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2章 新生活スタート
45 動揺
あっという間に授業が終わり、昼休み。
俺はグリフと話をするため、屋上を訪れていた。
「グリフ」
「あれ、少年!会いに来てくれたの」
グリフは聖獣のままの姿で、ゴロリと寝転がっていた。
いつも退屈していると言っていたマーナの話は本当なんだろう。
俺の姿を見かけた瞬間に、首元の毛をフワリと膨らませた。
猛禽類特有の鋭い嘴と、まん丸の瞳を嬉しそうに動かしている。
「少年、この前はとっっっても寂しかったんだよう…」
羽をフルフルと震わせながら俺に駆け寄ると、柔らかな首元の羽毛を擦り寄せてくる。
グリフが指しているこの前とは、魔獣部の活動で餌やりをしに来た時のことだろう。
(聖獣に餌というのも失礼な話かもしれないが…)
ザックをはじめとして、部のメンバーはもちろんグリフが人型を取るなんて知る由もない。
いつもは話しかけもしないらしく、こんなに距離感が近いことを知られると厄介な事になるのは明白だった。
そういう事情で食事だけを置き、いそいそと退散したのだが、その間グリフからの視線が背中に突き刺さっていたのだ。
エメル部長には『今日はグリフ様起きていらっしゃったね、しかも何だかすごく見られた気がする。』なんて言われてしまう始末。
「でも、こうして会いに来てくれるならいいや」
上機嫌に目を細めると、目線で座るよう俺に指示してくる。
「ここ、巣の中に座って」
「え、いいんですか」
「もちろん。あ、横になっても良いよ」
流石にそれは話しにくいので遠慮した。
しかも、人の巣(?)の中にお邪魔するとなると緊張が勝ってしまうので、ついつい隅の方で正座してしまう。
「むぅ、別に真ん中に座っても良いのに…あ、そうだ」
グリフは良い事思いついた!と言わんばかりに、俺の膝に頭をフワリと乗せた。
これはもしや、膝枕では…?
「少年の膝、あったかいなぁ」
「あ…はい」
「それで、何か話があったんじゃない?聞くよ」
俺の膝に頭を乗せながら、上目遣いでこちらを窺ってくる。
円な瞳にじっと見つめられ、ついつい手が動く。
「わっ」
するりと頬の毛を撫で、嘴の先を擽る。
ピクリ、と反応した身体に面白味を感じた俺は首筋を撫で続けた。
「あ、話っていうのは」
「ひぁ…このまま話すの…っ!」
「?はい、昼休みも残り少ないので」
「っ、わかったよう…」
俺はマーナと昨夜相談した事を説明した。
案の定驚いたグリフは、あまりの事につい人型を取ってしまっていた。
「ここから、出る…?」
「グリフが嫌じゃなければ、ですけど」
「っ、嫌なわけない!一緒に、絶対に一緒に行きたい…」
強い語気で放たれた言葉は、尻すぼみに小さくなっていく。
「でも、色々な事情を考えると…」
「グリフ、貴方の気持ちを聞きたい」
「え?」
「この先がどれだけあるか分からないけど、このままここで生を終えるのは本望か?」
息を小さく吸うと、そのままの勢いで続ける。
「俺はこの先すぐに死ぬかもしれないし、何らかの都合で居なくなるかもしれない。けど、グリフはまだまだ生き続けるだろう?人の寿命と違うんだ」
「…っ、そんな悲しい事言わないで…」
グリフは縋るように、俺の胸に頭を押し付けてくる。
その頭を優しく抱き起こすと、潤んだ目が露わになる。
「ここに居たいなら良い。けど、自己犠牲でここに居るなら。もし何処かへ旅立ちたいなら…俺と一緒に来てくれないか?」
「ぁう…」
「結論は急がないです。あと半年あるんで」
大層なことを言っている自覚はある。
それ故この段階で相談したわけだ。
ゆっくりと回答を出してくれれば良い。
そして、後悔なく生きて欲しい。
いつかは帰ってしまうなんて知ったら無責任だと怒られるかもしれないけど、それでもこんなことを続けるより良いだろう。
その思いで、真っ直ぐに目を見て微笑みかけた。
瞬間、グリフの顔はブワッと赤く染まる。
…あれ?
「うぅ、酷いよ。ボクが断らないことを知ってて、選択肢を与えて…微笑みかけるなんて」
「??」
「…考えさせて」
片側からポロリと流れ落ちた雫が、細い顎筋を掠めていく。
綺麗なその雫を親指で拭い、そのまま指で顎を持ち上げると、自然と視線が混ざり合った。
きょとんと見上げてくる表情が面白くて、つい口角が上がってしまう。
「また会いに来ます」
「~っ!!もう!!」
ガバリと起き上がったグリフは、またもやそっぽをむいてしまった。
なんか最近こんなこと多くないか?
そんなぼやきを残しつつ、俺は次の授業へ向かうのだった。
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