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第一章 転校生
転校生の正体
「相変わらずモテるねぇー」
肩が急に重くなったと感じたのも束の間。
下から聞き覚えのある声がした。
「お前も似たようなもんだろー」
「春都ほどじゃないよー?僕、そんなに頻繁に相手しないもん」
「悪かったなー。頻繁に相手しててー」
そっぽを向きながら、嫌味っぽく言う。
「怒らないでよー!」
すると、ワイシャツを乱暴に引っ張られた。
別に怒ってはいないんだが……まぁいいか。
「あ、今日蓮夜がみんなに話しあるってぇー」
「それってもしかして、今月の中旬に来る予定の転校生についてだったりする?」
「ピンポンピンポーン!さっすが春都ぉー」
実は、エスカレーター式のこの学校に転校生がやって来るのだ。
外部入学はかなり稀で、俺も当時かなり騒がれた。
学校新聞に取り上げられているのを見て、入学早々驚いたのは、まだ記憶に新しい出来事だ。
「だってモジャ毛にピン底メガネとか今時あり得なくない?写真でも変装してるってわかるもん」
俺の時とは違い、今回の転校生は特に騒がれていない。
原因はおそらく、容姿のせいだろう。
くせ毛なのかパーマなのかはわからないが、長い黒髪が複雑に絡み合っていてとても不自然な髪型に、レンズの厚いメガネ。
不自然過ぎるその容姿に生徒会のメンバーが興味を持ったのだ。
ま、俺は違うけどね。
こんなモジャ毛、興味ないし。
「カツラとメガネ取ったら実は綺麗でしたー。とかだったら最高じゃーん!てなわけだから、放課後までに調べといて?転校生のこと」
「はいよーん。ま、出てくるかわかんないけどねー」
適当にそう返事し、太一の時と同じように手を振った。
転校生の正体……か。
ここだけの話、実はもう既に判明している。
知らないフリをしているのは、彼らに全てを話せば、気を取られて仕事しないということが目に見えているからだ。
自分がいかに楽に過ごせるか。
俺にとって一番大事なのは、そこ。
転校生が来る前から他のメンバーの仕事を手伝わされるのは、御免である。
「しっかし、まさか転校生がねー……」
小さく吐き出した言葉は、誰もいない静かな廊下へと零れ落ち、消えていく。
「あーあーあー…」
ただでさえ、生徒会は仕事が多くて困っているというのに、追い討ちをかけるようにして厄介なのがやってくるのか。
勘弁してくれよ、と本人に向かって言いたい。
頼むから大人しくしていてくれ、と。
俺はかなり気が長い方だ。
単純作業や、周りの人が面倒だと思う仕事をやるのが苦ではない。
寧ろ好き。
だってさ、やり甲斐あるだろ。
簡単に上手くいかない場面や仕事に直面した時、絶対どうにかしてやる!ってなるし。
そのせいか、面倒事に気付かぬ間に首を突っ込んでいたり、巻き込まれている事が多い。
その度に“何やってるんだろう……”と思いながらも、必死に状況を改善すべく、動くのだ。
弱音を吐くことなく、さっさと働きありのように。
だから滅多にこういうこと言わないのだが、今回ばかりは言わせて欲しい。
「…めんど」
さすがの俺も、そう思わずにはいられない。
噂によると、転校生は理事長の親戚で、理事長自らこの学校に来ないかと誘ったらしい。
そして、理事長の話を聞くかぎり、彼が転校生を溺愛しているのは明らかだ。
何か事件を起こしても、転校生の味方をするかもしれない。
良いことなど何もないじゃないか。
寧ろ悪影響しかない。
まぁ、今述べたのはあくまで可能性の話であって、実際どうなるかはまだわからないんだけどね。
「あ、理事長室……」
理事長に呼ばれていたことを忘れていた俺は、行き先を教室から理事長室へと変更する。
呼ばれた理由はおそらく書類の件だろう。
蓮夜たちのやつ、転校生のことを調べるのに夢中で、一昨日までに提出しなければならない書類をまだ出していないらしい。
転校してくるまであと二週間あるというのに、既に影響は出始めていた。
今後の事を考えると胃が痛い。
しかし、今足掻いたところでどうにかなるものでもない。
正式な手続きを終えた以上、転校生は問答無用でやってくるのだから。
来月、俺は無事に生きていられるのか。
それだけが気がかりである。
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