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第二章 表と裏
勢い余って唇に
「春都。こっちです」
周りの子たちに手を振っていると、不意に名前を呼ばれた。
顔だけ声のした方に向ければ、そこには俺以外の生徒会メンバーが。
「あ、待たせちゃった感じ?ごめんねー」
顔の前で両手を合わせてそういえば、「今来たところですよ」と微笑んだ。
その時、ふと視線を感じる。
辺りを見回すと、視界の端で、こちらに向かって腕が千切れるのではないかと心配になるぐらい、大きく手を振っている人物を発見した。
真っ黒でモジャモジャしたウィッグと、伊達眼鏡をつけたマリモ…ではなく野山。
「春都先ぱぁぁぁぁーーーーーい!!!」
気付いてもらえた事が嬉しかったのか、周りに負けないぐらい大きな声で俺の名を呼ぶ。
あの子、バカなの?
今の自分の容姿を忘れているのかもしれないが、お前は今、マリモだ。
百万歩譲ったとしてもマリモだ。
そんな容姿で、しかも大きな声で俺の名を呼べば、その後どうなるかなんて想像がつくだろうが。
「なにあいつ。鵤様に馴れ馴れしい!」
「マリモのくせに生意気ー!」
俺の親衛隊ではない子たちが、口々にそう文句を漏らす。
会長や副会長の親衛隊だからといって、その人だけが好きなわけではないのだ。
生徒会や風紀委員という大きなくくりの中で、この人が一番好き!というだけ。
「マリモにも好かれる春都様……ステキ」
俺の親衛隊の子たちは平和だ。
マリモの悪口も言わなければ、ベタベタと必要以上にくっついてくる事もない。
「あれが転入生ですか?」
俺の視線を追ってマリモを捉えたのか、あおちゃんは俺の側にやってきて、耳元でそう呟く。
息がかかり、背筋に電流が走ったような感覚に陥る。
くすぐったいからやめて欲しいと伝えてはいるのだが、癖になってしまっているのか、治る気配が無い。
諦めて慣れるしかないとわかってはいるが、慣れることができずにいる。
「そっ。あれが転校生の野山 正人くんだよーん」
俺がそう呟いたのとほぼ同時に蓮夜が歩き出した。
どこにって?
そんなの決まってる。
マリモのとこだよ。
なんだか、全て俺の予想した通りになりそうな気がする。
蓮夜なんてあいつを見ながら怪しく笑ってるし、あおちゃんと麗もワクワクしてる感じだ。
政宗は……よくわからない。
いつもと同じ。
無表情で、つまらなそうな顔。
「つまんねーやつ」
「なんかいったか?春都」
「んー?なーんもいってねーよー?」
政宗は“ポーカーフェイス”というやつで、感情の起伏がわかりにくい。
背も高いこともあり、威圧的だと感じる者も多い。
しかし、全国大会優勝という肩書きと、その堂々とした#佇_たたず__#まいから、文化部にファンが多い。
かと言って、運動部から好かれていないわけではない。
どちらかというと、恋愛対象というのり、憧れの存在という感じだ。
「あ」
どの層に好かれているのかを真剣に考えていると、横にいた政宗が驚きの声を発した。
表情は全く変わっていないが、口をポカンとだらしなく開けている。
そしてそれに呼応するかのように、周りの音が一切なくなった。
聞こえるのは厭らしい“クチュックチュッ”という、水気を含んだ物体が絡み合う音。
嫌な予感がした。
そういう状況になるのは、もう少し先だろうと油断していた。
視線を辿った先に見えた光景は、夢と思いたくなるようなもので、これから起こるであろう事を想像して頭が痛い。
「っ、はっ、やめ…っ!」
“ディープキス”
そう呼ばれる行為を、二人はしていたのだ。
小さな体をキツく抱きしめ、上から噛み付くように食らいついている。
時には優しいキス。
時には押さえつけるようなキス。
時には舌を使って、公衆の面前で口内を犯していく。
嫌がってはいるものの、体格の差があり過ぎるのか、抵抗しきれていない。
しかし、さすがに苦しくなってきたのか、「やっ、めろ!!」と蓮夜の鳩尾に右ストレートを決め、自力で脱出した。
鳩尾を殴られたというのに、蓮夜はなぜか笑っていて、“あぁ。気に入ったな”と心の中でため息交じりに呟く。
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