僕のおつかい

麻竹

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第二章【旅路編】

12.金髪碧眼さん再来

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「お待ちしていました!」

マクレーン達はカーラ山を下山して、すぐに首都ベルジャラに向かった。
そして、転柱門のある教会の建物の前に辿り着いたマクレーン達を、ここに居る筈のない二コルが出迎えたのであった。

「ニ、ニコルさん、確か北の魔女の城に帰ったんじゃ?」

「はい、ちゃんと帰りましたよ!でも、あの後また、北の魔女様からお遣いを頼まれたんです!」

驚愕するマクレーンの質問に、二コルはにこにこと笑顔を向けて答えてきた。

「お、二コルもお遣い頼まれたのか?奇遇だな、俺たちもマクレーンの姉ちゃん達に、おつかいを頼まれてるんだ。」

二コルの言葉に、反応したアランが嬉しそうに話しかけてきた。

「ええ、そうですね……て、違った。そうなんですか~、いやぁ~奇遇ですね~、アランさん達のおつかいは、どちらまで行かれるんですか?」

二コルは何故か、もごもごと口の中で言った後、そう取り繕ってきた。
そんな二コルとアランの遣り取りを、遠巻きに見ていたマクレーンは、何故か苦い顔をしている。
それには気づかず、アランは二コルの質問に軽快に答えてきた。

「ああ、今から北の大地に行くところだ。あんたは何処に行くんだ?」

「え、もう!?あ、いえ……ぼ、僕もこれから北の大地の方へ戻って、お遣いを遂行しようかと……。」

あはははは~と何故か冷や汗を流しながら、そう言ってくる二コルに、アランは笑顔になった。

「おっ、それなら俺たちと一緒に行くか?」

「え、いいんですか!?」

アランの言葉に、二コルは瞳を輝かせて見上げてきた。

「ちょっ、アランさん!!」

またしても勝手に話を進めていくアランに、マクレーンが慌てて声をかける。

「いいじゃないか、二コルも一人で旅をするんじゃ物騒だしなぁ?」

そう言って二コルに同意を求めると、案の定彼から「是非に!」と懇願されてしまった。

「マクレーンさん、お願いします!僕、一人じゃ心細かったんです!!」

そう言って、瞳をうるうるさせながら、祈るようにお願いしてくる二コルに、マクレーンはジト目になった。

わかってて、やってるくせに!!

マクレーンは、胸中で毒吐く。
あざとい二コルに、マクレーンは溜息を吐きながらも承諾するのであった。







また、北の大地へと転移してきたマクレーン達は、相変わらず清々しい笑顔で出迎えてくれる教会の対応を受けながら、とりあえず首都キャセロで情報収集を始めた。



「なあ、銀針鼠のねぐらに行けば良いだけじゃないのか?」

目的地へ向かっている途中、ふとアランが聞いてきた。

「それはそうなんですけど、銀針鼠は住処を移動する習性があるので、一ヵ所にいないんですよ。しかも、今は繁殖期で、ペアになる相手を探すために、各地に移動しているそうなので。」

「ふ~ん、なるほどね。それで、ここで情報収集するわけか。」

「その通りです。」

そう言って、アランとマクレーンが見上げた場所は、ギルドの看板が掲げられた建物だった。





「ではこちらが、最新のクエスト表です。」

「ありがとうございます。」

ギルドの若い受付嬢からクエスト一覧表を受け取ると、マクレーンは愛想良くお礼を言ってカウンターを後にした。
そして、ギルド内の休憩所で待っていたアランの元へ行くと、テーブルの上に先程受け取ったクエスト表を開いて見せてきた。

「とりあえず、これが最近あったクエストだそうです。」

「ふ~ん。」

アランは物珍しそうに、クエスト表を手に取って眺める。

「結構、いっぱいあるんだな。」

「ええ、ここ数ヶ月で銀針鼠の捕獲依頼は増えてるみたいですね。」

「なあ、本当にやるのか?」

マクレーンの話を聞きながら、アランが聞いてきた。

「まあ、冒険者の方に依頼してしまった方が楽ですけど、それだと意外に時間がかかるみたいなので。だったら自分たちでやってしまった方が早いですからね。」

「なるほど……。でも俺、こういうのやった事ないんだけど。」

「え、そうなんですか?」

アランの言葉に、マクレーンは驚いた顔をした。

てっきり、アランはこういった冒険者紛いのような事もしていると思っていたのだが、彼はどうやらギルドには来たことが無いそうだ。
過去にやっていた傭兵の仕事は、直接その村の村長や町の領主に掛け合って仕事を取っていたらしい。

「ギルドに来れば、いちいち依頼主と契約しなくても楽だったのに珍しいですね。」

「ま、まあな。ほ、ほら、いちいちギルドに登録するの面倒くさかったし、できれば短期で稼げるやつが良かったからな。」

直接交渉の方がてっとり早いんだよ、と説明するアランに、そういう方法もあるかとマクレーンは深く考えずに素直に頷いた。

「まあ、今回もギルドには登録する気はありませんし、このクエスト表だって銀針鼠の場所の特定と、依頼場所とあまり被らないようにするために必要だっただけですから。」

マクレーンがそう説明すると、アランは何故かほっとしたような表情になった。

「そ、そうか、ならいいんだ。じゃあ、さっさとその鼠を探してこようぜ。」

「鼠じゃなくて銀針鼠ですからね。」

「はいはい。」

そう言い合いながら、マクレーンとアランはギルドを後にしたのだった。



「おい、あれって……。」

「ああ、間違いない。」

マクレーン達の出て行ったあと――
ギルドの片隅で、フードを被った数人の男たちが、こそこそと密談する姿があった。
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