンなら今すぐにでもどうにでも出来る。士業だから信用もそれなりにあるだろうから大丈夫。
この流れでとにかくここから脱出して新たな人生を仕切り直せばいい。
悠太の脳内会議で結論が出させると、一気に気分が落ち着いた。
自分としては結婚まで様々な欲求にも耐えていざ結婚を申し込んでもごめんなさいと言われたのだから精一杯尽くした。誰にも咎められる理由はない。
あとは切り替えて新たな出会いを探せば良い。それだけだ。
悠太の言葉に芽依はスプーンをテーブルにことりと落とした。
「やっぱり…病気だったの……?」
「いやいや、僕の話しを最後まで聞いてくれる?」
「分かった。」
芽依はミネラルウォーターの入ったグラスを取ると、一気に飲み干して悠太の話しに身構えた。
「僕たちはさ、そらと大福のお陰でこうやって一緒に過ごすきっかけを貰ってここまで仲良くやってこられたと思う。大学生活も一緒に生活しながら毎日を送れて大変な事もあったけどいつも協力してくれて本当に感謝しています。4月からはまた生活リズムとか色んな変化があってすれ違いも起こるかも知れないけど、僕にとって1番大切なのは芽依だから、ちゃんと形にしておきたいと思うんだ。だから、僕と結婚してください。」
ジャケットのポケットからさっきの小さな箱を取り出すと、ダイヤのリングが中に収められていて、キャンドルの灯りにきらめいている。
「ごめんなさい…」
芽依は目からポロポロと大粒の涙を流しながら、ティラミスを残したまま席を立った。
「振られた…?」
悠太の頭の中にはプロポーズをして、芽依は泣きながらその場を去ったという事実をどう処理してよいのか混乱してその場で呆然としていた。
「お客様、お連れ様が出ていかれましたが…」
その状況を察してウェイターが悠太に声を掛けてきた。
その声で悠太はようやく我に返り「残してしまってすみません」とやっとの返事をすると芽依を追った。
キーも持たずに出ていったからロビーや出ていって居ないかフロントにも聞いたが外には出ていないと言う。
仕方なく部屋に戻ってみると、部屋の前でうずくまる芽依がいた。
「キーが無きゃ部屋には入れないよ。」
芽依を立たせると部屋に入れた。
せっかくの化粧が涙でひどい事になっていたから、パウダールームにあった化粧落としシートを芽依に手渡した。
「なんか、ゴメンね。僕の独りよがりで泣かせちゃってさ。思い返すとさ、僕って好きな人が出来るまで一緒に居させてって存在だったんだもんね。それがずっと引っかかってたんだ。だからというか、社会人になるとまた新しい人との出会いもあるし環境も変わるからその前にって思ってたんだ。」
「違うの…」
芽依は必死に言葉をひねり出した。
「もう何も言わなくていいよ。フォローして貰っても余計に惨めになるだけだから。」
芽依の言葉を遮って悠太は部屋を出た。
館内のバーに入るとオススメのカクテルを続けざまに煽り、時間を潰すと部屋に戻った。
すると、正面のガラスの向こうにある露天風呂に人の姿があった。
漆黒の夜の闇の中に露天風呂の灯りで照らされ浮かんだ姿はどう考えても芽依の裸の姿で悠太は今まで家でもバッティングしないように気を付けていたのに、初めてここでそんな姿を見てしまったことに余計に罪悪感が増してベッドルームに駆け込むと眠りに落ちた。
翌朝目を覚ますと芽依は既に用意を整えていた。
「朝ごはんいこ。」
昨夜の事が嘘みたいに芽依は上機嫌であの忌まわしい記憶のレストランに再度向かった。
「夜は分からなかったけど景色すっごくキレイだね。」
最悪の気分だったが、美味しい食事はどうやっても美味しい。
悠太の想定では最高に幸せな気分でこの朝食を味わっていたはずなのに…という思いでやるせない気持ちでいっぱいだった。
「あのさ、帰りの飛行機の時間を早めてもいい??」
芽依が唐突に切り出した。
「いいよ。」
このまま飛行機の時間まで芽依と過ごすよりもさっさと帰った方がまだマシだ。
芽依が空席を抑えるとすぐさまチェックアウトして帰路についた。
「あのね、寄っていきたい所があるから先に帰っててもらってもいいかな。私が帰るまで出かけたりしないで欲しいんだけど…」
「分かった。荷物の片付けもあるし出かけてもいられないよ。」
「ありがとう。」
そう言い残して芽依は電車で、悠太は芽依のキャリーも持ってタクシーに乗り込んだ。
家に帰ってくると荷物の片付けと洗濯を終わらせ、芽依の帰りを待った。
が、しかしいつになっても帰って来ないうえにLIMEの返事すらない。
いっそのこと婚約指輪を質屋にでも売って人生初の行為をそのお金でソープランドというものに行こうと思い立った。
まずはどのお店が良いかと選んでいるとお店も人も多すぎるしどう選んで良いか分からずこういうジャンルには詳しいというか、その道のプロのような先輩にメッセージでオススメを聞いた。
そして悠太は軍資金!とリングの入った箱を探した。
「あれ…?どこに入れたっけ…?」
探してもどこにも見当たらない。
芽依を部屋に入れた時にリュックに戻したつもりでいたが、やはりどこを探しても無い。
記憶違いで酔ってどこかに捨てた可能性も無くはない…。
なんというかもう全て上手く行かずにどうでも良くなってきた。
今回の旅行とリングで悠太の貯金は底をついていたし、入社も控えていたからバイトも先月で辞めてバイト代が入ってもギリギリで他に家を借りる術さえない。
癪ではあるが芽依に頼んで1ヶ月くらい置いて貰えばあとは給料と最悪ローンで何とかすればいい。
いや、ローンなら今すぐにでもどうにでも出来る。士業だから信用もそれなりにあるだろうから大丈夫。
この流れでとにかくここから脱出して新たな人生を仕切り直せばいい。
悠太の脳内会議で結論が出させると、一気に気分が落ち着いた。
自分としては結婚まで様々な欲求にも耐えていざ結婚を申し込んでもごめんなさいと言われたのだから精一杯尽くした。誰にも咎められる理由はない。
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