異世界に飛ばされたBA(男)の受難

豆もち。

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BA、聖女召喚の儀式に巻き込まれる



「さっ、どうぞ。
おかわりもありますから、たくさん召し上がって下さいね」


 20分程でパパッと作ってくれたのは、サラダとミネストローネ似のスープ、こんがり焼いた厚切りベーコンに香ばしい香りが漂うカンパーニュパン。
 めっちゃ美味そう! 
 食器がアカシヤみたいな木製だからか、ジブリ飯の様だ。 
 食ってみたかったんだよな、こういうのっ!


「うむ。では頂こうか。ほれトキトゥ、たくさん食べるんだぞ。特に彼女のスープは絶品じゃ」
「テレーズさん、ありがとうございます!
いただきますっ」
「ん? いただきますってのは何だい?
祈りの一種か?」


 ああ、そうか。手を合わせて“いただきます”は、日本特有だよな。
 ベイリー王子と一緒に食べた時は、何にも言われなかったから忘れてた。


「祈りというより、感謝ですかね。
食材や作ってくれた人に対する。
まあ、癖なのでちゃんとは考えずにやっちゃうんですけど」
「へえ、素敵な考えじゃないか!
なあテレーズ」
「ええ本当に」
「この国ではどうしてるんですか?」
「知らないのか? 
本当に遠くから来たんだね。爺様からトキトゥさんは、遠い異国の少数民族だって聞いてたんだが、見た感じ普通だろう?
こっちの生活が長いのかと思ってたんだ」


 少数民族って…、まあそうか。
 異世界人なんて言えないもんな。
 城でも一部の人しか知らないわけだし。


「基本はその場に居る、1番偉い人か客人が食事に手をつけたら、そのまま僕達も食べるんだ。今日だとトキトゥさんか爺様が食べ始めたら開始の合図だよ」
「へー (昭和の家か、会食と一緒だな)」
「一般的にはね。けど、教会に所属する人や信仰が厚い人なんかは食事前に祈りを捧げる事が多い」
「なるほど。そういう人の前だと、やっぱり一緒に祈った方が良いんですか?」
「んー、場合によるかな。たいていの人は気にしないけど、一部の熱心な人は気を悪くするかも」


 今度教えてもらおう。厄介事は避けたい。
……スープうま。爺さんが絶賛するのも頷ける。城の高級な味も最高だが、テレーズさんのはほっこりする感じだ。クセになるというか、毎日飲んでも飽きが来なそう。


「とても美味しいです」
「本当かい? 嬉しいよ、テレーズは料理上手で僕の自慢なんだ」
「そうじゃろ、そうじゃろ」
「ありがとうございます」


 奥さんが褒められて、エリックさんの方が喜んでいる。
 ベタ惚れだな。こんなに素敵な夫妻なんだ、力になってあげたい。






「ごちそうさまでした」
「こんな料理で良ければ、いつでもいらして下さいね」
「わあ、めっちゃ嬉しいです!」
「そうだぞトキトゥさん! いつでもおいで。育ち盛りはたくさん食べないと」


 デジャヴ。もしかしなくても、ここでは俺は童顔なのか…。
まぁな、彫りの深い西洋風の見た目ばっかりだもんな。
 外人からすると、日本人は童顔って言うし、その現象だろう。
 決して、身体つきがひょろっちいからだとは思いたくない。


「一応ですけど、俺24歳です。成人してます (日本では)」
「「24っ?」」
「ホッホッホ、やはり驚くわな!
ワシも驚いた」


 やっぱり誤解されてた。
 その分優しくしてもらえるだろうから、若く見られるのは、得っちゃ得なんだが。
 こう、男の矜持というか。
細マッチョのはずなんだけどな。鍛えるべきか?


「なんか、すみません」
「いやいや、すまなかった。
でもそうか。トキトゥさんは立派な大人なんだな。ーーまあ、24なら甥っ子の範囲内だから大丈夫だ」
「じゃろ」
「そうですね」


 え。まだその話続いてたのか?
論点おかしくね? 天然なのか、この家族。


「え~っと、じゃあ、はじめたいんですけど」


 チラッとテレーズさんを見ると、ビクッと震えた。
 日を改めた方が良いのかな?


「うむ、頼む」
「そうだね! お願いするよ。
テレーズ、僕達は席を外した方が良いかい?」
「あっ…出来れば……」
「分かった。爺様と僕はここに居るから、2階で診てもらいなよ。僕の部屋を使って良いから。トキトゥさんも、君の部屋よりやりやすいだろう。
執事の君も、ここに居てくれるかい」
「かしこまりました」
「分かったわ。
トキトゥ様、こちらにお願いします」
「あ、はい」


 部屋に入るなり、テレーズさんは深く息を吐き、ヴェールと手袋を一気にとった。
 意外と漢気ありますね。


「どう、でしょうか。
治りますか?」


 全体的に肌荒れが酷く、皮膚が粉っぽかったり、剥けたりしてシワになっている。
 ん~、荒れてるけど掻きむしった感じはないし、アトピーらしき湿疹や帯状疱疹も見当たらない。


「背中や脚、腕も同じですか?」
「ええ。でも特に顔や手足が酷くて」
「普段はどういうケアを?」
「オイルや軟膏を塗っています」


 この乾燥具合では、保湿が間に合ってないな。完全にバリア機能が壊れている。


「特にどんな時が酷いですか? かゆみとかは?」
「お風呂上がりとかでしょうか。かゆみは時々です」
「かなり肌全体が赤くなってますが、火照りや痛みはどうですか」
「火照りはありません。痛みは皮膚が引っ張られるというか、例えば笑った時ですとか、水に触った時。オイルや軟膏を塗る時も痛いです」


 これは、かなり酷い乾燥肌なだけって可能性もあるぞ。
 お客さんでも、年中粉ふくから皮膚科でワセリン処方されてるって人居たな。


「症状は、ここ数年なんですよね。
原因に心当たりはありますか。環境の変化とか、習慣が変わったとか、特定の食べ物で調子が悪くなるとか」
「変化……特に思い当たりませんけど。
ただ、お肉より野菜を食べる事が増えたかしら。どうも胃もたれしてしまって」


 そういや、テレーズさんだけベーコン食べてなかったな。
もしかして、動物性の脂が足りないんじゃ。


「お肉は全く食べないんですか」
「ええ、胃もたれが酷くてトラウマになってしまって、ここ2年ぐらいは口にしていません」


 全てではないが、原因の一部ではあるな。


「お湯の温度とか熱いの好きですか」
「どうして分かるんです? 
スッキリするから、好きなんです。ぬるいとあまり洗えた気がしないでしょう」


 乾燥肌は熱いお湯NGだろ!
どんどん乾燥が進むじゃねぇか!
 いや、もう見えてきたな。まさかこんなに単純だとは…。
 だけど単純すぎて、不安だ。こんなに治せないなんて事あるか? 
 いっそ鑑定出来たら楽なんだけどなー。


「 (鑑定ーーー何も起きねえ。そりゃそうか。成分じゃなくて人間だし)
あ。使ってるオイルと軟膏を見せてもらえますか?」
「はい、少々お待ち下さい」


 さて、彼女に必要なのは水分保持量が上がる化粧水に皮脂膜の代わりになる重めのクリーム。アラントインやカレンデュラ油が入ってるのが欲しいな。
 流行りのシカとかも良いかも。


「お待たせしました。こちらです」


 オイルが3種類、軟膏が5種類。
 オイルを垂らしてみると、サラッとしたものと重たいものとある。
 酸化もしてないし、悪いオイルじゃなさそうだ。
 軟膏は何が入ってるんだ?


「これは日によって変えてるんですよね」
「いえ、いつもはコレとコレで。他の物は夫やお祖父様が下さったんです。
でも効果がなかったので、1番マシな組み合わせを」


 なるほど。やっぱりオイルは油脂が重めな方が楽になるのか。


「 (成分鑑定) 」


ーーブォン

*ココナッツオイル:抗菌作用、保湿に優れている

*アルガンオイル:抗酸化作用、保湿に優れている

*アーモンドオイル:抗酸化作用、やや保湿に優れている

*羊脂と薬草の軟膏:殺菌作用、保湿に優れている

*猪脂と薬草の軟膏:皮脂に近い油脂で、浸透力が高い

*ミツロウと蜂蜜の軟膏:保湿に優れている

*ミツロウと薬草の軟膏:殺菌作用に優れている

*ミツロウと薬草の軟膏:肌を柔軟性を高める



 羊脂と猪脂を使った事はないが、良いって言うもんな。そこまで獣臭くもないらしいし。
 だけどミツロウの方が馴染みがあって良いな。薬草はハーブだろうか。
 物としては、全部悪くない。
 まあ彼女には、殺菌、抗菌よりも保湿が重要だから効果がなかったのかも知れない。


 とりあえず作ってみるか。


「 (成分生成ーーーええっと、化粧水) 」







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