31 / 60
抱えられるもの、抱えられないこと 2 #ルート:S
しおりを挟む※ここから、ジークムントルートになります。
*****
~ジークムント視点~
「なーにしてくれちゃってんだよ、カルのくせに」
シファルからの報告レポートを読んで、正直イラついた。
予想通りといえば予想通りなんだけどさ、初日からコレかよ! って感情がすぐさま限界を迎えそうになる。
俺にはカルのような魔力の量もコントロールもない。
どっちかっていうと、他のやつらには出来ない根回しとか頭を使うことばっかりだ。
それと、意図せず持っている武器、ルックスの良さと人当たりの良さ。
そっちを利用して、人をつないだり離したり。
感情もコントロールしまくって、本音で話せる相手を探す方が難しいくらい。
俺とアレクは、王位継承者の一位と二位。
時にはその権力を使うこともあるけれど、今回の召喚についてはそっちはほぼ使わずに進める方向性で。
遠い昔に、その権威に目がくらんだ聖女のせいで、国が滅びかけたからだ。
(まあ、今更のように俺たちが何者なのかをひなに伝えたって、あの子はきっとなにも変わらない気がする)
妙な安心感を俺にくれる唯一の女の子、ひな。
大事にしたいと思うのに、相変わらず時々ガキっぽくも意地悪をしてしまう。
どこか懐かしくもあるこの感情に、名前はとっくに付いているんだろう。
自分らの勝手な理由で、元いた世界から喚んでしまった。
したいこともあったみたいなのに、それを叶えさせられなくなった。
ごめんねと俺がいえば、いつものように「へへ」と笑ってごまかして本音を言ってくれない。
今の俺たちが出来ることといえば、ひながこの世界でわずかでもいいから笑って過ごせるようにすること。
それと、喚びつけた理由の浄化についてのサポートをして、ひなにかかるだろう負担から早めに解放してあげること。
これまでの聖女たちが浄化してきてきた方法も呪文も、似ているようですこしずつ違っていると聞く。
浄化の後の聖女についても、それぞれで違っていたという話もどこかから入ってきていた。
あいまいな言い方なのは、その記録を紐解けるのが聖女本人だけだと言われているからだ。
紐解くキッカケも方法も、今はなにも情報がない。
父親=国王からは、その時期がくれば本人に伝わるはずだとしか聞かされていない。
協力者として出せる情報があれば、ひなに知らせてあげたいのにさ。
「に・し・て・も・だ!」
このレポートはどこかの官能小説みたいな部分もあり、そういうことに免疫がないわけじゃないのに、顔が勝手に熱くなってしまう。
カルに魔力を流されて、「……気持ちいい」って、なに? 危ないって!
それでなくても、カルには下着姿まで見られているとかいうんだし。
(でも、その状態で間違いが起きていないって時点で、カルは紳士といえば紳士で。ひなは、カルにそういった感情を持っていない……って思っててよさげなような?)
うーん……と短くうなってから、カルへの訓練についての指示をメモしていく。
禁止事項が地味に増えた気がするけど、ひなのためだからってことにしておこう。
カルも、ひなのためって言っちゃえば、それ以上のことは出来ないはず。
(そもそもで、シファルがそばにいるのに、下手な手出しなんか出来るはずがないしな!)
そういう牽制も含めて、シファルをそばに置いたんだけどね。
メモを手にして部屋を出て、カルの部屋へと向かう。
ノックをしても返事がなくて、「開けるぞ?」と言いながらドアを開けた。
カルが椅子に浅く腰かけたまま、放心したように固まっていた。
「……カル?」
ここだけ時間が止まっているかのような空気に、声をかけずにはいられなかった。
「どうかしたのか?」
肩をつかんで揺すると、やっと気づいたのかゆっくりと俺だと確かめるように視線だけあげてから。
「…………ジッ! …ジークッッ」
意識をこっちに戻してからは、目を大きく見開き、動揺を隠せずにいた。
「どうしたんだよ、真っ白になってたぞ」
顔色がこれまでになく最高に悪かった。悪いのに、最高にってのもおかしな話だけど。
「ひなと訓練したんだろ? 終わったんだよな? 今日の分。何かあったのか?」
シファルが書いていなかったことでも何かあったのかを、一応確認しようと声をかける。
「訓練……ひな……と……。ひな……」
うわ言みたいな呟きを繰り返し、ふ…と止まったと思えば。
「ぎゃあーーーーーっっ。照れる! あれはダメだろ! 反則だ!」
叫び、椅子に腰かけたまま頭を抱える。耳やら首まで真っ赤になりながら。
見てて、イラッとする。
「……なぁんか、ものすっごく楽しそうだねぇ。カル」
最後に名前を読んだ時だけに、威圧をかける。
カルの肩先が一瞬ビクンと揺れて、前傾姿勢のまま固まった。
威圧を解かず、続けて話しかける。
「ねえ、カルナーク」
普段と呼び方も変えて。
「訓練の、最中。ひなと、カルに、一体何が起きたのか。ひなになにかシたのか。カルがシたのか、サレたのか。俺に何一つ隠さずに、ちゃあん……と! 説明、出来るよね?」
言葉をわざとらしく短く切って、聞き漏らせないように、確かめるように告げた。
「これは、命令だから」
立場も年齢も上の俺からの命令に逆らえるはずもなく。
「おこ……怒らないって…その……約束を……」
視線を忙しなく動かして、懇願に近いことを呟いて。
「ああ、わかった。(なるべく)怒らない(つもり)」
目を細めて微笑む俺との約束を信じて、カルが話しはじめる。
聞くんじゃなかったとこっちが後悔するなんて思わず、「うんうん、それで?」なんて相槌を打っていたのはわずかな時間。
感情を表に出さないようにして、最後まで話を聞くという苦行にも近い……短いようで長い時間が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!
幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23 女性向けホットランキング1位
2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位 ありがとうございます。
「うわ~ 私を捨てないでー!」
声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・
でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので
「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」
くらいにしか聞こえていないのね?
と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~
誰か拾って~
私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。
将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。
塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。
私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・
↑ここ冒頭
けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・
そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。
「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。
だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。
この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。
果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか?
さあ! 物語が始まります。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる