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番外編
ミッション2 バレずにデートしろ!
「これ、変装になってるか?」
「だいじょーぶ!なんか良い感じに不審者っぽいよ!」
「それは、大丈夫とは言わなくない?」
主人は変装のためのグッズを持ち合わせておらず、一度事務所に立ち寄ることにしたのだが……
結局マネージャーさんが渡してくれたのはバケットハットとマスクだったらしい。
明らかに芸能関係者と疑ってくれと言わんばかりのベタなアイテムだった。
いくら主人でも、2重で着用したら普通に怪しさが滲み出る。
頭部が小さ過ぎるのか、帽子がすっぽりと目元までを隠していて、不審者スタイルになっている。
「まぁ、なんとかなる!ミッションスタートォ!」
まだマスクの位置調整をしている主人の片手を取り、俺達は目的地へと歩き出した。
**********
「到着ゥ!深海の世界ッ!」
「そんなに混んでないな」
"深海の水族館"と名のついた暗い室内に足を踏み入れると、そこは正しく別世界。
彩度の高い青色にライトアップされた、大小様々な水槽が暗い空間に展示されている。
その中では、深海の生物達がゆったりと時間を過ごしていて、少し揺れる水面を観察するだけでもヒーリング効果がありそうだ。
(展示室内が暗いから、主人も過ごしやすいんじゃないかと思ったんだよね)
自然と心も落ち着いて、いつも煩いと揶揄される俺の声もトーンダウンしていく。
「ねぇ主人」
「田中、ストップ」
「むっ?!」
このカニ凄いゴツくない?と感想を聞こうとしたんだけど、そっと唇に指を添えられる。
いわゆる、しーってやつだ。
「変装してるから、本名で読んだら元も子もないだろ」
「あ、そっか。芸名も本名そのままだもんね」
「だからさ、今日1日は俺のこと、コウキって呼んで」
「こうき?」
首を傾げながら、何も考えずにその言葉を繰り返す。
目の前の主人はそれに満足したのか、大きく頷いて俺の手をゆるく握り直した。
「ありがと。よし、折角田中が俺に時間をくれたんだから、沢山楽しもうか」
「おう!バレずに楽しむぞ!それはそうと、そこのカニゴツくね?」
「うわ、トゲの量凄まじいね。モンスターとかにいそう」
俺達は穏やかに、でも楽しく軽口を叩きながら、順路を辿っていく。
少し歩くと、熱帯魚が展示されているブースに差し掛かった。
ブース全体がトンネルのような構造になっていて、魚のカラフルさとのコントラストに目を奪われた。
「ほぇ、カラフルな魚が多いなぁ……って、ん?どしたのコウキ」
水槽内の鮮やかな群れに感動して、主人に話しかけようと振り返ったのだが、当の本人は魚ではなく俺をじっと見ていた。
「なぁ、もう一回俺の名前呼んでくれない?」
「え?どっちの方……コウキ?」
「ふふ」
(え、何何?何の笑いなのそれ!)
主人は何が嬉しいのか、目元を緩めて俺の手を引く。
ぐいっ、と容赦なく引かれたから、体幹ゼロの俺は主人の胸に突撃してしまった。
あれ、と思ったのも束の間。
顎を持ち上げられて、唇に柔らかい感触のアレがくっ付く。
「あ?!ちゅ、ちゅー…?!」
「はぁ、マスク邪魔だな……仕方ないけど」
「何しとんじゃいッ!!」
主人は少しだけずらしたマスクをサッと元に戻して、何事もなかったかのように歩き出した。
(この、辻斬りならぬ辻キス魔…ッ!)
「田中。俺、次行きたい所があるんだけど」
「ふん!要望は聞こう」
「そう拗ねるなって……俺の家。来ない?」
「へ?しゅ……コウキの家ッ?!」
「そう、今日親の帰りが遅いんだ」
それまではただ握られていただけの手。
その指の間に、主人の長い指が滑り込んでくる。
親指の腹で掌を撫でるように刺激されて、ぴくりと肩が動いてしまった。
「……この意味、分かるでしょ?」
先程まで優しげに緩んでいた目元は、ゾクリと背を駆け抜けるような、涼やかな色気を含んでいた。
(あば、あばばば…!!!)
前略
妹よ、兄ちゃんは夕飯までに戻れるか分かりません。
くれぐれも探さないで下さい。
草々
**********
お知らせ失礼します。
『7分の1は、君に会いたい』という中編の連載を開始しました!
(BL小説大賞応募作品)
コンプレックス持ちの高校のアイドル×太陽のように明るい他校生
週に一度だけ顔を合わせる二人のアオハルなストーリーです。
ハピエン確約の甘酸っぱめ。
モブ俺好きでいてくださる方は、楽しんでいただけそうだな~と思っております。
お時間ありましたら是非!
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みんなの感想(194件)
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近況ボードで見たのですがR18から全年齢指定に伴い小説改変されるという事で、こちらで見れなくなる事は残念に思います。が!!!ムーンライトノベルズに移管されるという文面見て涙ドバドバ大感謝です😭😭😭! もう見れないのかと思い少しちょっとうるっと来ましたが、別の意味でドバっと涙溢れましたありがとうございますッッッ!!🙇🏻♀️´-
ムーンライトノベルズの方でのモブ(俺)楽しみに待っています🍀*゜!!!!
これはたまたまだったのですが、 巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。の方書籍を1週間前ほどに購入させて頂きました!はちのすさんの作品が本当に好きで、まさかのモブ(俺)の人とは知らずに本屋で即購入しておりました😖💞これからも応援させて頂きます!!
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名無しのナナ様
お返事が遅くなり誠に申し訳ございません…!
この度は、熱いコメントをお寄せくださりありがとうございます!
本当に嬉しく、どうお返ししよう…と悩みつつ文字を打っております。
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はちのす
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