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第二章 表と裏
王道ストーリー
俺の知り合いに少し腐った奴がいるんだが、そいつがいつだか言っていた気がする。
ーーー……会長が転校生にキスをして、転校生が嫌がって会長を殴っちゃうの!そしたら会長は拒否された事ないから気に入っちゃって、転校生にのめり込んでいくの!それが基本!王道ってやつなの!キャーーーッ!!
と。
その時は意味がよく理解できなかったが、今ならわかる。
これが王道、というやつか。
「お前、俺のもんになれ」
熱のこもった目で見つめ、そう言い放つ蓮夜。
あおちゃんには頭が上がらず、ヘタレな蓮夜だが、それ以外の人物には基本的に俺様だ。
上から目線で、自己中心的で、全て自分の思い通りになると思っている。
特に俺に対しては酷い。
ランキングで俺に抜かれたのが悔しいのか、それとも他に理由があるのかはわからないが、かなり当たりが強い。
嫌味を言ってきたり、事あるごとに雑用を押し付けようするし、常に俺の存在を気にしている。
執拗に絡んでくるが、俺はあんたの事、眼中にないんだけどなー。
俺がこうしてボヤーッと考え事をしている間にも、時間は流れていく。
知り合いが言う“王道ストーリー”とやらが着々と進んでいる。
「蓮夜。正人は俺のものですよ?」
「えぇーー。僕のだよぉー?」
蓮夜に続き、あおちゃんと麗をも虜にしていく。
それを周りも気付いたのだろう。
マリモに対する罵声が、先ほどよりも強くなった。
「うるさい」
あまりの煩さに政宗の眉間にシワが寄る。
騒がしいのが嫌いな政宗は静斎を好む。
静かで時計の音だけが響き渡っている。
そんな空間が、こいつは好きらしい。
……図書館以外にそんな場所無いと思うが、あまり突っ込まないでおこうと思う。
「は、春都先輩!助けてくださいよぉーー!」
三人のラブアピールに耐えきれなくなったのか、俺の方に駆け寄ってきて、胸にダイブしてくる。
160cmあるかどうか、という女子のような身長であるマリモの行動に、三人はメロメロ。
目がハートになっている。
初めて見たよ。
人の目があんな風になるところ。
にしても、こんなマリモのどこが気に入ったんだか。
ウィッグとったら可愛いのかもしれないが、そこまでのめり込む程のやつではないと思う。
「よしよーし。いい子だねー」
仕方なく頭を撫でていると、鋭い視線が俺に集中した。
もちろん三人の視線である。
どうやら、一年半も共に仕事した俺よりも、今日出会ったばかりのこいつが大事……という事らしい。
恋の力は絶大だ。
馬鹿らしい。
「春都先輩…あの、」
「んー?どしたー?」
「と、と、隣の方はど、どなたですか?」
マリモはそんな三人などお構いなし。
何やら緊張した面持ちで、俺の隣にいる政宗を見ている。
若干頬が赤いのが気になるが、特に気にせず「西条 政宗。二年。生徒会会計だよー」と話す気のない政宗の代わりに言う。
政宗は「よろしく」と小さく挨拶をして頭を軽く下げた。
二人の視線があったかと思えば、マリモは更に頬を赤く染める。
「もしかして政宗に惚れちゃったー?」
マリモにしか聞こえない声でからかうように耳打ちすれば、耳までもが赤に染まる。
口では「えっ、いや、その!」とか言っているが、体は正直だ。
ノーマルかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
しかし、政宗に恋心を抱くなんてな。
かっこいいし、優しいし、スポーツ万能、成績優秀。
ポーカーフェイスではあるものの、それ以外は完璧だから、無理もないか。
……それにしても、こいつは恋をするのか?
ごく稀に、親衛隊の相手をしているとあう話は聞いたことがあるが、恋人だとか、好きな人だとか、浮いた話は一切無い。
そういうわけだから、頑張れよマリモ。
密かにエールを送り、いつの間にか顔全体が真っ赤になっているマリモを見下ろす。
恥ずかしいのか、顔を隠すようにして、俺にガッチリと抱きついている。
「ちょっとなにあれ!ムカつく」
「離れろよ!ブサイクのくせにー!」
罵声が更に酷くなる。
「おい春都。正人を離せ」
「そうですよー春都。正人、おいで?」
「まーくんこっちー!」
そんな罵声に気付かず、正人を俺から引き剥がそうと必死な三人。
どこからどう見てもこいつが俺に抱きついているわけなのだが、“恋は盲目”という言葉を思い出し、本当にその通りだと肩を落とすのだった。
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