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13.侯爵令嬢のお茶
注がれる度に香り立つ芳醇な茶の香りに、苛立っていた心が落ち着いていく。
ほう、と息を吐いて淹れ立てのお茶を一口飲もうと、カップに手を付けたところで、第一王子妃が話しかけてきた。
「ああ、そうそう、そのお茶は侯爵令嬢様が愛用しているお茶を淹れさせてもらいました。」
そう言った途端、隣から何かを吹き出すような音が聞こえてきた。
見ると、侯爵令嬢が盛大に咽ている。
突然の事に、第一王子が驚いていると、侯爵令嬢が真っ青な顔で言ってきた。
「な、なんで私のお茶を!?」
「あら、滋養強壮に良いと聞きましたので、是非皆さんにも飲んでもらおうと思っただけですわよ?何をそんなに慌てているのですか?」
第一王子妃はそう言って、お茶を一口飲んだ。
その途端、侯爵令嬢は「ひいっ」と悲鳴を上げる。
何故かおろおろしだし、落ち着きなく第一王子妃と、カップを交互に見ていた。
「ふふ、おいしい。本当に美味しいお茶ですね。」
「ああ、そなたのお茶は本当に美味いのう、第一王子妃殿。」
「へ?」
そう言って、もう一口とお茶を飲む国王と第一王子妃に、侯爵令嬢は間抜けな声を上げた。
「ああ、すみません。侯爵令嬢様のお茶は、貴女と第一王子様の分だけ淹れさせて頂きました。国王様には、私が厳選したお茶を飲んで頂いておりますわ。」
もちろんわたくしも、と第一王子妃が何食わぬ顔で言ってきた。
その言葉に、侯爵令嬢は第一王子の方を勢いよく振り向くと、既に王子はお茶を飲んでいるところだった。
「あ、ああ……。」
「どうしました、侯爵令嬢様。」
「な、なん……。」
侯爵令嬢が口をパクパクしていると、第一王子妃が「そうそう」と言って呑気な声を上げてきた。
「第一王子様、それを飲んだらすぐ、これをお飲みください。」
「……何故だ?」
「それには、毒が入っているからです。」
「ぶふうっ!!」
第一王子妃がしれっと言うと、第一王子は思わず盛大に咽てきた。
「き、貴様ぁ!よくも!!」
第一王子は、げほげほと咽ながら第一王子妃を睨む。
「毒と言っても、効果は弱いものなのですぐに死ぬことはありません。ですが、念のため解毒薬をどうぞ。」
そう言って差し出されたのは、緑色の液体だった。
「王子様用に、濃いめに煎じておきました。」
「嫌がらせか!!」
文句を言いながらも、第一王子は苦い薬湯をごくごくと飲み干す。
あまりの苦さに咽ていると、第一王子妃がこう付け加えてきた。
「わたくしの見立てでは、第一王子様は随分前から飲まされていたようなので、間に合って良かったですわ。」
「は?」
「おや、お気づきになりませんでした?」
「どういうことだ?」
第一王子妃の言葉に怪訝そうな顔を向ける。
すると隣から、ガタッと音が聞こえてきた。
見ると、またしても侯爵令嬢が真っ青になりながらぶるぶる震えていた。
「どうしたんだ、フリージア?」
王子は慌てて侯爵令嬢を抱き寄せようとすると、彼女は何故か拒んできた。
「フリージア?」
「あ、あの……わたくし気分が優れませんので、失礼させて頂きますわ。」
そう言って勢いよく立ち上がると、扉の方へと向かおうとした。
しかし――
「どこへ行こうとしてるのじゃ?座れ侯爵令嬢。」
国王から威圧的な声がかけられた。
その声に、侯爵令嬢はびくりと立ち止まる。
恐る恐る振り返ると、射貫くような視線で睨み付けられていた。
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