100万回死なないと封印される勇者は弱すぎる!!

不愉快な日

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1.最弱勇者は出会う①

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 目の前に広がるのは一面青い海。右を見ても左を見ても海しか見えない。

 地平線が見える。崖の上から見えるこの景色にはいつも感動を覚える。

 俺は今、高く聳える崖の上に立っている。早朝なので辺りはまだ少し暗い。下を向けば分かるが、相当高さがある。

 やがて日が昇る。本当に、海から太陽が現れたように見えて感激する。

 「綺麗な景色だな……死ぬか……」

 目を瞑り、海に身を投げる。一つの命がここに儚く散っていくであった。

 こうして、勇者クロス・エンガーデンは死んだのであった。

               2869/1000000

 ―――――

 
 「で、死んで帰ってきたのか」

 場所は変わって、冒険者ギルドの酒屋に移る。俺は今日の自殺の話を、酒場でよく飲む飲み仲間の一人に話していた。

 コイツの名前はゲレンデ。どこぞの冒険者パーティの剣士兼前衛を担当しているらしい。

 「ああ、今日もいい自殺日和だったよ」

 俺は楽しそうにそう答えた。

 「ほらコレ。預かってたニャーファだ」

 ゲレンデは膝の上に置いていたモフモフの使い魔を俺に渡した。

 「ありがとな。ただいまニャーファ」

 「イニャぁ!」

 ニャーファはとろけた声で返事をした。

 ニャーファは俺の使い魔で、横に長い猪のような可愛いい顔の一頭身の魔物で、毛並みとほっぺがとってもモフモフで気持ちいい。特徴的な二本の尻尾は触ると少し嫌がる。

 顔だけで手も足もないので軽く肩にも頭にも乗せれる。軽く頭を撫でると、ニャーファは気持ちよさそうな顔をした。


 ところで、今更ながら疑問に思わないだろうか。なぜ俺は自殺したのに生きているのかと。

 自殺未遂なんかではない。確かに俺は死んだ。と言ってもこれで死んだのは2869回目だけれども。

 「お前って、本当に『呪い』ハズレだよなぁ。それに『付与』も無いし」

 「俺もお前みたいに弱い『呪い』だったらどれだけ良かったか」

 この世界の住人は、生まれつき『呪い』と『付与』を持って生まれてくる。

 『付与』とはいわゆるスキルのことだ。

 魔力回復量が通常の2倍とか、運気が上がるなど多種多様だ。

 俺はこの『付与』を持たずに生まれてきた。観測上、『付与』を持たずに生まれてきたのは世界で俺だけらしい。

 一般的に人は『付与』と一緒に『呪い』を持って生まれる。

 基本的に、~しなければ×××になるといったものだ。

 例えば、寿命までに人に愛されなければ『封印』される、といったものだ。

 『付与』が強いほど、また『呪い』が弱いほどこの世界では生きやすくなる。生まれた瞬間に人生が決まるとまで言われているのも頷ける。

 この世界は剣と魔法が主流の世界だが、それでも名を挙げるには『付与』と『呪い』が大きく絡む。

 「でも、お前の『呪い』って本当に凄いよな。だって、100だもんな」

 そう。俺の『呪い』は、100万回死なないと封印されるという歴史でも稀にみるほどの鬼畜な呪いなのだ。

 この『封印』とは何かというと、この世界の生命には5つの終焉があり、そのうちの一つだ。

 終焉とは、人々が定められた寿命、すなわち天寿に達したときに、この世から旅立つことをいう。

 この世界には、5つの終焉がある。

 『天化』 『地化』 『転生』 『封印』 『死』の5つだ。

 『死』は言うまでもないだろう。身体と精神の両方の機能が失われたら訪れるノーマルな終焉だ。

 『天下』『地下』とはそれぞれ天界と魔界に旅立つことをいう。

 俺たちが住んでいるこの世界の空の上には、天使達が住む『天界』が広がっている。また、地面に下には『魔界』がある。
 
 『天下』とは天界に旅立ち天使に昇格することを指し、善行を積んだ人間の終焉。

 『地化』とは魔界に落とされ悪魔に降格することを言い、悪行を犯した人間の終焉だ。

 次に『転生』 これは、寿命に達する前に何らかの原因で死んでしまった人の魂が導かれて別世界で再び生命として生まれる現象だ。

 最後に『封印』 人々が持って生まれる『呪い』から解放されずに天寿を全うした場合、魂は地上に呪われ、延々と死ぬことのできない『封印状態』になる。

 封印されると、身体は腐らずあらゆる影響を受けなくなる。つまり、実質的な不死身になるのだ。

 だが、うっすらとだが意識がある。寝ている時に少し意識が残っているような状態だ。それが永遠と続く。生きてるけど死んでない状況と例えられることが多い。

 この『封印』は5つの終焉の中でもっとも恐れられている。

 この『封印』は、生きている人間が『封印状態』にある人間の『呪い』を引き継いてそれを解放しなければならない。

 つまり、自分自身ではどうにもならないのだ。

 『封印状態』にある人間が、それを解いてもらって再び地上に舞い降りることは殆どない。もはや、生き地獄と変わらないのだ。

 これらの事から分かる通り、終焉を迎える前に『呪い』から解放されなければ強制的に『封印』のエンドになってしまう。

 「お前はいいよな。楽な『呪い』だったんだろ」

 「ああ、生後2ヶ月で解放されたからな。俺としては『呪い』なんて幻みたいなもんだぜ」

 「羨ましいこった」

 「嬉しいもんだねぇ。肩書きだけとはいえが一人に褒められるとは」

 「ほんと最悪だよ。俺めっちゃ弱いんだぜ」

 断末の十二騎士とは、世界で最も強い12人の戦士のことだ。

 世界で最も優れた剣士  勇者
 世界で最も優れた術者  大魔導士
 天使と悪魔の混血    テンマ

 勇者と大魔導士は5人ずつ。テンマは二人。計12人で構成されている。

 俺はとっても弱い。目の前にいるチンピラ剣士のグランデよりも弱いだろう。

 対して亡くなった俺の父は強かった。世界で5人しかいない勇者でありながら、魔法も大魔導士と同等レベルまで使えた。

 そんな父は3年前に急死した。突如できた12の席の空きを埋めるために息子である俺が勇者の地位を引き継いだのだ。

 ちなみに俺は、断末の十二騎士 第9席 終末のクロスと呼ばれてる。

 「『付与』を持たず生まれ、『呪い』は世界一ハード。で、剣も魔法の才能もない。そんなお前が肩書きだけでも勇者を名乗れるってのは凄えことだよ。弱いけど」

 「一言余計だ」

 「そりゃあ、断末騎士に会えるってのは一生に数えれるくらいしかない凄い事なんだぜ。お前を除けばな」

 断末騎士とは、断末の十二騎士を略した呼び名だ。

 「俺も会った事ねぇから分かんねえよ」

 「おいおい頑張ってくれよ。第9席だろー」

 「揶揄うなよ。……そろそろ仕事行ってくる」

 「また偵察か?」

 ゲレンデは呆れた様子で聞いた。

 「グサフクの森に魔物が出没したらしくてね。その調査だよ」

 「死んでも問題ないってのはこういう時にいいよな。ココは俺が持つから行ってきな」

 「俺、生きて帰ってきたら結婚す……」

 「お前にフラグ意味ないからな」

 立ち上がって放った俺の言葉を遮るようにゲレンデはツッコミを入れた。

 ニャーファは俺の頭の上にジャンプして乗ると、ぐっすりと眠ってしまった。起こすのも可哀想なので、起こさずにそのまま森へと向かった。

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