異世界に飛ばされたBA(男)の受難

豆もち。

文字の大きさ
14 / 19
BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる

魔術師団団長の孫と嫁




 魔法学のさわりだけ習ったけど、俺のスキルに当てはめられるかさっぱり分からん。
 今もこうしているうちに爺さん…じゃなかった、団長が来てしまう。
 
 なんか、あの変態気質な先生に相談するのは気が引けて、結局何も用意出来てねえ。



「トキトゥ様、ドバース卿がお越しです」
「どーぞー」


 来ちゃった。さては爺さ、げふん、団長様は10分前行動派だな?


「しばらくぶりだな、トキトゥ。
息災だったか?」
「まあ一応」
「そうか。
今日会いに来たのはな、進捗を聞きたかったんじゃ」


 でしょうねー。


「いや、ほんとすみません。全く進んでません」
「ほ?」
「(馬鹿正直過ぎます、トキトゥ様)」


 しまった。ストレートに言ってしまった。
 オスカー君にあれ程、言われてたのに。
やべえ、オスカー君の方見れねぇ。
かと言って真正面の団長様は、固まっちまった。






「ふむふむ、まあそうか。
ジーク坊から教育を開始したと聞いているからな。と思っておった」


 教育に間違いはないけど、言い方がなんか違う気が…。
 あとお見通しなんですね。釘を刺しに来たのかな?


「すみません」
「よいよい。トキトゥは歳のわりに正直だな。もうちと、誤魔化す事も覚えた方が良いぞ」
「ドバース卿の仰る通りです」
「 (オスカー君まで?! ) ええー」
「ーーしかし、トキトゥ。
そんか態度であったか?
何やら今日は距離を感じるんじゃが」


 貴方様が偉い人に加えて、チーターだと判明しましたからね!
 俺は保身でいっぱいなんだ。


「認識を改めただけです」
「ふむ、別に前のままで構わんよ。
8人目の孫が出来たぐらいにしか思っとらん」


 いやそれだいぶ大事。
 親しい若者たにんみうちって、全然定義ちがうからな。
 オカンに引き続き、祖父まで手に入れちゃったよ、俺。
ある意味、心強いな。


「……じゃ、遠慮なく。
怒らないで聞いて欲しいんだが、ウイリアム爺さんって呼ぶのは、さすがに無礼?」
「ホウ! よいよい!
それでいこう、決まりじゃ!」


 やったー、本人公認の爺さん呼びGETだぜ。
 てか7人も孫が居て、まだ欲しいのか。


「ありがとう。
明日、休みなんだけどお嫁さんに会えたりする?」


 ダラケても怒られなさそうだから、親戚の爺さんだと思って接しよう。
その方がゆとりを持てる気がするっつうか、第2の家族みたいな存在が出来て、ホッとしている自分が居た。
 気付かぬ間に、ホームシックだったのかも知れない。
ーーなるか。普通なるよな、うん。異世界だぞ、恥ずかしくない、当たり前だ。
よし、そう思おう。


「会えるぞ。孫は知らんが、嫁は家に居るからな」
「本人が大丈夫だったら、行って良いっすか。近い?」
「馬車で30分くらいだったかの。
朝一で良いか?」


 爺さん、いきなり連れてけって言った俺も酷いけど、朝一はヤバくないか。
 お嫁さんも嫌なんじゃ……。


「いや、あくまで本人の許可取ってからだから、ちょっと」
「ん? 問題ない。トキトゥの話をしたらな、いつでも来てくれと言っておった。
何も気にせんで良い」
「あ、意外とノリ気なのね、お嫁さん。
ならいっか、朝一で」
「決まりじゃな!
ワシから宰相と殿下には話を通しておく。
そうじゃ、朝食も向こうで食べれば良いな」
「えっ(いったい何時からのつもりなんだ)」
「起きたら出かける準備をしておけ。
お腹は空かせておくんじゃぞ。今晩は控えめにしておくのが良かろう」


 いつでも来て良いと、朝ごはん食べさせろはイコールじゃないぞ、爺さん。
 俺、初対面から嫌われるのは嫌だよ。


「そこの執事、そのつもりで動いてくれ」
「かしこまりました」


 オスカー君?! 良いの? 嫌がらせ以外の何ものでもないよ?


「どうした、黙り込んで。
なんなら泊まっても良いぞ」
「なあ。お嫁さんとの仲は良好か?」
「さあな。用がある時しか顔を合わさんし、喋る事もないからのぉ」


 不安だ。俺だったら迷惑でしかない。


「こうはしておれんな。孫に連絡して来よう。
トキトゥ、約束じゃぞ。寝坊せん様になっ」
「あー、はい」
「何だその気の抜けた返事は。シャキッとしろ、若者よ」


 爺さんは、勝手に決めて嵐の様に去って行った。


「オスカー、俺嫌われないかな」
「…ドバース卿には可愛がられていらっしゃるかと」
「いや、お孫さん夫妻に」
「……私には分かりかねます」


 君は道連れにしてあげよう。


「そっか。君も一緒に行くからね」
「はい? 」
「だって俺の執事じゃん」
「かし、こまりました」


 顔に巻き込むなって書いてんぞ、おい。
もっと違う場面で、年相応な反応をしてもらいたいね。








「おはようございます、トキトゥ様」
「おはよう、ミレーさん」


 そう言えば、レン様呼びからトキトゥに戻ってんだよなー。
ハッ! まさかさり気なく距離を置きにきているのか?
 むしろその意思表示!?
 ツライ。好感持たれていると思ってただけにダメージがデカい。


「あの、どうかなさいましたか?」
「何でもないです」
「そうですか? 
あっ見て下さい、この顔。昨日トキトゥ様がして下さったおかげで、いつもより肌ツヤが良いんです!」
「ああ、まぁあんだけリンパ詰まってたらね。そりゃ変わると思いますよ」
「りんぱ? りんぱとは何ですか?
それが何の関係があるんです?
私でも出来るでしょうか!」


 朝から元気だなー。
 おぉ? ミレーさんや、体勢体勢。
めっちゃベッドに乗り上げてるよ。
もうアプローチかと勘違いしそうなくらいに。わざとなら虚しくなるから、止めてくれ。


「あー、出来ると思います」
「本当ですかっ!?」
「うん。でもとりあえず、どいてもらえません?」
「はい?」


 ニッコリ笑いながら、俺の太腿に置かれたミレーさんの手を指差すと、彼女は顔を真っ赤にして飛び退いた。
 んー。だんだんミレーさんのイメージが崩れていくな。
 おっちょこちょいな方が素なのかも知れない。


「もももっ申し訳ありませんっ」
「大丈夫。気にしないで下さい (わざとでないなら)」
「はい……」


 やっぱり被験者には別の人に頼んだ方が良いか? 
 これ以上ミレーさんからの好感度が下がるのも嫌だし。


「それではお支度の準備をしますね」
「お願いします」



 こうして必要最低限の会話のみの気まずい雰囲気は、爺さんが迎えに来るまで続いた。
 途中、オスカー君が部屋に入ろうとして、何か察したかの様にドア閉めた事はあったが。恐らく勘違いしてるな。
 後で訂正しよう。
何より王子に報告されない様にしないとね。





 初めての馬車は、漫画で見た様な立派な物だった。
 不思議と揺れもなく、クッションのおかげか尻も快適で感動した。
さらに、初めての城外で俺のテンションはかなり上がっていた様だ。
 アレコレ目に入ったモノを片っ端から聞いたせいで、爺さんにもオスカー君にも生温かい目で見られている。
ーー現在進行形で。


「フォッフォッフォ!
いや~、トキトゥ。ワシは新しい孫じゃなくて曽孫が出来た様じゃの」
「ブッ」


 くそっ、揶揄いやがって。
 つかオスカー君、笑うのは酷くないか?
吹き出してんじゃん。良くないよ。


「じゃあトキトゥさんは、僕の甥っ子かな?」
「エリックさんまでっ!
止めて下さい、物珍しかっただけなんです」
「アハハ、ごめんごめん。
でも爺様がこんなに気に入るのは珍しいからねぇー、僕は全然構わないけど」


 朝っぱらからの訪問にも気を悪くする事なく、朗らかに出迎えてくれた孫のエリックさん。
 彼は32歳で、結婚3年目らしい。
 おっ? てことは姉さん女房か。
いいなー。


「それより、朝から押しかけてすみません。…しかもその、朝食まで」
「良いんだよ! 久しぶりに賑やかな朝食になりそうだっ。あっ、妻が下りてきた様だ」


 エリックさんの視線の先を追うと、ヴェールを被った女性が階段を下りて来た。
 手すりにかかった手には、手袋がはめられていて、全身を布で覆う様に隠されている。
 とてつもなく失礼だが、正直不気味だ。


「お待たせしてすみません。お祖父様、トキトゥ様」
「朝からすまんな。
さっそくで悪いが、食事を頼めるか?
ワシは君が作ったスープが好きなんじゃ」


 爺さんっ、孫のお嫁さんに対して、なんて図々しいんだ!


「ええ、すぐにご用意しますね」


 ヴェールで顔は見えないけど、意外と怒ってなさそう?
 声が見た目に反して、すごく明るめな気がする。


「あっ、奥さんすみません!
はじめまして、レン・トキトウです」
「はじめまして、夫からお話は聞いております。テレーズです。
今日は、私のためにありがとうございます」


 深々と頭を下げ、少しトーンの下がった声で、テレーズさんは挨拶してくれた。
やっぱり、いきなり他人に会うのは嫌だよな。事情が事情だし。
 メンタルもフォロー出来れば良いんだが、そっち方面はさっぱりだからなー。
爺さんには期待出来ないし、エリックさん頼みだな。
 お願いします。俺が帰るまで、家に居て下さい。









感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
【毎日12:10更新!】 松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?