俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ

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6月

第十五話「追い風の中で」

 陸上大会。青々とした芝生の競技場は灼熱の太陽に照らされていた。観客席からはフラッグがはためき、選手たちの熱気と緊張感が交錯する独特の空気が流れる。

「行くわよ!全力で!」

 ミーティングでコーチの檄が飛び交う。天宮瑠璃の瞳には強い意志が宿り、唇を引き結んだ表情からは一切の妥協が感じられない。長年にわたって積み重ねられた訓練と自己研鑽がその小さな体躯から滲み出ているようだった。

 拓海は家を出て電車で会場へ向かう。
 大会ということもあり、会場に近づくにつれ人が増えてくる。
 競技場に到着すると、学校ごとに集まって受付を済ませている。

「頑張ってね」
「怪我しないようにね」

 そんな言葉が飛び交う中、拓海は一般客席へと足を運んだ。
 観客席はすでに多くの人々で埋まり始めている。家族連れや同級生たちが旗を振りながら応援グッズを持っている姿も多く見られる。

 開会式が始まり、選手たちはトラック上に整列する。大きなスピーカーから選手宣誓が響くと同時に万雷の拍手が沸き起こった。
 そして次々と各種目が進行していく。

 百メートル競走の招集がかかり、選手たちが召集エリアへ集まる。

 瑠璃も召集エリアへ向かい最後のウォーミングアップを行なう。四肢を大きく伸ばしたりストレッチをして体をほぐす。

 いよいよレース開始。スタートブロックに足を乗せ深呼吸を繰り返す。この一瞬のためにどれだけの時間を費やしてきたのだろう。彼女の全身にはこれまで培ってきた全てが詰まっている。

 号砲が鳴り響くと同時に各選手が疾走する。スタートから全力疾走! スタートで飛び出した選手の横にぴったりつけると徐々に追いつき追い抜いていく。

 観客席からもどよめきが上がるほどの迫力ある走り。周囲の喧噪など全く耳に入っていない様子だ。ただ一心不乱にゴールを目指している。

 あと数十メートル……息を呑む瞬間。
 瑠璃は更に加速し一歩一歩地面を蹴る。踏み込んだ足跡が次々と刻まれていく。



 ゴールラインを駆け抜けた彼女はそのまま芝生上に転がった。肩で大きく息をしながら遠くを見つめている。全身から流れ落ちる汗は太陽の光を反射して輝いていた。

 暫定記録板に表示された数字は驚異的なものであり会場は騒然とした。大会新記録に近いタイムであったからだ。

 彼女はゆっくり立ち上がると観客席の方へ手を振る。多くの人々が彼女に向けて拍手喝采を送っている。

 拓海もその様子を最前列から見守っていた。
 この一瞬の出来事が彼にとっても特別なものに感じられる。

「すごい……」

 自然と口から零れた言葉。彼女自身の努力と思いの深さを改めて感じた瞬間でもあった。



「お疲れさま」

 大会後、拓海は瑠璃を見つけて声をかける。疲れ果てた様子でもありつつも充実感で満ちた表情だ。

「山口君……来てたんだ」

「この日って聞いてたから」

「そう……来てくれると思ってなかったよ」

 彼女は少し照れくさそうに頬を赤らめる。
 その仕草があまりにも可愛い。

「今日も良い走りだったね」

「まだまだ満足してないけどね」

「もっと先を見据えてるんだね。応援してるよ」

 単純だけれど偽りのない気持ちだ。瑠璃はその言葉を噛み締めるように聞いた後、「ありがとう」と言った。



 帰り道。天宮さんは部活の仲間とではなく俺と帰宅することを選んでくれた。
 電車の中で隣同士に座ると窓越しに街灯が流れ去っていく。

「そういえばずっと同じクラスなのにあまり話したことなかったかも」

「確かに……」

「これからはもっと仲良くできるといいな」

 彼女は自然な笑顔を見せてくれた。それは飾り気もなく素直で美しい。

「そう……来てくれると思ってなかったよ」

 彼女は少し照れくさそうに頬を赤らめる。
 その仕草があまりにも可愛い。

「今日も良い走りだったね」

「まだまだ満足してないけどね」

「もっと先を見据えてるんだね。応援してるよ」

 単純だけれど偽りのない気持ちだ。瑠璃はその言葉を噛み締めるように聞いた後、「ありがとう」と言った。



 帰り道。天宮さんは部活の仲間とではなく俺と帰宅することを選んでくれた。
 電車の中で隣同士に座ると窓越しに街灯が流れ去っていく。

「そういえばずっと同じクラスなのにあまり話したことなかったかも」

「確かに……」

「これからはもっと仲良くできるといいな」

 彼女は自然な笑顔を見せてくれた。それは飾り気もなく素直で美しい。今まで見た中で一番素敵な笑顔だった。

「陸上大会……すごく良かったよ」

「本当?嬉しい」

「また次も観に行ってもいいかな?」

「もちろんだよ!絶対来て欲しい」
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