15 / 103
第二章 表と裏
麗からの電話
眠りについて二時間程経ってからだろうか。
「春都様。春都様!」
体を左右に揺らされた。
「あ?」
普段では考えられないような低音。
そして、眉間に皺を寄せ、体を揺すっているであろう人物を睨む。
その人物は、俺が寝起きが悪いことを知っているからか、怯む事なく何度も揺すってきた。
あまりにもしつこいので、不機嫌な顔を隠さず起き上がる。
「なに?眠い」
「佐野様からお電話です」
「佐野?あぁ、麗か」
差し出されたスマホを受け取り、わざわざ持ってきてくれた人物……太一の頭を優しく撫でる。
噛み締めるように微笑む表情を見て、もう一度抱きたいという感情が湧き上がってきた。
電話に出なければならない。
今すぐに押し倒したい。
二つの相反する思考が巡りに巡り、夕飯を一緒に食べる約束を思い出した俺は、仕方なく電話に出ることにした。
「はいはーい。書類終ったの?」
太一と“行為”に及ぶ前と同じように、間延びした喋り方。
そんな俺を見て、太一は悲しそうな顔をする。
しかし、これは強制されてやっているわけではない。
柔らかいイメージを持たせた方が話かけやすいだろうと、自ら進んでやっていること。
なぜ、お前が傷付いた顔をする。
なぜ、慰めるように手を握る。
太一の考えていることが、よくわからない。
『あ、うん!今終って片付けてる最中だよぉー。だからあと30分後に食堂で待ち合わせね!』
「はいよーん」
俺の返事を最後に電話は切れ、「ふぅ」とため息をつく。
「ミルクティーいれますね」
そう言って俺の部屋を出て行く太一。
よく見ると、先程俺が脱がせたスウェットに身を包んでいた。
起きたばかりで重い体にムチを打ち、俺も部屋を出る。
「30分後に麗たちと食堂で待ち合わせした」
「食堂で夕食をとるのは久々ですね。では15分後にここを出ましょう。食堂までお送りします」
部屋に戻ってきたばかりの時と同じようにソファーに腰掛け、太一が入れたミルクティーを飲む。
制服をきたまま寝たせいか、Yシャツに若干シワができているが、食事をするだけだからと、着替えなかった。
「他のやつら、転校生に興味心身でよ。転校生見に食堂行くんだとさ。興味ねえっての」
「そう言いつつも、結局は行くのでしょう?春都様は友達思いな方ですから」
俺の隣に座り、綺麗な笑みを浮かべて寄りかかってくる太一。
“友達思い”
その言葉に、どこかむず痒さを感じた。
「そんなんじゃねぇ」
照れ隠しとも取れるような言い方で返し、ミルクティーが入ったティーカップに再び口をつける。
そんな俺を見て、太一はクスッと笑う。
まるで恋人同士のような甘い雰囲気。
だが、俺と太一は付き合ってはいない。
体の関係はあるものの、そういった関係ではないのだ。
太一から好意を伝えられたわけでもないし、俺から何かを言ったわけでもない。
気付いたら体を交えていて、互いの欲を満たすように求め合っていた。
今日のように。
あなたにおすすめの小説
お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!「………私は男なのだが」
ミクリ21
BL
エリアスの初恋は、森で遊んでくれる美人のお姉ちゃん。エリアスは、美人のお姉ちゃんに約束をした。
「お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!」
しかし、お姉ちゃんは………実はお兄ちゃんだということを、学園入学と同時に知ってしまった。
同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが
カシナシ
BL
聞いてくれ。
騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。
最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。
とうとう直接指摘することにしたけど……?
距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け
短編ラブコメです。ふわふわにライトです。
頭空っぽにしてお楽しみください。
親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール
雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け
《あらすじ》
4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。
そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。
平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。
双子のイケメン執事達と恋愛しています
すいかちゃん
BL
母親の再婚により、平野家の息子となった勇人。超お金持ちの家では、驚く事ばかり。そんな勇人は、双子のイケメン執事に気に入られてしまう。やがて双子の気持ちを知った勇人は、驚きながらもその気持ちを受け入れる事を決める。
回を重ねるごとに、勇人と双子の関係が濃厚になっていきます。
長編ですが、1話1話は短めです。
第5話で一旦完結となります。