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第三章 狂い始め
電話の相手は頭がおかしい
『ちょっと春都!二週間も連絡ないってどういうこと!?』
第一声はそれだった。
やはりか、と再びため息をつく。
「うるせぇ。忙しいんだよお前と違って」
『あ、やっぱり転校生が生徒会メンバーメロメロにしちゃってる感じ!?ちゃんと報告しなさいよ!何のために学校行ってんのよ!』
「勉強する為に決まってんだろカス」
『はぁ?そんな美味しい状況なのに呑気に勉強なんかしてんじゃないわよカス』
ガルルルルル、と互いに威嚇し合う。
髪を拭く手を休めて、「まぁまぁ」と肩を叩く太一。
そんな事をされても簡単に落ち着けるわけもなく。
『そもそも、エスカレーター式の男子校、生徒会、転校生。全てが揃っている環境にいるのに、腐女子である私に連絡をよこさないなんて……まじ死ねよ』
「急に声のトーン変えんなブス」
『ブスって言う方がブスなんですーって言いたいところだけど、春都はブスじゃなくてどっちかというとイケメンだもんねー。しかも色気ムンムンのチャラ男と見せかけて、毒舌ドSに色気を無料でトッピングした感じだもんねー。あーもうどうしよう。濡れた』
「ローターでもぶち込んどけ」
『女の子にそんな事言うなんて酷い』
「黙れ」
電話越しにまだギャーギャー騒いでいる。
十割下ネタ。
つまり、全てが下ネタ。
呆れながらも電話を切らないのは、相手が幼馴染だからで、決して腐女子トークが大好きだからというわけではない。
こういう環境にいるからか、嫌いでもないけれど。
『で?どうなのよ。最近の転校生君は』
落ち着きを取り戻したのか、ようやく本題に入った。
もう気づいている人もいるだろうが、彼女が時々話題に上がる、男同士のあれこれが大大大大大好きな腐女子の友人……さくらである。
「あ、それなんだけどさ」
『なに!?進展あったの!?』
俺が話そうとすると、“フーッ。フーッ”と鼻息を荒げ、食い気味で喋ってくる。
ごめん。
全然落ち着いてなかった。
気のせいでした。
寧ろこの手の話をしているのに、こいつが冷静でいられるわけがないよな。
自分で自分を言い聞かせ、レディーであるはずの電話相手……さくらの鼻息に特に触れることなく話を進める。
「転校生が生徒会メンバーを虜にして、総受けパラダイスっていうのが王道ってやつだよな?」
『そーよ!よく覚えてるじゃない。総受けってワードがあんたから聞けるなんて……教え込んだ甲斐があったわ』
満足気に笑うさくら。
好きで教え込まれたわけではないのだが、まぁいいか。
「その中でも生徒会長とくっつくんだよな?転校生は」
『生徒会長とくっつくのが王道中の王道だけど、さっきも言ったように主人公……つまり転校生は総受けなの。同性愛に目覚めて淫乱になり、全員とにゃんにゃんしちゃうっていうのも十分ありえるわね』
「転校生が攻めってのは?」
『あんまり見かけたことないわねー。だいたい総受けだもの。読者がそれを望んでいる部分もあるし。女の子はみんな変態なの。純粋なものもそそられるけど、やっぱり激しくパコられて、“らめぇー!”って喘いでる主人公に萌えるのよ。イケメン集団にズッコンバッコンされてイき狂う主人公……なんて素敵なの!春都もそう思うでしょ!?』
「同意を求めるな」
『何よ!つれないわね!』
プンプンという効果音が当てはまる声色に、思わず冷静に返す俺。
BLトークになると、どこで息継ぎをしているのか不思議なほど早口で喋る。
最初は聞き取れなかったが、慣れだろうな。
今では嫌でも耳に入ってくるし、知識を無理矢理与えてくるものだから、内容さえも理解できてしまう。
ということは、俺も立派な腐男子というやつなのだろうか。
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