伝説の男、黒崎天斗!

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伝説の男、黒崎天斗!第38話

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「お母さん、ちょっと話があるんだけど…」

理佳子が母に薫のことを話す。

「それなら薫はしばらく家に連れてこようか。透には私から話すから」

理佳子の母、可奈子がそう言った。可奈子はずっと薫のことを不憫に思ってきた。可奈子は薫の母の姉である。幼い頃に母と別れその母親の愛情を知らずに育ってきた薫を、自分の子供のように理佳子と薫二人に分け隔てなく接してきたつもりでも、やはり薫にはどこか愛情不足なところを感じることが多かった。だからこそ、薫にしてやれることはどんなことでもしてきたつもりだった。

「わかった。たかと君にはそう伝えとくね!」

そう言ってすぐに理佳子は天斗に電話をかけ直す。

「もしもし、たかと君。お母さんが薫を家でしばらく預かるって言ってる。だから安心して」

「そうか!それなら助かる…今回のことはかなり危険が伴うみたいで、なんか重森の元カレのことが絡んでるとか…」

「た…たかと君…それは…たかと君も関わるのは止めてね…」

理佳子は急に不安に陥った。天斗が薫を庇って死んだ武田剛の二の舞になるのではと恐れたからだ…

「理佳子…何か知ってるのか?」

「うん…それは薫にとって人生を大きく変えた事件だったから…だから…私もたかと君が心配…」

「大丈夫だ!とにかく重森さえかくまってくれれば全て丸くおさまる!」

「うん…それなら良いけど…」

「理佳子、おばさんには宜しく言っといてくれよ?」

「うん、わかった。たかと君…約束して…この件は絶対…」

「あぁ、約束する!俺は死んでもお前を離さないよ!

「そうじゃ無くて…」

「わかってるって…心配するな!じゃあ宜しくな…」

「うん…」

電話を切った後も理佳子は妙な胸騒ぎがしてならない…たかと君…きっと約束守らないよね…


「あぁ~いい湯だった!」

小山内はわざと大きな声で風呂場から声を上げた。薫が吟子からパッと離れて手で涙を拭う。吟子も後ろを向いて涙と鼻水をティッシュで拭き取る。

「清、かおりんはこのまま家に拉致しちゃおうか!」

「おっ!いいね!」

「お母さん…」

薫には笑顔が戻っていた。

「かおりん可愛すぎるからさ…もう帰したくないよ…」

「母ちゃんよほどかおりん気に入ったみたいだな…」

「かおりんはもう私の娘さ!」

「お母さん…ありがとう…」

「清、ちょっとお酒買ってきてよ!久々に飲みたくなっちゃった!」

「母ちゃん、止めとけよ…医者に止められてるだろう…」

「良いから…今日は凄く気分がいいんだ!かおりんも一緒に飲む?」

「はい!付き合います!」

「おっ!良いねぇ…それでこそ私の娘だ!清、早く!」

「もう…母ちゃんは人使い荒いなぁ…」

そう言ってしぶしぶ一人で出ていった。

「かおりん…清のことを宜しく頼むよ…あいつバカだけどさ、心根は凄く優しいから…こんなこと親の私が言うことじゃ無いんだけどね…もし、かおりんに見捨てられたら…もうあいつの横にふさわしい女は現れないだろうさ…かおりん以外には、私も認められないしねぇ~」

そう言って吟子は笑った。薫自身も、この家に嫁ぎたいとこの時心から思うのであった。それが儚い幻だとわかっていながらも…

理佳子の母、可奈子から薫に電話が鳴る。

「もしもし、可奈子姉ちゃん?」

薫が理佳子の母を姉ちゃんと呼んだのには、理由があった。理佳子の母がオバサンとは言わせたくなかったので、生まれた頃から透と薫には可奈子姉ちゃんと呼ばせていたのだ。

「薫、久しぶりねぇ。さっきたかちゃんから連絡来て薫が危険なことに巻き込まれてるって聞いたから、もし良かったらしばらく家であなたを預かろうと思って…」

「可奈子姉ちゃん、ありがとう…でもね、今私、小山内って彼の家にお泊まりに来てるの…」

その時吟子が薫に電話を代わるようにジェスチャーした。薫は

「可奈子姉ちゃんちょっと待って…」

そう言って吟子に電話を渡す。

「あっ、もしもし~、小山内清の母の吟子と申します~。あの、かおりちゃんが何やらトラブルに巻き込まれて危ないって聞いたもので、もし良かったらウチがお預かりしたいと思うんですが、いかがでしょう?」

「いえ、そんな申し訳ないですわ~、薫はまだ小さい頃に母と生き別れになって、私が薫の母親代理のようなものなんですが…家で預かろうかって話をしたとこなんです~」

「色々事情があることは聞いております。もし差し支えなければ学校の事情もありますし、こちらでお預かりした方がかおりちゃんにとっても宜しいのではないかと…」

「そう言って下さるのであれば、薫の兄、透の方には私から話しておきますので、お願いしようかしら…」

「ええ!ウチは喜んでお預かり致したいと思います!」

「わかりました。それではよろしくお願いいたします。薫に代わって頂いてもよろしいですか?」

「はい…」

薫に再び電話が戻り

「もしもし?」

「薫、透には私が上手く話しておくから、くれぐれもご迷惑にならないようにね?」

「うん、ありがとう、可奈子姉ちゃん!」

そう言って電話を切った。可奈子は薫の胸踊るような声に安心していた。きっとあちらのお母さんは薫に良くしてくださってるのね…出来るだけあの子が幸せを感じられる方向に好きにさせてあげたい…それがあなたの母に対してしてあげられる精一杯の誠意…薫…ごめんね…何もしてあげられなくて…


「お母さん!ありがとう!まさかそんな…本当にいいんですか?」

「かおりん、私の勘が働くの…あんた今…凄くヤバい状況に陥ってるでしょう~」

「お母さん…」

「私もさ…たくさん修羅場くぐってきたからわかるのよ…あんたがそれだけ感情的になってるのはただ事じゃないって…しばらくは大人しくしてなさい!」

「……」

「まぁ、どうにもならない状況になったら最悪私が何とかしてあげるわ!」

そう言って豪快に笑う。薫も何となく安心して笑顔がこぼれる。

「はい。よろしくお願いします。」

やっぱりこの人凄い…全部お見通しって感じ…

「ただいま~、酒買ってきたぞ…高校生の息子に酒を買わせる不良主婦!」

「よく売ってくれたねぇ…」

「買いに行かせといて言う台詞かよ!」

吟子も薫を預かる以上は保護者としての責任があるので薫と二人で寝室を共にすることになった。薫は吟子の布団で吟子に包まれて寝ている。
その日薫は夢を見た。それは潜在的に眠っている記憶だったのかも知れない…透…薫…ごめんね…お母さん…あなた達と離れたくない…あなた達を置いていきたくない…でも…お母さん出ていかなきゃならないの…本当にごめんなさい…母さん…どこ行っちゃうの?透…母さんは離れていてもあなた達を見守ってるから…お母さん…どこかおでかけ?薫…母さん必ずあなた達を迎えにくるからね…ごめんね…母さん行っちゃやだ!ごめんね透…お母さん行っちゃやだ!ごめんなさい…薫…母が泣いている。
薫が目を覚ましたとき涙が溢れていた。吟子が薫を腕枕して薫を包んで寝ている。薫は安心してまた眠りに落ちた。
かおりん…可哀想に…なかなか眠れないんだねぇ…吟子は腕の中で薫の頭を優しく撫でた。

日曜日の朝、小山内の父が起床しキッチンを覗くと薫と鉢合わせた。

「おはよう、吟子さん…一晩で随分若返ったねぇ…」

小山内の父はまだ寝ぼけている。

「パパ、私はこっちです!」

「あっ!ママおはよう!じゃあ清か!お前…女装上手いな…今日はコスプレのイベントでもあるのか?」

「お父さんおはようございます!」

「えぇ!声色まで変えちゃって…そっちの才能あるなぁ…」

「パパ、かおりんよ!ちゃんと挨拶して!」

「かおりん!?かおりんかぁ~…これは某テレビ局のモニタリングか何かか?」

「パパ、かおりんはしばらく家で預かることになったのよ!」

「お父さん、ふつつかものですが宜しくお願いします」

そう言って薫は笑った。

「おぉ!ついに家にお嫁に来てくれたか!いやぁ、まるで浦島金太郎にでもなった気分だよ…」

「パパ、寝ぼけてないで顔洗ってきて」

小山内の父は朝が弱い。

「母ちゃん…おはよう…」

「おはよう清!」

「あれ?母ちゃん随分若返ったなぁ…」

「清…あんた母ちゃんと自分の彼女の区別もつかないの?」

小山内は目を擦り見開いて

「かおりんかぁ!」

小山内もまた朝が弱かった。

「あんたも顔洗って目を覚ましてきな!」

「はぁい…」

小山内の父と小山内が二人並んで寝ぼけながら椅子に座って歯を磨いている。その姿は正にうりふたつで、二人ともこっくり、こっくりしながら壁に頭を打ち付けてハッ!となっていた。

「お母さん、あの二人はまるで生き写しですね」

「ほんとにねぇ…たまに怖いくらい似ていてビックリするよ…この前なんか朝寝ぼけてパパが押し入れをトイレと勘違いして用を足そうとするからあわててトイレに誘導したら、今度は清がまるっきり同じ行動取った時には、私の身体は一つじゃダメなんだって思った事があったよ…」

あはははははは…

薫はそうとうツボに入ったらしく、腹を抱えて大笑いした。

「お腹いたい、腹筋痛い…」

吟子はその笑顔を見てほっこりする。


重森には、関わるな!とは言ったものの…あいつが居なきゃまるっきり情報が入ってこねぇ…これじゃ向こうがどこでどう待ち構えていても打つ手がねぇ…天斗はなす術がなく途方にくれていた。その時知らない番号から着信がある。

「もしもし、偽物か?」

「偽物って…せめて影武者にしてくれよ…」

「安藤の仲間が動き出したって情報が来てる。やっぱり黒崎と姉さん狙いだが、先ずは姉さんを先に狙ってるらしい…まずいぞ!」

「重森には情報回すなよ!」

「姉さんから強く言われてるからまるっきり流さないわけにはいかねぇよ…」

「もう言ったのか?」

「動き出したとだけは…」

「あいつは黙ってられる性格じゃねーだろ…」

「大丈夫だ!姉さんには嘘の情報流して安藤達と接触しないように考えてる!」

「そうか…それならいいが…」

「向こうの黒崎達も動いてるらしい…向こうが先に安藤落としてくれれば安心なんだがな…」

「武田剛の仇は俺達が取る!重森と約束したんだ…あいつの心を慰めてやりてぇんだ…」

「影武者…わかった、全面協力するよ!」

「おう!頼む!」

「じゃあ、今からそっち行くから待っててくれ!」

「わかった」

それから待つこと20分、外でバイクの音がしたので天斗は家の外に出た。

「悪いな、それで安藤は?」

「向こうも俺達の動向を探って来てるらしいから、むやみやたらには動けないんだが…一応思い当たる節がある」

「んじゃ早速行くか?」

「そうだな、手当たり次第行ってみるしかない。刻一刻姉さんの身に危険が迫っているしな…」

俺達は安藤を探しに出た。

「おかしいな…色々当たってるのにどれも外れだ…」

「もしかしたら…誰かが俺達を撹乱してるのかも…」

その時小山内から天斗に着信

「もしもし?黒ちゃん!かおりちゃん、昨日から家に泊に来てたんだけど…急に姿が見えなくなった!どうしよう…」

「は?何でお前ん家に居るんだよ?理佳子ん家が預かるって話じゃ…」

「母ちゃんが話つけたからさ…」

「まずいな…あいつが独自に動いたとなると最悪な事態になりかねない…」

「とりあえず黒ちゃん合流したい!」

「わかった!俺も重森の仲間に協力してもらって安藤探してたんだが、合流して先ずは重森を探そう!」

「わかった!」

そして天斗達と小山内が合流した。

「影武者…もしかして…俺達を撹乱してるのは…」

「そうか…その可能性は十分考えられるな…俺達を出し抜いて一人でリスクを負って…」

「それにしても姉さん一人で情報を得るのは考えにくい…誰か協力者が居るとしか…」

「誰だ?」

「もしかしてだけど…向こうの黒崎か…又は俺達の仲間の誰かだ…」

「向こうの黒崎は違うな…恐らく誰かを使って俺に重森を託した…」

「じゃあやっぱり…姉さんに脅されて情報流してる仲間がいる…」

「ったく…余計な手間取らせる奴だぜ…」

「そう言ってくれるな…姉さんは俺達にとって絶対的存在なんだよ…」

「あいつの身に危険が及んでんのにそんなこと言ってられねぇだろ!」
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