「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

文字の大きさ
2 / 96

聖女の色持ちではないんですがね 2

しおりを挟む



わちゃわちゃしながら、誰も譲り合うこともなく雪崩こむように部屋に入ってきた男の子たちは5人。

黒髪、短髪、金目かな? 背は5人の中で一番低い子。

アッシュグレーの髪が肩までで、同じ金目で、こっちをみて微笑んでいるけど胡散臭いのがいる。

身長は、まあまあ高い方じゃないのかな。

真っ赤な髪で、前髪がパッツンの短髪。この子は目の色は、何色なんだろう。

(海の色みたい)

例えるなら、ネットで見たことがあるラピスラズリみたいな色だ。

深海っていうのかな。身長は、まあまあある方でしょ。この人も。

それと金髪の碧眼。なんだっけ、エメラルドだっけ。それに近い、透明感がある碧。

腰まで髪が伸びてて、紐っぽいもので結われている。

手入れが大変そうだなとか思ったのは内緒。

身長はこの中で一番高いというか、高い。それと、威圧感っぽいのがパない。

お近づきになりたくない。

最後が、茶髪の無造作に適当に切ったような髪。短髪というにはちょっと長いかな。

セミショートって、あったっけ?

目は、あたしの元の色と一緒で黒い。

この中では地味な方なんだろうな。

メガネをかけてて、いかにも委員長とか風紀委員っぽい感じ。

大きくもなく低くもない身長。

この5人の中でいえば、中間?

この人を目安に、高い低いって考えたらいいかも。

なぁんて感じで、いきなり目の前に現れた5人を分類していく。

服装はアッシュグレーの人と黒髪短髪の人が同じ……かな。

白を基調にしたショート丈のジャケットに、下は細身の体にぴっちりしたスラックス。

茶髪の人は、髪色より薄い茶色の長めのジャケット。コートに近い丈かもしれないな。

それに、白いスラックス。

赤髪の人と金髪碧眼の人は、くすんだ感じの赤いジャケットに白いスラックスだ。

赤髪に赤いジャケット。

(……目に優しくない色合いだ)

とか若干失礼なことを考えて、目をしぱしぱさせる。

ベッドのそばにそれなりに大きな男の子が5人。

さすがに5人もいたら、ちょっと怖い。

内心、寄るな寄るなと念じていたら、反射的にか枕の方へと後ずさっていた。

胸にはさっきの本を抱え込んで。

「聖女はお前か」

「聖女ちゃん」

「お前か、召喚されたのは」

「初めてお目にかかる。聖女さま」

「あなたが聖女でよろしかったでしょうか」

せーの! と誰かが言ったかのようなタイミングで、一気に言わないでほしい。

まあ、ほぼ聖女とか言っていたから、多分確認でしょ。

一人チャラいのがいた気がしたけどね。

「すいませんが、一人ずつお願いしたいんですけど?」

と、首をかしげつつ頼んでみる。

あたしがそう言えば、5人がまたわちゃわちゃしながら「お前が」「俺が」と騒ぐだけ。

なかなかまとまらない5人の姿を視界から外すかのように、ベッドの端に腰かけて水を飲む。

そして、喧騒から離れて本棚へと。

もうちょっと薄めのわかりやすそうな本がいいんだけどなとか思いつつ、指先で背表紙をなぞった。

「この国の歴史の本をお探しですか」

背後からかかった声。

振り返ると、騒ぐかたまりから外れて一人がそこに立っていた。

ズウン……と音がしそうな威圧感。

お近づきになりたくないって思った人だ。

一番の高身長なので、その高さにあたしは顔を思いきり上げなきゃいけなくなった。

(ってか、イケボ。少し高めのアルトっぽい声の高さで、語尾がかすれて聞こえた。ちょっと意外な声かも)

はじめての人相手にちょっと失礼なことを考えつつ、こくんとうなずく。

「ここがどこかわからないので、知りたくて。さっき読んだ本は分厚いし重いし、読んでて疲れそうで」

上手く笑えているだろうか、あたし。

コミュ障気味ゆえ、笑って会話することに不慣れなんだもん。

しかも相手が異性だし。

笑顔のまま固まったあたしをジーッと見ていたかと思ったら、不意に大きな手が頭を2回ポンポンとしたかと思いきや。

「だったら、こっちの方がわかりやすい。子供向けにもなっている。……文字は、読めるのか?」

親切にも、手助けをしようとしてくれているみたいだ。

差し出された緑色の表紙の本を受け取って、ページをめくっていく。

時々挿絵もあって、確かに子供向けだなと思った。

「……っと、ここは……エメラ王国。歴史は古く……て、魔法があって。……んっと、今の王様? が15代目で。…………意外と長生きしてるのね、今までの王様。へえ……」

「本当に読めるんだな、文字が」

俯きながら読んでいるので、頭頂部あたりから声がする。

「なんでだかはわからないけど、読めてるみたい。……あ、聖女! 聖女について書かれて」

聖女の欄を見つけたと喜んだあたしは、その後の文章を読んで黙ってしまった。

(聖女を元の世界に戻すことは試みたことがない。聖女は、国の宝で、保護されるべきもので、国を護る者で、そのために召喚されてこの国で最期を迎えるものである。……って、え、ちょっと待って)

試みたことがないって、帰す気がさらっさらなかったってこと?

喚ぶだけ喚んで、用事がすんだらそれで完結にはならないの?

(なんて自分勝手な拉致だ、この召喚システム)

読んでいけば、100年周期で瘴気がこの世界に満ちてしまい、この世が朽ちてしまう。

ある日、王の元へ謎の本が空から落ちてきて、その本に召喚システムについて書かれていたのが始まり。

藁にもすがる思いっていうんだろうか、そういうの。

王城の魔法使いを集めて、召喚のための魔方陣を描き、贄を捧げて召喚をする。

対価を払わずして、国を護れないということか。

贄については、代々王家に連なる女の赤ちゃんを捧げよと書いてあったという。

「……わけわかんない」

想像しただけで気持ち悪くなる。

まだ産まれたばかりで、世の中のいろんなことに触れてもいない間に生け贄にするだなんて。

そんなことのために、命を授かったんじゃないはずなのに。

「ひどい……」

立ち読みしている間に、うるさいのがおさまっていた。

「君は」

イイ声が聞こえて、反射的に顔を上げた。

「聖女、なのだろう?」

どこか不安げに揺れる瞳と、目が合った。

聖女、なんだろうか。

聖女として、喚ばれたんだろうな。

でも、それを証明するものはどこにもない。

首をゆるく左右に振って、違うと伝える。

「だって、あたしは」

聖女じゃないとわかったなら、あたしはどうなるんだろう。

そう思うと怖くなるけれど、嘘つくのはもっと怖い。

嘘をつく時には、その嘘を守るために嘘を重ねなきゃならなくなるまでが1セットになるもの。

だから、あたしはすこしうつむいて右目に指先を触れさせて。

「聖女の色じゃないから」

右目から、カラコンを外して苦笑いを浮かべた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

処理中です...