「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

文字の大きさ
18 / 96

聖女は、誰が為に在る? 3

しおりを挟む



寝かかって、目が開かない状態のあたしを見てきたからか、カルナークに目のことは知られていなかったのに。

「今日はこいつも一緒に学びの時間とする」

いつもの司祭のおじいちゃんはいなくて、誰かの部屋に連れていかれた先にジークとアレックスとカルナークがいた。

カルナークは二人に睨まれながら、ソファーに座っている。顔色が悪い。

「カルナーク、顔色悪いのに一緒にやらせるの?」

アレックスにそう聞けば、「自業自得だから」と顎でカルナークを指す。

「ひな」

最近ジークがあたしを呼ぶ時の言い方だ。

「ん?」

「これに、あれを外して入れて? カルもこっち側に巻き込むことにしたからさ」

と、見慣れた聖水の瓶と器を渡される。

「え……、いいの? 本当に?」

味方が増えるのはいいけど、大丈夫かな。

「不安かもしれないけど、カルは君の見た目をどうこう言わないだろ。多分」

確かにそうかもしれないけれど、でも……。

「はい。鏡も渡すから、カルの向かいに座ってから外して見せてやって」

ジークは考えなしに決めたわけじゃなさそうだ。

話し方がチャラい時はあるとはいえ、この二人はこの一か月の中でいつもあたしを優先しようとしてくれた。

「……それじゃ、信じて…やる、ね?」

カルナークの向かいに座り、器に聖水を先に入れておき。

鏡を見ながら、あたしが指先を目に近づけた時、カルナークが「…ひ、な……っ」と動揺をそのままに声をあげた。

ぺろっと目からはがれて、指先にあるカラコン。

反対も同じように外していく。指先に少しだけ聖水をつけて、指先から滴らせて目に落とす。目薬っぽい。

「陽向……?」

黒目のあたしを、驚きを隠すことない表情で見つめるカルナークがそこにいる。

「あたし、ピンクの目じゃないの。本当は」

沈黙が痛い。緊張する。これ、目をそらしたらダメでしょうかね。

しばし見つめあって、カルナークが胸の中の空気を一気に吐き出す。

「はあ…ーーーー」

って。

「がっかり、した? カルナーク」

両手をすりあわせるようにして、もじもじしながら質問する。聞かずにはいられないや。

「聖女の色じゃないし、さ。ニセモノっぽいし、さ。嫌だよ……ね?」

自分の中の不安を、そのまま言葉にしてしまう。

「ご、ごめんね? びっくりしたよね? あの……あたし…」

自分が悪いことをしたわけでもないのに、重ねてしまう。

言い訳めいたものや謝罪っぽい言葉たちを。

耐えきれなくなって、カルナークから視線を外した。次の瞬間だった。

カルナークが立ち上がり、テーブルを回ってあたしの左横へとしゃがんだ。

「陽向!」

勢いのいいその声に、びくんと体が反応して反射的に目を閉じてしまう。

すり合わせていた両手を包み込むように、カルナークの両手が重ねられて。

「可愛い!!!!!! 好きだ!」

思いもよらない言葉に、目を見張ってカルナークから距離を取ってしまった。

「逃げるな! 可愛いから!」

よくわからない誉め言葉に、どうしていいのかわからなくなって。

「アレックスぅ……」

お兄さん的な空気のあるアレックスに助けを求める。

「あー、うん。はい、はい」

めんどくさそうなのに、どこか声は笑ってて。

「やっぱ、カルには聖女どうこうはさほど浸透していないね」

ジークが、ふわりと笑ってみせる。

「ひな」

「あ、はい!」

穏やかな声で名前を呼ばれて、逆に緊張感が走った。

学校の先生みたいな感じで。

「カルは、巻き込める。だから有効活用しようと思ってね」

と、説明を始めてくれる。

「カルは、俺たちの中で魔力の制御する能力が高い方なんだよ。それを使わせてもらおうかと思ってさ」

魔力の制御力。

こうして話を聞いている間にも、カルナークはあたしの手を握って離そうとしない。

「カルナーク。お前に確かめたいことがあるが、いいか」

アレックスがカルナークに話しかけると、うなずいたままで、なぜかあたしの横に座りだすカルナーク。

そのまま話を聞くつもりなの?

「カル。お前、ひなに自分の魔力混ぜ込んでいるだろ」

ジークがものすごくいい笑顔で、カルナークにそう告げた。

(……これって)

万が一に備えて不問にしてきたことだよね? 今明かすの?

カルナークの体が、まるでギシッと音が鳴ったように揺れて固まる。

ゆっくりとジークを見上げるカルナークは、今にも泣きだしそう。

「好き勝手しやがって。俺のひなに」

ジークがそう言った瞬間、カルナークと声が重なる。

「「えええ???」」

まるっきり同じ声をあげて、互いに目を合わせ、一緒にジークを見上げる。

「いつ! いつ、そんなことになったんだよ! 俺は知らない! そんなこと聞いてない!」

「あ、あたしだって、誰かのモノになった記憶ないもん! いつなったの? 知らないうちになにかしたの?」

カルナークに言い訳をしているようで、なんか変な気分。

「え? ひな、カルのモノだったの?」

ジークが、冷えた声でそう言うので、とっさに包み込まれていた手を離す。

手をブンブン左右に勢いよく振って、違うと伝える。

「まだ、誰のモノにもなってませんっっ!」

大きな声でそう宣言したら、「それじゃあ」とジークがその言葉に続けて。

「俺の、にする。ひなの世界の、早い者勝ちシステムで!」

こんなことにまでも使うの? と思えることを言い出す。

「ダメダメダメダメェエエエ! それは、早い者勝ちシステム使っちゃダメッ!」

混乱したまま、どうにかしてジークの無茶苦茶なそれを止めようとするけど。

「あー……、そう…だよね。俺なんか、ダメだよね。ひなの好みじゃないよね、きっと」

今度は自分を下げたことを言い出すし。

「違う違うっ! ジークはいい人だよ? かっこいいし、イケメンだし、イケボだし。えーとそれから……甘い囁きが得意でしょ? それと……それと……背も高いし、頭も多分いいし、目がきれいで」

好みさておき、ジークにもいいところあるって言いたかっただけなのに。

「そんなに褒めてくれるってことは、俺のこと好きってことでしょ? やっと、俺に落ちてくれた?」

あの日の言葉を繰り返し、嬉しそうに腕を広げてあたしが抱きつくのを待つ格好をする。

「ち、違っ」

首を振り、違うと伝えているのに、横にはあたしの袖を引っ張って泣き出しそうなカルナークがいて。

「ア、アレックス! 助けて」

ぐちゃぐちゃな状態にどうしようもなくなって、助けを求めたのにもかかわらず。

「楽しくやっていけそうで、なによりだ」

誰よりも呑気な言葉で返してくれた。

「アレックスのばかぁっ!」

あたしが泣きそうになりながらそう怒鳴りつけると、ジークがカルナークと反対側に跪いていて。

「こんなに好意を寄せられて、応えないのは男として恥にしかならない。だから、ひなは俺の!」

あたしの右手を取って、手の甲に恭しくキスをした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...