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第四章 転機
体育祭は順調です?
あれから数日。
食堂の一件から蓮夜達の過保護ぶりに拍車がかかり、生徒会室にゲームを持ってきたり、本を持ち込んだり、三人のうち誰かが必ずマリモと一緒にいた。
もちろん仕事は全く手についていない。
政宗が「少しぐらい仕事をしたらどうだ」と声をかけても、返ってくるのは「正人が心配だから」という一言のみ。
呆れた俺は、三人に仕事を回すことを止めた。
俺の事を好きだと言ったマリモは、特に自分から話しかけてくる事はなく。
視線を感じて顔を上げると、物欲しげな表情でこちらを見ているぐらい。
特に進展はない。
する気もないけれど。
三人の役立たずは放置し、実行委員や風紀委員、そして政宗と数名の教員達で、テント、ロープ、入退場ゲートの設置、機械など様々な準備を行った。
そして今日は、体育祭当日。
喧嘩や窃盗、強姦など特にトラブルもなく、残す競技は俺の出場する“借り物競走”と、蓮夜が私的で無理矢理ねじ込んだ
“コスプレ早着替え競争”を残すのみとなった。
「春都。出番だぞ」
クラス毎に用意された待機場所で堂々と寝転がっていた俺に、潤が容赦なく蹴りを入れる。
「グエッ」と低めの声が出た。
「じゅんじゅーん!もう少し優しく起こしてくれてもいいじゃーん!」
「初めて聞いたぞ、そのあだ名。さっさと行ってこいよ」
「はいはーい」
横腹をさすりながら起き上がり、待機場所の一番奥に揃えて置いておいた靴を履いて、招集場所へと向かう。
借り物競走はスタートしてすぐに等間隔で正方形の箱が設置されており、好きなのを選んで走っていく。
箱の中にはお題が書かれた紙が入っており、一つとって中身を確認し、調達をしてからゴールまで全力疾走。
着いた人から順に、お題と調達したものがあっているか答え合わせをする。
大体の流れはこんな感じだ。
特殊なルールがあるわけではない。
「よーい」
スタート地点に到着して数分。
マイクを通して野太い声が鼓膜まで届き、ピストルが上空へと掲げられた。
ーーー……パン!!!
銃声がグラウンドに響き渡り、一斉にスタートする。
スタート地点から一番近い箱は混雑するだろうと予想し、俺は一目散に最奥の箱に向かって走る。
中から一枚適当に選び、取り出して内容を確認する。
そこに書かれていたのは、この学校ならではのものだった。
「楽勝じゃーん。誠ー!!!俺の事大好きな誠くーん!」
「おー!お前の事大好きな誠だぞー!
どしたー!」
公開処刑とも言える俺の叫びに、動揺する事なく声を張り上げて反応する誠。
教員や実行委員の為に用意されたテントから顔を出し、こちらに向かって笑顔で手を振っている。
思いの外早く見つかった事に驚きながらも、誠に目掛けて走った。
「なんだなんだ?好きな人とかいうお題か?もしそうならこの場で公開セックスだかんな」
「お前ならマジでやりそうだなー。でも残念でしたー。お題はこちらっ!」
ででん!と効果音がつきそうな形で、先程選んだ紙を目の前に突き出す。
書かれている内容を見た誠は、満面の笑みで「俺だな!」と言った。
そう。
俺が知っている中ではお前ぐらいだ。
だから近くにいなかったらどうしたものか、と悩んでいたところだ。
「さっさと行くぞー」
「行ってやるからゴールまで手ぇ繋がせろ!」
「お安い御用。ほらよー」
右手に紙。
もう片方の手には誠の手が。
嬉しそうな顔でついてくる姿はまるで大型犬。
難しい内容ばかりなのか、ゴールに着いたのは俺達が一番最初だった。
「一番はなんと鵤様!お疲れ様です!それではお題を確認しまーす!」
確認作業はマイクを通して大々的に行われる為、正直、“好きな人”というお題を引き当てた人は本当の意味で公開処刑だと思う。
「お題は“バリタチ”ですね!連れてきた方は……風紀委員の金城 誠様!これは本人に確認するまでもありせんね。一着は鵤様です!おめでとうございます!」
盛大な拍手と歓声が、俺と誠に送られる。
この学校でこいつがバリタチだというのは知れ渡っている。
というより、自ら公言している。
“どうなんですか?”と聞く必要もない為、確認作業はあっけなく終わった。
そして俺の出番も。
「いやー助かったわ。サンキューなー」
「おー。お礼に掘らせてくれてもいいぜ?」
「アホか。手繋いでやっただろー」
「チェッ」
不貞腐れてはいたものの、仕事の途中で抜けてきたからか、大人しく元いたテントへと駆け足で戻っていった。
閉会式までやる事ないし、適当に散歩をしようと、俺は待機場所とは別の方向へと足を向ける。
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