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コウサカ

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予約システムの導入…それが今のコウサカくんの仕事。今日も今日とて事務所でパソコンをカタカタ言わせてます。

ネットワーク自体は繋がってるみたいで、管理局から各々の異世界への道は繋がっています。

ただそれをどう使うのか、です。

「…おかしいって思ってたけど、こんなクソみたいな容量や環境じゃ肝心の予約の方のシステム構築なんてできるわけねぇわ…。」

いつもとは違う口の悪いコウサカくん。目つきも悪いし…ってこれはただ徹夜してただけの影響かな?クマすごっ…どんだけ寝てないんでしょう。

「足跡ついてる…カナメ、かね?そういうつもりなら最初から言ってくれりゃいいのにな。そうしたらもっと…」

もっと…?

「もっとわからないような作りにしてウィルスみたいに感染していく形に作ったのによ…そうすりゃもっと楽に潰せるのに。」

こっわ。やはりコウサカくんにもそういう考えが合ったわけですね。

さて、今でこそシステムエンジニアみたいな事をしているコウサカくんですがここに転生する前、えーっと彼も『日本』で生きていて、俗に言うブラック企業で『社畜』してたアラサーの男。過労で自宅で孤独死の後、異世界にて『再生の賢者』として転生。

『再生』とは文字通り色んなものを再生するスキルですね。壊れたものを再生するのはもちろん、ケガや、魔力の回復…これも再生。ただ『蘇生』とは別なので死に得た生物を生き返らせる事はできません。

この異世界で、社畜として疲れたコウサカくんの心を癒やすには充分なスキルで、スローライフを満喫していましたが…ある日、パートナーのスキルによって彼は死んでしまいました。

パートナーのスキルは『消滅』。

そうです!あの『消滅の魔女』こと局長がパートナー!いやな因果ですねぇ。ある意味バランスがいいといえばいいとは思いますけど…同じ異世界からしかも知っている者同士をここへ連れてくるとは。

まぁ単純にこのスキルが欲しかったのでしょうけど。

管理局のほうに転生する時コウサカくんは1つだけお願いをしたんですよね。それは『パートナーとの記憶を無くす』ことです。それは局長にも適用されました。パートナーが誰だったか分からなくなっただけで、物語の結末自体は変わりはしてませんけどね。

消滅させられたのがショックだったのか、それか新たに生を受けるならリセットしたかったのか。それはわかりまけんけど、結局惹かれてしまってるのが…なんとも皮肉な運命でしょう。

皮肉といえば管理局の仕事は『日本』での『社畜』と同じですよね。さも当然かのように徹夜で仕事してますけど体に染み付いたものは異世界で何百年と『再生』を使って寿命を伸ばして生きてきたとしても変わらないんですねぇ…。

「はい、もしもし…局長?はい…えぇ?ウルメに?俺でいいんですか?はぁ…わかりましたけど…。」

事務所の電話がなって慌ててでたら…畳み掛けるように今度はウルメくんに。

局長がいけばいいのにと思うでしょうが局長もお忙しい、みたいですからね?

まぁついでですし、ウルメくんも見てみましょうか。
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