「聖女に丸投げ、いい加減やめません?」というと、それが発動条件でした。※シファルルート

ハル*

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瞳に映りこむモノの存在 8 ♯ルート:Sf

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~ナーヴ視点~


(ガラにもないことするのは、やっぱ慣れねぇな)

一人、先に禁書庫を出ていく俺。

禁書庫にアイツを連れていけという啓示みたいなもんが、俺の夢の中で告げられた。

話の流れからいけば、アイツにはその理由は伝えられていないっぽかった

(ってか、五分五分だったのに、俺の部屋につながるとはな)

禁書庫への行き方は、その代の王族にしか伝えられていないことも、毎回禁書庫の手前の部屋がどこになるのかも秘されていた。

今回の手前の部屋が俺の部屋になったことに関しては、俺が一緒に行く必要性が高ければつながるとしか聞かされていなかった。

最初から一緒に行くことになってるなら、そうだって夢の中で言ってくれてりゃよかったのに。過去の聖女たちが、さ。

もしかしたら俺は呼ばれないかもしれないと思っていた矢先、部屋のドアが開いた。

思わず口からもれた「……なんだかなぁ」って言葉は、そいつらに対しての言葉だ。

(それとも、もしかしたらつながらない可能性もあったのか? その条件はなんだ?)

なんだって疑問に感じるところから、新しい発見がある。疑うことをやめたら、俺じゃない。

過去の聖女らから、夢の中で俺に託されたことがあり、それが今回の禁書庫行きに関係しているんだけど……。

「…はぁ」

一気に体が重くなった気がする。瘴気を吸い込んだわけじゃないのに、どこか胸の奥が重苦しい。

今まで召喚に携わってきた連中がどんな奴らだったのか、現段階では何の情報もない。

というか、過去の召喚の映像みたいなものを夢見という形で見せられてきても、そいつらに関して何か思うところはなかった。

表面上…見えなかっただけで、聖女の立場からすれば心に引っかかるものがあったのかもしれない。

言いたいのに、言い出せない。そんな空気だったのか? と思える。

でも、おかしいよな。どうして、俺が浄化にかかわることがわかって以降、こうした夢見という形でアイツが知らない話が聞かされる事態になっているのか。

今回、俺にだけこうして過去の聖女たちからの願いというよりも祈りに近い念が送られている。

アイツが強く願っていたように、召喚によって浄化するという形式を終わらせることが本格化してきたからなのか?

昔々は当時の王族や有識者によって浄化をどうにかする方法を模索してきて、策が尽きたタイミングを見計らったかのように召喚への導きがあった。

それだけにしか目が行かなくなり、生け贄を捧げるというリスクを冒してもその方法以外を選ばなくなっていた。

まるで、誰かからの誘導のように……。

(そもそもで、そこが不思議なもんだ。一体どこの誰がその導きを何のためにこの国に与えたのか。誰も疑問に感じなかったのか?)

その方法以外はないんですと異世界から来たダレカに縋って、その必死さと自分を必要とされた事実から断れず…というのが多数だった。

中には、選ばれた存在であることを単純に喜んでいた聖女もいたけどな。

それでも、一つの命を代償に自分が召喚されたと知って、手放しで喜んでいたのはいた感じがなかった。

アイツだって、同じだ。

そして、その仕組みと拉致られて丸投げされた願い事と、急激な環境の変化への過度なストレス。

アイツの髪に溜まりに溜まった瘴気っぽいアレは、それが関係していた。

夢の中の聖女たちからの願いには、その負荷を肩代わりもしくは一部肩代わりをしてほしいというものも含まれている。

そのためには、カルナークの手を借りて馴染ませた俺の魔力がどの程度入り込めているかでやれることが違っていた。

それと、アイツの中での俺への信用とかその辺のことが絡んでくる。

いろんな条件が揃っていなきゃ、あの言葉を発しても効果は出なかっただろう。

「……教会側からの邪魔対策も含んでるしな、さっきの」

聖女さまさまと持ち上げて恩恵を得てきた教会側は、召喚せずに浄化をする形式は取りたくないはず。

召喚そのものは、教会の連中が主導で行っていたわけだし。

今のところ静観している感はあるが、あいつらこそ一番欲が深い人種だ。

このまま、大人しく浄化が終わるわけねぇ。

教会側にジークとアレクが釘を刺したらしいけど、それだけですむなんて甘いことは考えない方がよさげだ。

それと、『LINK』を唱えたことで、自分の体にどんな変化が起きたのか。

アイツとは違って、俺はなんとなく理解わかってる。ジークみたいにステータスを見ることが出来なくても、な。

俺もアイツも生かせる…生きてやる…とまるで言い聞かせたように呟き続け、そうしてここまで生きてきた。

生き延びてきた、が正解か?

禁書庫を出ていく俺のステータスを覘いたんだろうな、ジーク。

一瞬しか目を合わせずに出てきたけど、俺よりも泣きそうな顔してやがった。

「おかしな罪悪感なんか感じてなきゃいいけど」

そういいながら、まだ禁書庫から出てこないジークを思う。

ため息をつき、胸の上に手のひらをあてる。

トクントクンと脈が手のひら伝いに感じられ、今はまだ生きてる自分を知る。

アイツにかかる負荷の肩代わりの割合は、信用度合い頼み。

そこまで深くかかわってきてない俺へ、アイツがそこまで信用してくれるのか数値化できないことへの答えの出し方がわからない。

信頼という言葉にしなかったのは、そのせいだ。

俺自身という人間が、とっつきにくい人種だってことくらい自覚している。

ましてや、初回に倒れたアイツに悪態ついた俺だし、その後も極端なくらい距離を置いていたのも俺の方。

シファ経由で、俺と会おうとしていたことを知っている。浄化に関してだけ、なんだろうけどな。

「どうせ俺の価値なんざ、その程度」

自嘲するように窓へ吐きつつ、遠くの景色を眺めていた。

シファからの回復アイテムの飴を口に放って、カラコロと舌先で転がして。

「ほん…っと、俺って…何のために産まれてきたんだろ」

瘴気というモノが生まれる場所に生きて、それを滅する手伝いを求められ、過去の聖女たちにあの子を助けてあげてと願われて。

結構自分勝手だとか言われてきたけど、実際やってることは俺以外にも有用なことの研究ばっか。

「もっと自分本位に生きられたら楽だったのかもな」

口の中の飴がなくなって、妙な寂しさを感じて瓶を手にする。

もうそろそろ飴の補充を頼まなきゃとぼんやり考えていたタイミングで、廊下側からはシファ、禁書庫側からはみんなが部屋に入ってきた。

「ナーヴ、これ」

言わずともわかってくれてる、俺の大事な幼なじみ。

「そこそろ頼むかなと思ってたとこだ」

「やっぱり?」

なんて飴玉が入った瓶のやりとりを、口をポカンとあけてアイツが見てる。

「…なに? 飴、食いたいの?」

三人が禁書庫のドアを出ると、何もなかったかのように空間が閉じていく。

初めてみたけど、不思議な光景だな。

(アレも幻影魔法みたいなもんだから、俺が持つ光属性でも対応可能そうなんだけど、どうなんだろ)

仕組みを教えてくれって言っても、王族でもないから教えてくれるはずもない。

そのうち自力で何かやってみるかと、新しい課題を思い浮かべた。

差し出した手のひらの飴を受け取り、小さな声で「ありがと」と言ったかと思えば真っ赤な顔をして部屋を出ていったアイツ。

「陽向…っ」

その背中をアレクが追いかける。けれど…。

「…なに? ジーク」

目の前でさっきの顔をしたまま、俺を見つめているジークだけは部屋に残っていて。

「――理解わかってて、やったの?」

あえて主語を省き、聞いてきた。

何のことかわかるのに、俺はジークから目をそらさずに本音を語らない。

「さあ?」

口角を上げ、不敵に見えてくれたらいいんだけどねと思いつつ、ジークを見つめる。

俺のそばに立つ幼なじみが、さっき起きたことを知ったらなんて思うんだろうな。

(どうせ、バカとか一方的に叱りつけられてオシマイだろう)

そんな未来を想像して、口元がゆるみそうになる。

「なんにしても、さ。…ジーク」

飴玉の瓶を机に置き、腕を組んで俺より背の高いジークを気持ちだけは見下ろすつもりで偉そうに。

「護るよ、ちゃんと。いろんなの、をさ」

こうしている間にも、どうせ見てるんだろう? ジークは。

「だから、最期まで見守って」

吐き出した言葉の本当の意味を、自分の胸の中だけに留めて。

浄化の時は、もうすぐだしな」

視線を窓の方へと再び向け、未来の自分へ思いを馳せた

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