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第三章 狂い始め
色々あるんだよ
「つーか、こういう事にならない為に、あいつら三人は親衛隊の奴らと話し合いしたんじゃねーのかよ」
見ているこちらが胃もたれしそうな量の料理を平らげた隼人は、タイムを計り損ねたお詫びに俺が買ったプリンのビニールを剥がしていた。
「そういえばそんな事してたね」
「話し合いっていうより、三人が言いたいことを言っただけで、かなり一方的なものだったらしいぞ」
隼人の言葉に続いて類と潤が口を開く。
「そうなんです。転校生に対してどう思っているかなど、親衛隊の意見を聞くことなく、ただ一方的にお話をして終わったようで……。それ以降、更に酷くなっていますね」
「裏目に出たわけかー」
「恐らく」
自身のことでも、ましてや自分が被害にあったわけでもないのに、伏し目がちに言ういっちゃん。
人の痛みがわかるいい子だ。
そう改めて感じた。
「過ぎたことを今更言っても仕方ないよねー。あの三人の親衛隊がやらかしてるわけだし、本人達がどうにかしなきゃいけない事だから、とりあえず様子見かなー」
そう言いながら、隼人が口に運ぼうとしているスプーンを、腰を浮かしてパクリと咥える。
「あぁーー!!!俺のプリン!!!」
「うるひゃいな。っん、俺の金で買ったんだから、一口ぐらいいいだろー」
横取りしたプリンを飲み込んでから口開き、無いのをアピールする。
「汚ない」と類に口元を隠されたが、隼人はプルプルと震えながらこちらを睨んでいる。
はっはっは。
大好物のプリンを食われた気分はどうだ?
と、悪役が口にしそうなことを思い浮かべながら見つめ返すが、「チッ」と舌打ちするだけで特に何も言ってこなかった。
「では春都様。僕達はこれで失礼します」
「隊長達にも先程のこと伝えておきますね。何かあったらすぐにご連絡します!」
「ほいほーい!よろしくねーん」
俺達のやり取りを微笑ましそうな顔で見た後、二人はお辞儀をして去っていった。
小さく手を振ってそれを見送る。
「ていうか、春都ってどこか冷めてるよねー」
両肘をテーブルについて座る俺に、食事を終えた類は両手で抱き付き、肩に顎を乗せて言った。
スプーンを咥えて頷く隼人。
オレンジジュースを片手にスマホゲームを始めた潤も、「確かにー」と同意した。
「えー。俺は優しいよー?バ◯ァリンには負けるけど」
「優しいんだろうけど、なんか言葉の節々が冷めてるっていうか。高橋 莉緒のことも解決しようと思えばできるのに、自分から動きはしないじゃん?そういうとこー」
「うわー。それ言われると否定できなーい」
「面倒事が嫌いなくせに、気付かない内に巻き込まれたり首突っ込んでたり。内心うんざりしながらも、何だかんだどうにかしてあげちゃう」
ため息をつく。
そして呆れたように言った。
「冷めてるくせに変に面倒見よくて、優しいのかそうじゃないのか、よくわかんなくなるよ。俺は」
核心を突いている類の言葉に、思わず声を出して笑った。
普通、思っていても口にしないものだ。
そういう事は。
あえて言っているのか、無意識なのか。
「ミステリアスってことにしといてよ。るーいちゃん」
「ちゃん付けしないで。まぁ、俺達はそういうのもひっくるめて好きだから、安心してよ。春都」
体だけでなく、俺の心まで抱きしめようとしているのか、類の力は思いの外強かった。
でも苦しくないのはなぜだろう。
心が温かいのはなぜだろう。
ーーー……ハル。あのさ、俺……他に好きな人できた。
傷付くぐらいなら、深入りするのはやめよう。
仮面を付け始めたのは、あの時からだったか。
突然の変化に太一は驚いてたっけ。
今では目にする度に、俺の代わりに辛そうな顔をするようになったけれど。
気付いているのに、気付いていないふりをしてくれる三人。
だからかな。
太一といる時のように安心できるのは。
「はははっ。ありがとー」
仮面を外すには、まだ勇気が足りない。
あと少し。
あと少し経てば、もしかしたら……。
見えぬ未来に希望を抱くことを、どうか許してください。
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