BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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この香水、曰く付き?

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担任は何が気になるのか、俺の周りを嗅ぎ回っている。


「なんか至るところで良い香りがするんだが、同じブランドのものなのか?」


「あ~!頂き物?みたいな感じで…」


「へえ?なんかこう…掻き立てられるような香りだな。」


え、何を?!
と思ったんだけど、黒木の状態を思い出した。

もしやこの香水、そういう気分にさせる効能があったりする…?!


「なんで焦ってんだよ。」


「ハッ、何でもないです!

それより、朝ごはん用意したんでお腹空いてたら食べてくださいね。」


そう言ってテーブルを指差すと、担任は俺を二度見した。
驚きを表現するレパートリーが多いな。


「田中…お前、良妻って感じだな。」


「え?」


「腹減ってたんだよな…ありがたく貰う。」


「あ、はい…」


良妻って言われた…?
俺は惚けながらテーブルの向かいの席に着いた。


「これしじみの味噌汁か?田中、なんで二日酔い対策なんて知ってるんだよ。」


担任は俺に疑いの眼差しを向けてきた。
こっちに来てからは飲んでないから!!!本当だよ!!!


「親が酒を飲む人だったので…」


今でっち上げた設定だが、一番まともだろう。
担任は俺の出任せを聞くと、ハッとした様に眉間に皺を寄せた。


「そうか…辛いことを思い出させたな。」


あ!馬鹿俺!!自分から気まずい雰囲気を作ってしまった!

俺は全くその辺りの設定を作ってないが、
学校には俺のバックグラウンド込みで手続き書類が出ている筈だ。

恐らく担任の反応を見るに、こっちの世界でも、現実と同じような設定になってるんだなと察した。


「まあ、1人でも不自由しないので!悠々自適って感じです!」


そう答えると、担任は一度食べる手を止めて、こちらをじっと見てきた。


「田中、何かあれば俺を頼れ。

担任としても、1人の大人としてもな。」


映画の名台詞のようなお言葉をいただいてしまった。
やっぱり兄弟揃って良い人過ぎるじゃん…!


「ありがとう先生。もし何かあれば…」


相談します。
と言おうとしたのだが、担任に手を握られて言葉が止まってしまった。


「やっぱり『何もなくても』俺を頼れ。
お前は根深いところで人を信用しなさそうだ。」


「ひゃい…」


色気駄々漏れイケメンに手を握られて俺を頼れと言われたら、YES以外に答えは残されていないだろう。

担任は俺の答えを聞くと、ニヤリと不敵に笑って食べるのを再開した。

あ、似てるところまた発見。


朝食後、片付けていると歯磨きを終えた先生がキッチンにやってきた。


「ふぁ~あ…ああ、すまん。手伝う。」


「あ、良いですよ先生。もう終わるし…なんか先生眠そうですね。」


「まあ徹夜だったからな。」


「兄弟揃って寝不足かぁ~」


不健康兄弟め、とボヤいていたら背後から肩に手がかけられた。

えっ?


「もしかして田中、秀の寝不足状態を見たのか?」


「え、はい…昨日の部活の時、調子悪そうだったので聞いたら寝不足って」


「マジか…アイツ中々人に調子悪いとこ見せないんだけどな。」


「確かに普通っぽくはしてましたよ。でもなんかフラついてたから…」


「から?」


「生徒会室で寝かせました。」


「ブッッ!!!!」


担任が俺の頭上で思わずと言った様子で吹き出す。何?!


「秀が?田中の前で寝たのか?!」


「え、1時間ほどですけど…」


「1時間?!」


「なんなんですかッ!!さっきから!」


「いや、アイツが誰かの前で寝るとか考えられなさすぎて…理解しきれてない。」


え、そんなヤバいことなの…?
やっぱりとんでもなく調子悪かったのかもしれない…先輩そんな感じ全然させないからな。


「秀先輩、あの後大丈夫でした?」


「俺は会ってないな…後で聞いてみるわ。
それにしても…田中本当すげえな。」


「えぇ…なんでだろ。寝かしつけ方?かな…」


「お前をそれだけ信用できる人間だと判断したんだろ。誇って良いと思うぞ。」


この兄弟、やっぱり偉そうだぞ…!
ムッとした俺は、先生をベッドに押しやる。


「それはともかく、なんでこの兄弟は寝不足がちなんですかねーー!寝てください!!」


「いや流石にそれは悪い。」


「俺が寝ろと言っているので寝てください。」


お互いに譲らず押し問答をしながら担任をベッドに入れるのに成功すると、踵を返して戻ろうとした。


したのだが…


「おわっ!」
 

俺は腕をグイッと引かれて、布団にダイブしてしまった。


「家主を差し置いて寝ることはできないからな。お前も一緒に入れば寝る。」


「はぁ~~?」


担任は俺をホールドすると、布団を引き上げる。

俺の首あたりに顔を埋め、スンスンと嗅ぎ出した。

何それ!!みんなやるけどブームかなんかなの?!


「あ~こうやって近寄ると…お前のその香り、本当に危険だ。」


「え?何の話ですか。」


「気が付かないか?お前その香水、男を誘うような香りをしてるんだ…どんな奴に貰ったんだよ。」


あまりのBLゲー台詞に、落雷したかのような衝撃を受ける。

男を…誘う…?
そんなものが存在していて良いのか…?

いや、良いのか。忘れがちだが、これは18禁BLゲームだ。

ご都合主義で何でもござれな訳だ。

現に視線を合わせた担任は、熱に浮かされて、何かの感情が溢れそうな目をしている。

あ、これ前にも見たことある。


(あの時の黒木の目と一緒…)


担任は俺を反対に抱え直すと、頸に鼻を埋めた。
匂いの元に辿り着いたのか、甘噛みし始める。


「ひゃっ…!先生まだ酔っ払ってるな!!」


「そうかもしれねぇな。」


ここで食われると覚悟し、
俺は身を固くしながら次の衝撃に備えたが、
さっきまでの勢いは何処へやら、穏やかな息が首にかかる。


「スゥ…」


「え?」


振り返ると、担任はそれはもうスヤスヤと寝ていた。




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