どこにでもある平凡な離婚騒動

麻竹

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どこにでもある平凡な離婚騒動②

傲慢な王と勝気な王女1

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時は未来。
世界は発達した文明を持て余し、枯渇した資源を巡って戦争を繰り返していた。
そして、とある東の国にある和という名の国では、今まさに他国から攻撃を受け、攻め入れられようとしている所であった。
そんな中、城の作戦会議室に一本の通信が入ってきた。
不審に思いながらも通信を取るオペレーター。
次の瞬間、顔色を変えるのであった。





「はぁ?今、何と言った?」

和の国の王女である女は、取り次ぎをしてきた部下に向かって眉間に皺を寄せながら聞き返してきた。

「そ、それが……平の国の王から連絡が来ておりまして……。」

部下は、そんな王女の反応に肩を竦めながら答えた。
その途端、王女の秀麗な眉がピクリと跳ね上がる。

「このくそ忙しい時に、あんの男は……。」

王女は忌々しそうにそう呟くと、不機嫌を隠す様子も無く部屋を後にしたのであった。







「何の用じゃ!?」

開口一番、絶対零度の不機嫌な声が王の鼓膜を襲ってきた。
マイクに近づき、ありったけの声で叫んだのであろう、機内全体に王女の声がキーンとエコーしていた。
平の国の王は、クラクラする頭を振りながら慌ててマイクに近づくと、こちらも負けじと言い返してきたのであった。

「もう少し声を抑えろ!というか、何故知らせて来なかったのだ!!」

ありったけの怒りを込めて言い返す王に、王女は「はっ」と乾いた笑いを返してきた。

「そなたとは、既に離婚が成立しておる。何故、他国の部外者・・・・・に助けを求める必要があるのじゃ?」

冷気を纏った容赦の無い王女の言葉は、米神に青筋を立てる国王のHPを削ってきた。
離婚、部外者、と言う単語にダメージを受けつつも、国王は負けじと言い返す。

「ぐ……だ、だが、夫としてだな」

「この期に及んで世迷言を……そなたの助けは要らぬ。ようやく自由になったのじゃぞ?そなたは、そなたの相棒と宜しくやっておればよかろう?わらわは、そなたともう話す事は無い。即刻去ね。」

取り付く島もない王女の返答に、王は歯軋りする。

「シ、シンシアの事は誤解だと、あれ程……」

離婚原因を引き合いに出され、平の国の王は言葉に詰まる。
そして、こちらの話も終わらぬうちにブチリと通信が切られてしまった。

「誤解だと言っているのに、あの女は……。」

勝手に切ってしまった王女に向かって、王は歯軋りするのであった。







和の国の王女と平の国の王の結婚は、所謂政略結婚であった。
争いが絶えないこの時代、お互いの国を守るためには、より強い国との繋がりは必須であった。
似たような文化を持ち、友好国であった両国において、この婚姻は喜ばしい出来事であった。
のだが――

二人が結婚して早十年。
二人の間に待望の子供が、なかなか出来なかった。
しかも国を巡っての小競り合いが続き、戦闘に明け暮れる王は城を空ける事が殆どだった。
そんな事を繰り返している内に、夫婦の間の溝は深まり。
しかも、子供が出来ない事で王女への姑の当たりは年々強くなっていき……。

気づいた時には修復も出来ない程、夫婦の中は冷め切っていたのであった。

しかもこの時代、戦士と従者がバディを組んで戦うのが主流であった。
戦士である王にも、もちろん相棒が居た。
しかも年若い、美しい娘が一人。
このバディは王の愛人とも言われており、二人の仲は周知の事実であった。
そんな事も関係して、王女は王に愛想を尽かして故郷に帰ってしまったのである。
しかも一ヶ月後には、王女から王へ三下り半と共に離縁状が送られてきたのであった。

それから一年が経とうという頃、王女の故郷である和の国が、他国に攻め入れられるという噂が平の国まで届いた。
その噂を聞きつけた王は、慌てて連絡を寄こしてきたのであった。







「何を今更……。」

通信を切り静かになった会議室に王女の声が響く。
そこへ、血相を変えた部下が挨拶もそこそこに飛び込んできた。

「お、王女様、敵国が攻め入って参りました!!」

「なに!?とうとう来たか!!」

部下の言葉に、それまで俯いていた王女は振り返る。
そして一瞬で指導者の顔になると、部下へと指示を出し始めたのであった。

「そなたは弟……国王に準備をするよう伝えて参れ。」

「はっ!」

王女の命令に、部下は頷くと会議室を後にする。
それを合図に慌ただしくなる室内。
打ち合わせ通り動き出す部下を見ながら、王女もまた会議室を後にするのであった。





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