俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ

文字の大きさ
11 / 19
5月

第十話「五月の贈り物」

 5月末。日差しは益々強くなり、制服の上着を脱ぐ生徒も増え始めていた。
 そう言えば千春の誕生日が近かったことを思い出す。

***

 放課後のショッピングモール。プレゼント選びは難航していた。
 女の子向けショップの前で足踏みしながら店内を窺う。かわいいグッズはたくさんあるけどどれを選べば正解なのか皆目見当がつかない。

「これなんてどうですか?」

 突然背後から声がした。振り返るとの白石澪が立っていた。

「し、白石さん!?」
「奇遇ですね。何をお探しですか?」
「ああ、千春の誕生日プレゼントで……」

 白石さんは興味深そうに商品棚を眺める。

「なるほど。佐藤さんのために」
「そう。だけどセンスがないから困ってて」
「でしたら……これなんて素敵ですよ」

 彼女が手に取ったのは小さなハンドクリームセットだった。優しい桜の香りが漂う。

「女の子らしいアイテムで嬉しいはず」
「ありがとう!助かるよ」
「あ……でも」
「ん?」
「私が勧めたってことは秘密でお願いします」
「なんで?」
「……ライバルですから」

 そう言い残して彼女はスタスタと去って行った。呆気に取られて見送るしかない。

 改めて手の中にあるハンドクリームセットを見る。

「ライバルの助言で選んだプレゼントは……バレたらヤバそうだ」

 俺はハンドクリームセットを棚に戻す。
 参考にはなったけど自分で決めた。結局、なんとなく良さそうなマグカップを見つけて購入した。

***

 誕生日当日。学校では千春が友達に囲まれていた。
 教室に入るなり友人たち千春は頬を染めて嬉しそうに笑っている。

(ああ……やっぱりここでは渡せないな)

 授業が終わり、放課後になるのを待った。約束していなかったけど千春は来る。なぜなら幼馴染の俺たちは帰り道が一緒なのだ。

 校門で待っていると千春が小走りで駆け寄ってきた。

「待ってくれたの?嬉しいな」
「誕生日おめでとう」

 俺が言うと千春はパァッと笑顔になった。

「ありがと~!えへへ」

 俺たちはそのまま帰路につく。プレゼントの袋をカバンに忍ばせたまま歩く。

「今日はいろんな人に祝ってもらっちゃった」
「よかったね」
「うん。でも一番うれしかったのは拓海が『おめでとう』って言ってくれたこと」
「そんなに?」
「だって高校入ってから付き合いなくなってたけど、私の誕生日のことこと忘れてなかったから」

 彼女の言葉に胸が痛む。小さい頃からの幼馴染だったけど高校では疎遠気味だった。
 そんな俺がちゃんと覚えてたってだけでこんなに喜ぶなんて……

 電車に乗り込み席に腰掛ける。

 人が多いせいか互いの肩が触れ合う距離だ。心臓の鼓動が加速する。何とか平静を装いながら話題を探す。
 しかし彼女はこちらをじっと見つめている。その瞳がいつもより輝いて見えるのは気のせいじゃない。
 千春は何か期待しているように思えた。

「あのさ……」
「うん?」
「千春の家行ってもいい?」

 突然の提案。でも自然と出てきた。誕生日の思い出を作るならこの機会しかない。

 千春は驚いた顔をしたあとコクリと頷いた。

「いいよ!久しぶりだね」

***

 彼女の家に上がる。部屋は相変わらず可愛らしい雰囲気だった。壁にはキャラクターのポスター。机の上にはぬいぐるみ。女の子らしい空間に違和感を覚えながらもプレゼントを渡す。

「これ、誕生日プレゼント」
「開けていい?」
「うん」

 マグカップが出てくると千春は歓声を上げた。

「わぁ!可愛い!使わせてもらうね!」

 彼女は大切そうに包装紙ごと胸に抱きしめる。その仕草が何とも愛らしい。

「ありがとう拓海。ホントに大事にする」
「うん……喜んでもらえてよかった」

 暫く二人きりで話し込んだ。学校のこと、部活のこと。
 昔話をしたりして笑い合った。

 楽しい時間はあっという間に過ぎる。そろそろ帰ろうかと思った時だった。

「拓海……」
「なに?」

 瞬間、千春の顔がアップに。気づいたら彼女の唇が自分の唇に触れていた。

「んっ……」

 驚愕のあまり動けなくなる。
 キスの余韻が残る中で千春は頬を赤らめながら抱き着いてきて、俺は絨毯の上に押し倒された。

「ずっと……こうしたかった」
「ち……千春?」
「拓海が大好きなんだ」

 涙声混じりの告白に言葉を失う。千春の温もりが全身に伝わってくる。柔らかな髪の匂い。鼓動。

「待ってくれ……急すぎる」
「拓海の答えは待つ……だけど、私の気持ちは知っててほしい」

 そう言って、再び抱き着いてきて、もう一度キスをする。

 胸も思いっきり押し付けてくる。この間の時とは違う。アクシデントではなく、千春が意図的にやっている。

 心臓が爆発しそうなほどに高鳴る。

 俺は何も言えず放心していた。
 こんな状況どうすれば良い?

 部屋の静寂だけが響く。外ではカラスが鳴いていた。俺はこのままどこかへ連れ去られてしまうような不安と幸福感の狭間で揺れ動く。
 答えが見つからないまま時間が過ぎていった。

 インターホンが鳴った。
 びっくりして飛び起きる。

「あ……帰ってきたのかも」

 千春の母親らしい。助け舟だと思った。今の俺は正常な判断ができない。
 千春はそっと俺から離れた。瞳は潤んだまま。それでも微笑んでいた。

「ごめんね。びっくりしたよね?」
「う、うん……」
「でも本当のことだから……」
「……」

 ドアが開く音と共に母親の声が聞こえてきた。
 千春はパッと立ち上がり玄関へ向かう。

「今日はありがとう……それと、来年も再来年もその先も……ずっと祝ってくれる?」
「……今は、そのつもり」
「……じゃあ約束ね。今のままだったら祝って」

 千春が小指を差し出した。
 指切りげんまん。

 そのやり取りだけで胸が締め付けられる。
 彼女の本気度がひしひしと伝わる。
 もうただの幼馴染ではいられない。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

【完結】メインヒロインとの恋愛フラグを全部ブチ壊した俺、サブヒロインと付き合うことにする

エース皇命
青春
《将来ヤンデレになるメインヒロインより、サブヒロインの方が良くね?》  16歳で自分が前世にハマっていた学園ドラマの主人公の人生を送っていることに気付いた風野白狼。しかしそこで、今ちょうどいい感じのメインヒロインが付き合ったらヤンデレであることを思い出す。  告白されて付き合うのは2か月後。  それまでに起こる体育祭イベント、文化祭イベントでの恋愛フラグを全てぶち壊し、3人の脈ありサブヒロインと付き合うために攻略を始めていく。  3人のサブヒロインもまた曲者揃い。  猫系ふわふわガールの火波 猫音子に、ツンデレ義姉の風野 犬織、アニオタボーイッシュガールの空賀 栗涼。  この3人の中から、最終的に誰を選び、付き合うことになるのか。てかそもそも彼女たちを落とせるのか!?  もちろん、メインヒロインも黙ってはいない!  5人の癖強キャラたちが爆走する、イレギュラーなラブコメ、ここに誕生! ※カクヨム、小説家になろうでも連載中!

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。