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7月
第十六話「願いの糸」
七月七日。七夕ということもあり学校の玄関前には大きな笹竹が設置されていた。生徒たちの願いごとが書かれた短冊が枝に吊るされカラフルに彩られている。
「今年は去年よりも豪華だね」
千春が短冊を眺めながら言う。
「星に願いを託すなんて素敵ですよね」
白石さんは微笑みながらピンク色の短冊にペンを走らせている。
俺は適当に緑色の短冊を選びペンを持ったものの何を書けばいいのか思いつかない。進路?将来?それとも恋愛のこと?迷っていると隣から声がかけられた。
「山田君は何をお願いするつもりですか?」
「まだ決めてなくて……白石さんは?」
「内緒です。願い事は人に話したら叶わないって聞いたことがありますから」
小さく舌を出してはにかむ。
「じゃあ何で聞いたの……」
その時後ろからドンッと衝撃が走った。振り返ると千春が赤い短冊を掲げてニコニコしていた。
「見て見て!『拓海と付き合えますように』って書いたんだ☆」
「ちょっ!やめろ!」
まだ答えは言ってない。というかこっちが話しを振っても「まだその時ではない」とか露骨に話しを逸らす。
「えへへ~」
周囲の男子たちの視線が痛い。俺は赤くなる顔を隠すべく必死で否定するしかなかった。
一方で凛が青い短冊を静かに飾っている。書かれた文字はとてもシンプルで──
「平穏」
ただそれだけ。彼女らしいと言えば彼女らしい。
陸上部の練習を終えた瑠璃が汗だくで通りかかる。
「短冊書いてないんだけどまだ間に合う?」
「あるよ」
俺が黄緑色の短冊を手渡すと彼女は嬉しそうに受け取った。
「じゃあ……これでいいかな」
彼女がさらさらと書き終えた短冊には『もっと速く』とだけ記されていた。
「いつも真面目だよね」
「へへっ、私スポーツ馬鹿だから!」
授業が終わる頃には笹竹は色とりどりの短冊で一杯になっていた。風に揺れる紙片がザワザワと音を立てる様子は少し幻想的だ。
■
放課後。天気が崩れ夕方から雨予報ということで星は見えないだろうと言われている。
それでも夕焼け空が濃紺へ変わる間際に幾つかの星が瞬いている。俺たちは昇降口前のベンチに腰掛けながら七夕の夜空を仰いでいた。
「雨雲が厚そうですね」
白石さんが空を見上げてポツリと言う。折角の星空が見えなければ少し残念だ。
「願い事って叶うと思う?」
千春が唐突に問いかけた。
「信じるかどうかだろ?」
「山田君はどんな願い事したんですか?」
「なんで自分は教える気が無いのに、俺のばっかり聞こうとするの。昼の話から教えると思う?」
「どうでしょう?」
「教えないよ」
結局のところ自分の願いは自分で叶えるしかない。
それを知っていても人は他人に託してしまいたいと思ってしまう時がある。特に今の時期は不安定な心理状況にあるからこそ尚更だ。
■
暗くなり始めた帰り道。校門の前で全員で立ち止まった。
星空は雨雲に覆われたままではあったが、月明かりだけはぼんやりと照らしてくれている。
ふと俺の肩に手が置かれる感触。振り返るとそこには白石さんが立っていた。いつも通り朗らかな笑顔を浮かべている。
彼女の髪が夜風になびく。その瞬間───なぜだろう───俺の胸が高鳴ったような気がした。
この空気感……普段とは違った何かを感じさせてならない。
「また明日」
そう言って彼女は去っていく。他のみんなも同様だ。
その後ろ姿を目で追いながら俺はポケットの中の短冊を強く握りしめた。
七夕の夜。短冊を吊るした笹の葉が風に揺れている。
「今年は去年よりも豪華だね」
千春が短冊を眺めながら言う。
「星に願いを託すなんて素敵ですよね」
白石さんは微笑みながらピンク色の短冊にペンを走らせている。
俺は適当に緑色の短冊を選びペンを持ったものの何を書けばいいのか思いつかない。進路?将来?それとも恋愛のこと?迷っていると隣から声がかけられた。
「山田君は何をお願いするつもりですか?」
「まだ決めてなくて……白石さんは?」
「内緒です。願い事は人に話したら叶わないって聞いたことがありますから」
小さく舌を出してはにかむ。
「じゃあ何で聞いたの……」
その時後ろからドンッと衝撃が走った。振り返ると千春が赤い短冊を掲げてニコニコしていた。
「見て見て!『拓海と付き合えますように』って書いたんだ☆」
「ちょっ!やめろ!」
まだ答えは言ってない。というかこっちが話しを振っても「まだその時ではない」とか露骨に話しを逸らす。
「えへへ~」
周囲の男子たちの視線が痛い。俺は赤くなる顔を隠すべく必死で否定するしかなかった。
一方で凛が青い短冊を静かに飾っている。書かれた文字はとてもシンプルで──
「平穏」
ただそれだけ。彼女らしいと言えば彼女らしい。
陸上部の練習を終えた瑠璃が汗だくで通りかかる。
「短冊書いてないんだけどまだ間に合う?」
「あるよ」
俺が黄緑色の短冊を手渡すと彼女は嬉しそうに受け取った。
「じゃあ……これでいいかな」
彼女がさらさらと書き終えた短冊には『もっと速く』とだけ記されていた。
「いつも真面目だよね」
「へへっ、私スポーツ馬鹿だから!」
授業が終わる頃には笹竹は色とりどりの短冊で一杯になっていた。風に揺れる紙片がザワザワと音を立てる様子は少し幻想的だ。
■
放課後。天気が崩れ夕方から雨予報ということで星は見えないだろうと言われている。
それでも夕焼け空が濃紺へ変わる間際に幾つかの星が瞬いている。俺たちは昇降口前のベンチに腰掛けながら七夕の夜空を仰いでいた。
「雨雲が厚そうですね」
白石さんが空を見上げてポツリと言う。折角の星空が見えなければ少し残念だ。
「願い事って叶うと思う?」
千春が唐突に問いかけた。
「信じるかどうかだろ?」
「山田君はどんな願い事したんですか?」
「なんで自分は教える気が無いのに、俺のばっかり聞こうとするの。昼の話から教えると思う?」
「どうでしょう?」
「教えないよ」
結局のところ自分の願いは自分で叶えるしかない。
それを知っていても人は他人に託してしまいたいと思ってしまう時がある。特に今の時期は不安定な心理状況にあるからこそ尚更だ。
■
暗くなり始めた帰り道。校門の前で全員で立ち止まった。
星空は雨雲に覆われたままではあったが、月明かりだけはぼんやりと照らしてくれている。
ふと俺の肩に手が置かれる感触。振り返るとそこには白石さんが立っていた。いつも通り朗らかな笑顔を浮かべている。
彼女の髪が夜風になびく。その瞬間───なぜだろう───俺の胸が高鳴ったような気がした。
この空気感……普段とは違った何かを感じさせてならない。
「また明日」
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その後ろ姿を目で追いながら俺はポケットの中の短冊を強く握りしめた。
七夕の夜。短冊を吊るした笹の葉が風に揺れている。
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