BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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瞬き

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「めっちゃいい席~!」


「…ど真ん中だな。」


「よく見えんじゃん。」


俺たちは横一列に並んで座る。

俺は里田と主人の間に座り、ソワソワと上映時間を待っていた。

結構早く着いた為、上映までは他の映画の予告編などが流れている。

ポリポリポリ…

と咀嚼音が永遠と途切れないので、何事かと隣を見た。


「えぇ…」


里田は早速ポップコーンを食いまくっており、既に半分程の残量になっていた。


「いや里田…そのペースで食べてたら上映前に食べ終わるぞ?!」


「あ、そっか…どーしよ~!」


「もう一個買ってくれば…」


里田のボケは相変わらずだ。

すると里田は、いいこと思いついた!と言うようにこちらを見てくる。


「ね、一緒に買いに行こ!席分からなくなりそうだから!!」


「いや、それは覚えてくれよぉ…」


「レッツゴー!」


「オオオイ!里田と会話が成り立たないぞっ!!!」


里田は俺の手を握り、俺を劇場から連れ出した。


「ふふん♪」


里田は機嫌が良さそうに繋いだ手をブンブンと振っている。

まあ…楽しそうだしいいか。


「里田、腹減ってたの?」


「え?空いてないよ?」


「は?めっちゃポップコーン食ってたじゃんか」


「あ~あれ、田中連れ出す為にやったもん」


「…え?」


里田は何が面白いのか、笑いながら追加のポップコーンを注文している。


「だってさ、全然田中と2人っきりになれないから。」


里田は普段通りの調子でほい、とトレーを渡してくる。

(いや、俺が持つんか!)


と心の中ではツッコミながら、里田の意外な一面を目の当たりにした衝撃で、音になることはなかった。


「あの映画も主人がカッコいいやつだし…映画が始まるまでは俺に時間くれてもいいでしょ?」


本当は2人で出かけたかったなあ~とぼやきながら、劇場へと戻る道を進む。


「田中がずっと居てくれたらよかったのに…」


「……」


俺は、繋がれた手を解くことも出来ずに、ポップコーンが揺れる様を見ていることしか出来なかった。


******


『俺がそう言う目で見てたって、気付いてたでしょ?』


妹よ、兄に今大問題が発生しているぞ。

この映画の主人公である主人の台詞…どこかで聞き覚えがある。

公園を避けるようになったあの日の、俺を追い詰める主人が脳裏にチラついた。


(主人…っ!!!お前これ俺が見たがるって分かってて、あの時に…?!)


今まさに隣の主人が、悪い顔をしてニヤけている様が想像できる。

確かにあの時、よくもまあこんな小っ恥ずかしい台詞思いつくな、と思ってたんだ。


(嵌められた…っ!)


暗いながらも、隣くらいは見えるかもと思い、恐る恐る主人を盗み見てみると…

案の定、肘掛けに肘をついた主人がこちらをニヤニヤしながら見ていた。


(やっぱりわざとか!!!あとでチョップ入れなきゃ気が済まん…!)


俺がメラメラと燃えているうちに映画は佳境に入っていた。

主人がヒロインを壁に追い詰め、一線を越えようとした、その時。


『…このまま悪いこと、しちゃおうか?』


「(ウッ!!)」


思わずコーラを口の端から溢してしまった。

俺はあの瞬間の記憶が頭を駆け巡り、既に映画どころじゃなくなっていた。


「(…どしたの?)」


里田は突然俺の様子がおかしくなったことに気がついたようで、小声で話しかけてくる。

映画館では私語厳禁のため、目線だけで大丈夫だと伝える。


(本当の所は今すぐにでも飛び出したいけどな!!!!)


俺が予想外の辱めに震えていると、手に温かいものが重ねられた。

主人の手だ。


目で窮状を訴えると、主人はニヤっと笑う。


そのままゆっくりと近付き、


…唇を重ねられた。


(ぎゃぁぁああああ!!!!)


顔が熱い。
絶対に今、赤くなってる。

色々な感触や感覚が思い出され、居た堪れなくなってくる。


(映画に集中できなくさせやがってぇぇ…!!
チョップじゃなくて脛を蹴ってやるぅう!!!)


…結局俺は心ここに在らずの状態でエンドロールを眺めることになったのだった。



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