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第二章 表と裏
ワニワニさん
「なんか、新しい書類渡された」
額に少し汗をかいた背の高い男が、分厚い白い紙を抱えて中に入ってきた。
「うっそー!もう先生たち僕らに頼り過ぎ!風紀委員に回せばいいのにぃー」
「全くですね。我々は転校生と戯れたいというのに」
文句を言うあおちゃんと麗。
「これは葵。こっちは麗香にだな。頑張れ」
書類に貼られた付箋を見ながら、二人に書類を配っていくこの背が異常に高い男は、生徒会会計の西条 政宗。
身長195cm、剣道部の部長であり、四年連続全国大会優勝という偉業を成し遂げた男。
剣道界で知らぬ者はいない。
「春都」
政宗を観察していると、不意に声をかけられた。
「なーに?」
それに俺は笑顔で答える。
政宗は表情を変えることなく話を続けた。
「これ、風紀委員から。一ヶ月以内にデータを整理してほしいってさ」
そして渡されたのは、政宗のゴツゴツとした男らしい手に似つかわしくない、ワニの形をした可愛らしいピンク色のUSBメモリー。
「うぇー!またかよー!あいつらいくら苦手だからって押し付けてくんなよなー!」
「お前の方が速いからって。代わりに一個違う仕事貰うってよ」
「お!さっすがー!とびっきり面倒な仕事を押し付けてやろーっと!」
ニヒヒ、と気持ちの悪い笑みを貼り付け、鼻歌を歌いながらUSBを受け取った。
自分の引き出しをいくつもあけ、どれが面倒な仕事かなー?と、書類をペラペラと捲りながら確認をする。
風紀委員は生徒会と同じように五人で構成されており、役割が異なる。
生徒会と同様に先生方から仕事を押し付けられているわけだが、どういった内容の仕事をしているかなどまでは把握できていない。
一つ言えることは、どちらも仕事量が多いということだ。
生徒が中心となって学校生活を送ってほしいという方針らしいが、ただ職員が楽をしたいだけなのではないかと疑っている。
用が済んだ政宗は、自分のデスクで書類整理や電卓を使って計算を始め、喋る者はいなくなった。
仕事を早く終わらせて転校生と戯れたいという気持ちからか、書類やパソコンを見つめる目は真剣だ。
一時間程沈黙が続いた頃だったと思う。
ーーーブーッブーッ。
生徒会室にバイブ音が響いた。
「あ、俺だ」
みんなに「わりー」と謝ってから腰を浮かせ、スラックスの後ろポケットからスマホを取り出す。
ホームボタンを一度押せば、
“メッセージ。佐山 太一”
という文字が表情されていた。
ロックを解除し、内容を確認する。
“何時頃、お戻りになられますか?”
「ぷっ」
メッセージを開いた瞬間俺は吹き出した。
堪えようとしたのだが、衝撃的すぎて無理だった。
「どうした?」
「いや、なんでもない」
不思議そうにこちらを見る政宗。
「大丈夫大丈夫」
首を振りながら言ってはみたものの、笑いは一向に収まる気配はない。
政宗は「そうか。ならいいが」と言って再び作業を再開する。
太一とは頻繁にメールのやり取りはするし、今送られてきた内容も珍しくはない。
ーーー……春都様。今日の夜なんですが、その……既に予定は入っていますか?
朝食を食べている時、恥ずかしそうに聞いてきた姿が脳裏に浮かぶ。
そして、車を降りた後に真っ赤な顔でされた再確認も。
今頃、部屋で俺の帰りを楽しみに待っているのだろうか。
風呂に入って、色々と準備をして。
「よーし。キリ良いし、一旦戻るわ」
「おっけー!終わったら連絡するねー」
「さんきゅー」
麗の言葉にお礼をいいながら、俺は生徒会室を後にしたのだった。
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