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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる
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明日の朝、殿下に会える事が決まった。
彼の気持ちを無碍にしない様に、撤回してもらうにはどうすれば良いか。
あんまり嫌われると困るし。俺を守ってくれる人が居なくなる。
ダメだ。さっぱり思いつかん。
オスカー君の方が何倍もしっかりしている気がする。本当に彼は年下なのか…実は童顔なだけで40代です、とか言われても騙せるんじゃないか?
一旦、道具を整理して落ち着こう。
「おかえり、俺の相棒~!
はは。なーんちゃって…」
ーブォン
《所有者、トキトウ レンの声帯を確認。【異世界のコスメBOX】を発動しますか? 》
「なっ、何だ急に!
メイクボックスが喋った⁉︎」
俺の大事な道具が魔改造されてしまった。
爺さんか? あのジジイがやったのか!
《発動しますか》
「は、はい。いや、待って」
《発動します》
待てって言っただろうが‼︎
《マナを500消費し、BOX内の全てを元に戻します“Restore"》
光った⁈ バカなっ!
しかも心なしか、疲れた様な。何か生気を吸い取られたーー?
《完了しました。確認して下さい》
恐る恐るボックスを開けると、ビックリするほど綺麗だった。
新作のコスメだけじゃない。使用頻度の高いシャドウや下地まで、新品同様になっている。
「嘘だろ。廃盤のコントロールベースまで…もう使えないと思ってたのに。マジか、最高かよ」
ブラシも全部新品だ。筆をしごいてみれば、初めの描きやすさが復活していた。
神機能っ、素晴らしい!
「ありがとう。最高だ、お前は。
ありがとう! 俺のメイクボックス!」
《訂正を求めます。【異世界のコスメBOX】が正式名称です》
「あ、はい。すいません。
ーー…長いんでBOXで良いですか」
《了承しました。【異世界のコスメBOX】又は【BOX】とお呼び下さい》
「ああ、うん。ありがとう?」
《現在のレベルでは、使用出来る機能が制限されています。あと2回の使用で、レベルが上がります》
2回使用って、今のをか?
それともコスメを使えば良いのか?
「なあ、何をすればレベルが上がるんだ?」
《あと2回の使用で、レベルが上がります》
「そうじゃなくて。具体的にだよ」
《あと2回の使用で、レベルが上がります》
「もういいや、自分で考えるから」
《発動を停止します》
戻った。新品になった事はそのままだが、さっきまで光って見えたボックスが、見慣れた物に戻っていた。
お、タッチアップ用の化粧水とクリーム入ってるじゃん。
ここの気温には、ちと重い気がするけど無いよりマシだな。
風呂入ったら使おう。
にしても、風呂があって良かった。
何処から水を引いてるんだ?
不思議と排水口も見当たらないんだよなぁ。
謎だ。
夜、入浴の準備に来てくれたメイドさんに聞くと、風呂の謎は解けた。
魔法らしい。うん、ファンタジーって便利。
水属性を持つメイドが水を出したり、消したりしてくれるそうだ。
温める方法は、火属性の魔石を使えば一瞬だってさ。逆に火属性の人が、水属性の魔石を使っても同じで、なんなら2属性持ちの人なら、秒で終わる、と。
すげー。俺もやりてえ。
今日も入浴中の手伝いは丁重にお断りして、風呂を満喫する。
まあ、バスタブは洋画に出てきそうなヤツで慣れないけど。
メイドさんが薔薇を浮かしてくれたから、良い香りで部屋が充満している。
極楽なんだが、この国では男の風呂にも花を浮かべるのか?
湯上がりに1日ぶりの化粧水とクリームをつければ、懐かしさを感じた。
まだたった2日しか経ってねーのにな。
今までの日常が、全部遠い記憶に感じちまう。
あ゛ぁーっ! 感傷に浸ってる暇はないだろ! シャキッとしろよ、俺。
翌朝ノックの音で目が覚めると、オスカー君でもメイドさんでもなく、まさかのベイリー王子でした。
「おはよう、レン。
君が会いたいって言うから、朝食も一緒にしたら時間の節約になると思って」
「それでこんなに朝早くからですか……」
「いやあ、せっかくだから寝起きの顔を見てみたかったんだ」
「……で、どうですか。男の寝起きの間抜け面は」
「んー。なんか老けたね」
余計なお世話だ。
誰だって寝起きの顔は死んでんだよ。
イケメンの王子には分からないかも知れないが。
「申し訳ありません、トキトゥ様。
殿下がどうしてもと仰るので」
「いやいや大丈夫だよ、オスカー君。
君のせいじゃないから」
「あれ、今日のレンは何だかトゲがあるね。いいねー、新鮮で。
ところでレン。何故執事を君付けで呼んでいるんだい? 」
「え? 変ですか?
好きな様に呼んで良いって言われたから、呼びやすいのを選んだんですけど」
「君がそうしたいなら構わないけど、執事は困るんじゃないかな」
え、そうなの。
オスカー君を見ると、苦笑いしていた。
どうやら、殿下の言ってる事は正しいらしい。
「聖女様も戸惑っていたけど、君もとはね。やっぱり君達の世界とは文化が違う様だ」
「はあ」
「使用人に敬称は要らない。
主従関係のバランスが曖昧になってしまうからね。
他人が聞けば、レンを侮るだろうし、執事の方は問題があるのではないかと疑惑を生む。お互いの為には、おすすめしないかな」
そういうもんか。
庶民の俺には馴染みのない感覚だけど、お金持ちとか、外国の王族とかは知ってそう。
だから多分異世界とかは関係ない。
「なるほど。
ごめんね、オスカー君。これからはちゃんとオスカーって呼ぶから」
「いえ。私の方こそ言い出せず申し訳ありませんでした」
「ふぅん、意外だな。ジークからは補佐も出来る優秀な執事と聞いていたから、てっきり主人の為に進言するかと思ったが…見込み違いだった様だ」
「っ仰る通りでございます」
「殿下! 彼は悪くありません。とても良く気づいてくれて、俺を助けてくれています」
呼び方のせいで、オスカー君の評価を下げてしまった。殿下も面倒な性格だな。
「トキトゥ様ーー。
いえ、進言を考えた上で黙っていたのは私です。
トキトゥ様に“オスカー君"と呼ばれると、心地良い温もりを感じてしまって、つい甘えてしまいました。申し訳ありません」
君ってヤツはっ!
会ってまる3日も経っていないのに、そんな風に俺の事を!
泣きそう。良い子すぎて。もう本当欠点がない、この子。
「オスカー君っ‼︎ じゃなかった、オスカー!」
「へー。今私は何を見させられてるんだろう」
そんな顔もするんですね、王子。
「とりあえず朝食を持って来てくれるかな? さあ、レンは私と話そうか」
「かしこまりました」
「あ、はい」
ベイリー殿下の効果か、品数と食器がだいぶグレードアップしている。
これ食い切れるかな。うっぷ。
「そろそろ、本題に入ろうか。
何か話したい事があるんだろう?」
「その、お世話をしてくれるメイドの事なんですけど……」
「おや、何か粗相でもしたのかい。そんな報告は受けていないんだが」
今の発言を聞いた、メイド達がビクッと身体を震わせたのが、視界に入った。
大丈夫です。大丈夫ですからっ。
「違います! とても良くしてもらってます。ただ、初日に対応してくれたミレーさん達を見かけないなぁと思って」
「…ああ、なるほど。彼女達は君を危険な目に遭わせたからね。出て行ってもらったよ」
「それが誤解なんです!
とにかく彼女達に何の落ち度もありません!」
「でも実際、君は危なかった。もう少し発見が遅れていたら、取り返しがつかなかったかも知れない」
「逆に、逆に気づいてくれたからこそ、無事だったと思うんです。
だから、戻してあげてもらえませんか」
めっちゃジロジロ探る様に見られてる。
遮る壁が欲しい。いたたまれない。
「私は、レンの為を思って口出ししたんだが…ふぅん、残念だ」
ヒィッ。
「いや、あの。お気持ちはめちゃくちゃ嬉しいです! 本当にっ。
ただ、彼女達が……その」
「ミレーと言ったか。メイドの名前を憶えているなんて、気に入っていた様だね。
ーーああ、そういう事か。
よし分かった。そのメイドを君の専属としてつけよう」
「えっと、他の方も」
「分かってる分かってる。
1人だけ特別扱いすると、バレてしまうからな。安心して良いよ。その辺のフォローもしておこう」
え、絶対違う。何か誤解してない?
そのニヤニヤ顔やめてくれ。
ねえ、違うから。絶対何か誤解してるから!
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「分かってるって。
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「だから、違うってーーーー!!!!」
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