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三日月

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生まれてくる人間の半分が何らかの能力を持って生まれてくる世界にほまれちゃんは生まれました。

簡単に言うと『魔法』みたいなやつですかね?その力の強い一族が国を取仕切り、優劣を付け、統一していました。

何故か…その世界を創り出した神に目をつけられてしまったほまれちゃんはとある力を授かります。

『祈り(願い)』

それって能力なの?みたいな声が聞こえてきそうですがこの能力はとても強力みたいです。

ほまれちゃんはこの世界の1番地位の低い国の王女として生まれ育ち、見た目はもうそりゃキュートで可愛くて!ほっとけないくらい愛しい女の子に成長して。

そしてその能力のせいで、聖女として囃し立てられ、利用され…最終的に、婚約者である1番地位の高い国の王子に騙され、処刑されました。

が…この能力のおかげでほまれちゃんは命を取り止め…というのが正しいのかわかりませんがもう一度やり直しを始めました。

もう一度

もう一度…

何度繰り返したことでしょうか?いずれのやり直しもハッピーエンドにはなりませんでした。ま、たぶんこの辺りは神の指先でちょちょちょーいって改変してたのでしょうけど。

そんなことしてたらですね?

ほまれちゃんはこの世界の神の力を使い果たしちゃって。
『祈り(願い)』の力は神を頼らなければでき得ぬ能力ですからね。

神も馬鹿ですねぇ?面白がって見ていたばかりにその力を取り上げる力すら残さず与えてしまっていたとは。

おそらくここの神はもっともっと私を頼り、信仰してくれてよいのだぞ!もっともっとー!…と、いう具合に調子に乗っていたのでしょう。神としてあるまじき性格ですが、数多いる神の中にはひとりやふたりはいるみたいですよ?

この管理局の神もまたその中の奇異な神のひとりなのですけど…それは置いておいて。

「この世界の神なんて私を…私たちを弄んでいるだけ。なら…私はその神を…」

いや、私も直接見ていたわけではありませんし、聞いた話を要約した内容のセリフですから?本当の祈りはこうだったかはわかりませんよ?

でも、自分の世界の神に失望したほまれちゃんがこの能力を利用して祈り、願うとしたら?

そして祈る神の対象を変えていたとしたら?

更に言うと繰り返しの世界の中で自分の能力を昇華させていたとしたら?

『祈り(願い)』の形を変えていたとしたら?

元々聖女として生きてきた彼女です。今はあの世界でできなかった友達と楽しく過ごす生活をして知的な部分やリーダーシップが薄れていますが…解放されたとしたらどうなるか。

いや…どうなるか?ではないでしょうね。

動き出した今の世界でほまれちゃんのこの力を利用しようとして要るわけですから。

企みの内容をほまれちゃんに伝えないのは恐らくそのためでしょう。

ほまれちゃんはこの管理局に対して何故か信頼を置きまくってます。他人の魂の管理をするなんてやっていることはほまれちゃんの世界の神と何が違うのかわからないですが、『無闇矢鱈に神に弄ばれることがない』という安心感てすかね?

そういう思考に至ったのはきっと、ほまれちゃんもどこかしら壊れているのです。

私はそこがもう、とてもとても愛しくて、とてもとても可愛くて…とてもとても憎くて。

放っておけないんですよ。

「んぁぁ~…ねむぃぃーー!コーヒー!コーヒー!いや!カフェオレ!」

あ、語りすぎてましたかね?ほまれちゃん、モーニングのようです。

報告…したらどうなるか…

私、『祈り(願い)』で消されちゃうかも…?
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