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第三章 狂い始め
ヤんの?ヤんないの?
手元にスマホが無い為、生徒会室に設置してある時計をマリモ越しに見る。
戻ってくるのが普段より一時間も早かった。
「あれれ。政宗、早くなーい?」
「顧問が結婚記念日らしくて、早く帰る為に無理矢理凝縮された」
「あちゃー。それはご愁傷様ー」
入り口付近で立ち止まっていた政宗はようやく歩き出し、自分の机に鞄を置いた。
マリモはまだ、俺の上に乗っかったままだ。
「で、それはどういう状況?」
「野山に押し倒されてる状況かなー」
マリモの真似をして返せば、目を細め、頭から足先まで何往復も視線を動かし、「だよな」とため息をついた。
「ヤんの?お前ら。ヤるなら出るけど」
「ヤんなーい」
「だってよ。野山、春都から退いてやれ。蓮夜達もそろそろ帰ってくるしな」
「え、あ、うん」
強行するだけの勇気はないのか、人前で淫らに乱れるのが嫌なのか。
絡めていたネクタイを解き、俺の上から素直に退いた。
俺が起き上がり、自分の机まで行くのをぼーっと見つめてから、サイドテーブルに置いたピン底メガネをかける。
「全クラス分集めてきた。ぱっと見、実行委員は上手くばらけてると思う。運いいな。今回」
「まーじでー?手間省けてラッキーだな。あ、でも障害物んとこは少し足んねーかもなー」
「そこだけ先生達にお願いしとくか」
「だなー」
ピン底メガネをかけ、王道のオタクに戻ったマリモは、俺をソファーに呼ぶ前同様、体育座りをしていた。
“あとちょっとだったのにな”と、口が動いた気がした。
読唇術を極めているわけではないので、確実性はないけれど、拗ねたように頰を膨らませていることからして、強ち間違ってはいないと思う。
唇は近かったけど、あとちょっとじゃなかったけどな。
女が男に押し倒されているわけでもないし、体格的にも俺の方が優位だし。
本気で抵抗すればマリモなんか簡単に突き飛ばせるわけですよ。
口で言って退いてくれるのが一番だから、ギリギリまであの体勢だっただけで。
「あ、一応担任に聞いてくれたー?」
「聞いた。ちゃんと空けてくれてるってよ。二回も聞いたからか、“俺って信用ない?”って悲しそうな顔してたぞ」
「そういうわけじゃないよー。念のためってやつじゃーん。可愛いなー相変わらず」
「お前好きだよな。俺の担任」
「だって可愛いくなーい?小動物っぽくて」
「まぁな」
俺と政宗がそんか会話をしている中、マリモは一言も声を発することなく、体育座りをし続けていた。
蓮夜達が戻ってくる間、ずっと。
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