どうして急に魔王なの?!

ぽぬん

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翌日になってもレイは相変わらず手を繋ぐことはやめなかった。変わらなかった。それを拒まない俺も俺なんだが…嫌じゃないんだ。

「ここから先は、僕の故郷になるよ。」

「へ?」

魔王領だよね。

この発言で俺は今までのレイの行動は嘘だった…やっぱりお前は魔王だったんだと感情が昂ってしまった。

「なんだよ…お前やっぱり…!」

「リロス…?何怒って…っ?!」

繋いでいた手を振り払った。

見ないようにしてた俺も駄目な奴だ。でも、黙ってたレイもレイだ!

「見ないふりしてた俺も悪いよ。でも、なんで魔王のお前が俺と一緒に行動してんだ!」

「リロスと一緒にいたいから?」

「何だよそれ…ぼーっとしてるやつだと思ってたけど自分の立場もぼーっとしてんじゃねぇよ!魔王なら魔王らしくしろよ!」

「僕が魔王らしくしたら、リロスは僕のこと好きになる?」

「そういうことを言ってるんじゃ…わっ?!」

グイッと強く抱き寄せられた。今まで見てきたレイと全く違う顔で…

「リロスは人だから、人らしく一緒に居られるようにしていこうとしたのだけど。魔王としての僕がいいならそうする。」

「そ、そういう意味じゃ…ひぁ?!」

左腕で強く引き寄せられた俺の体に、右手を使って背中を這うように、指を流すレイ。ゾクゾクとするその感覚は俺の意識を惑わしていく。

「魔王らしく、できてる…?」

「ちがっ…魔王はそういう…っ…!」

抵抗できない…あぁぁ…鎧脱がすな!ばかっ!

「真っ赤。かわいい。リロス、やっぱり魔王が好き?」

「ま、待てって!と…とりあえず離して…。」

「ん…どうしよう。そうだ、ここにキスして?そしたら考える。」

「ん…。」

早くこの状況を脱したいがため。
言われるがままレイが指さしたその頬に、軽く触れる程度だがキスをしてやると、急に子供のような笑顔を見せたのだ。

「やっぱりもう少しこのままギューってする。」

「お、おい!話と違う…!」

「考えるとは言ったよ?」

「なっ…お前急に変わりすぎじゃ…。」

腹黒いとか、騙して俺に近づいたとか、そういうんじゃないのはよく伝わった。俺を見つめるその瞳と、感情は偽りのないものだって。

だけどな?俺が言ってる魔王って…そういうことじゃないんだって!

「やっぱり勇者は魔王が好き。だから会いにいくんでしょ?」

「違います!討伐するの!最初に話ししただろ?」

「倒す?僕は倒されるのは嫌だな…。」

「嫌だなって…そうしないと世界がだな…?」

「だって僕はリロスとならこうしてるほうが好き、だよ?」

話を聞かなくなってきた…。

木漏れ日の差す木の根元、俺を抱きかかえたままふわりと浮いたと思ったら、一緒に横になっていた。

「勇者は魔王に倒されました。…どう?」

「どうってお前…これは腕枕だろ。」

「…嫌い?」

「それを聞くのは…あ~もういいっ!」

もう俺に抵抗する力はなく…今しばらくこの状況に甘んじることにすることを選んだ。

「ふふ。やっぱり僕の勝ち、かな?」

とっさに背中を向けたが、耳で真っ赤に染まっている俺の姿を見て、魔王様はご満悦のようだった。
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