BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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あと一編



「田中っ、今度は最後までさせて!!」


「最後って何だよ!ていうか、友達はあんなことしねぇからな!!」


「うう~!」


里田の端正な顔立ちは、これでもかという程に顰められる。

感情の整理が追いつかないのか、里田は頭をワシャワシャと掻き、地団駄を踏む。


(オイオイ、大丈夫かよ…)


奇妙な行動に、ちょっと心配になってきたあたりでピタリと動きを止める。

そして急に俺にクルリと向き直り、仁王立ちをしながら宣言した。


「ちょっと考える!」


「…え、何を?」


「色々!!!」


勢いよく言い切った里田は、あの長い足で走り出した。


「えっ、なに?!帰んの?!」


「また明日っ~!!!」


「ェェ…?!」


(本当に野生の生き物って感じだぞアイツ…)


俺は里田の心情を何となく察しながら、
里田なりに考える時間が必要なのだろうと結論付けた。


「あ~、俺もそろそろだしなあ…」


これで恐らく、残すは秀先輩のストーリーのみだ。


「どうすっかなぁ…」


里田とは打って変わり、トボトボと帰り道を歩いた。

…悩みがあるのは俺も里田も同じだな。


「ただいマイハ~ウス」


俺は家に着いて明日の準備をそこそこしてから、パソコンの前に座った。


「今日の出来事は…っと、」


今日は"ロッカーの変"に尽きる。
そう…これだけだ。


(更新することも少なくなってきたな…)


上書き保存をすると、二行の端的な文が浮かんできた。


✔︎里田 友情エンド
✔︎里田 R18エンド


うん、想定通りだ。


「あと残すは…」


俺は開き慣れたアーカイブをクリックする。


主人: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
里田: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
黒木: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
嘉賀: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎恋愛
皇秀: ✔︎初期 ✔︎友情 ー?
皇輝: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18

+他2エピソード


ずらりと並んだチェックマーク。
その一つ一つを目で追う。


1、2、3…


数を増やす度、じわりと目尻に涙が溜まる。


…18、19ッ!!


「…な、長かったぁぁあ!!!」


本当に、本当に大変だった。

視覚的に見ると、もはや感動さえ覚えてしまう。

始まった当初は途方もない道のりに見えていたが、今は目前にそのゴールがある。

"回収が成し遂げられる"今この画面を見て、その期待も高まった。

悩みは未だ尽きないけど、目標を達成するということにおいては、嬉しい気持ちでいっぱいだ。

引きこもりしていた時には中々味わえなかった"成功体験"。


「どうしよう、金曜日まで緊張で寝られないかもしれない…」


次のチャンスは、金曜日の部活。
これで先輩とも上手く仲良くなれれば…

ウキウキとしながら何度もアーカイブを眺め、現実世界へと想いを馳せた。


…その時。


『ピンポーン』


「…へ?」


突然、家の呼び鈴が鳴った。


「お、俺の家…だよな?」


今までに無かった事態に、俺は慌てて玄関まで出てきた。


隣人か?
いや、でもなんの迷惑も掛けてないはずだし…
あ、もしかしてこの前、思い立ってタップダンスの練習したから…?!


俺は全力で90度のお辞儀をしながら、ドアを開けた。


「うるさくしてすみませんでしたァァア!!」


そこには、


「よぉ、"浮気者"?

…今のお前も中々ウルセェけどな。」


ニヤニヤとした笑みを浮かべた先生が、腕を組んで立っていた。
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