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終章 輝きを増す銀獣
2枚の写真と風紀委員
「お、来たな」
ピーッという解除音と共に風紀室に入る。
すると、待ってましたと言わんばかりに誠が出迎えてくれた。薄くなったであろう隈を確かめるように親指で撫でてくる。
あまりにも優しく微笑むから、チュッと唇に落とされた行為に反応が遅れた。
その隙を逃すまいと、両頬に手を這わせて噛みついてくる。人差し指で耳朶が弾かれ、思わず肩を震わせてしまった。
自動で閉じた扉に一歩ずつ追い詰められる。唯一自由な足で抵抗しようと試みたが、それよりも早く股の間に膝が押し込まれてしまう。
「……んっ」
刺激を与える為に動かされる膝。頑なに閉じていた口から吐息が漏れてしまったのは仕方がないと思いたい。
「…っ、は……エロ」
至近距離で見つめられ、甘い声色で囁かれる。添えられた手は優しいのに、捉えられた草食動物のような気持ちになるのは何故だろう。
数日ぶりの感覚だからか、それとも身動きが取れない状況だからか。
“あぁ……抱きたいな”
思考を巡らせているとそんな気持ちが湧き上がってきた。
どうしたものか……と視線を彷徨わせる。すると当たり前のように誠と視線がぶつかった。
僅かな変化に気づいたのか目が見開かれる。同時にスパーン!という音が誠の背後から聞こえた。
「病み上がりに何してんだ変態」
スリッパを持った圭が目の前にいた獣を無理矢理引き剥がした。
思考をはっきりさせるために軽く頭を振る。下半身に与えられた甘い刺激に危うく勃ちかけていたので本当に助かった。
誠相手にそんな姿を見せれば、“その気じゃん”とベッドに引き摺り込まれていた気がする。
もしそうなったとしても全力で抵抗するつもりではいるが、事故?とはいえ後ろを使ってからあまり時間が経っていない。過去に抱かれていた記憶が、感覚が、頭と体に戻ってきそうな気がしてならない。
「最初は書類持とうと思ってたんだって!マジで!」
「じゃあ何でキスして股の下に膝突っ込んでんの?」
「いやその……な?お前も見ただろ。あんな顔されたら、な?」
「な?じゃないこの変態が。春くんに接近禁止」
首根っこを掴まれて自席まで引きずられていく。
倒れる前は誠付近の空きスペースにノートパソコンを広げて作業していたわけだが、やりとりを見ていた雪が素早く移動させていた。
「春くん、ココ」
ノートパソコンの行き先は雪の隣。したり顔で手招きをしている姿を目にして、ちゃっかりしてるな、と感心した。
倒れる二週間前から生徒会室での作業を諦めた俺と政宗は、ノートパソコンを風紀室に置かせてもらっている。ヤリ部屋へは書類を取る為だけに足を運ぶようにした。
心の平和を保つにはそうするしか方法がない、と言っても過言ではない。
「さっきの話に戻るけどさー、この調子だと終業式までにはいけそうだよねー!」
椅子に座った所で、陽が書類の束を揺らしながら言う。
“さっきの話”と聞いてすぐ思い浮かんだのは圭と誠のやり取りだったが、終業式という単語で思い直す。
俺が来る前に仕事の話でもしていたのだろう。陽が手にしている紙束が内容に関係あるのかまではわからなかった。
「生徒会室、寄ってきたんでしょ?四人は相変わらずだった?」
質問の後に小さくどうぞ、と付け加える圭。桜が描かれたマグカップがテーブルに置かれた。
これは風紀室に入り浸るようになってから、圭が俺の為にわざわざ用意してくれた物だ。
「楽しそうに連結セックスしてたぞ。何かに使えるかと思って写真撮ってきた。ほら」
撮りたてホヤホヤの二枚を順番に見せる。へー、と短く返事したかと思えば、圭も自分のスマホを取り出した。
「それ送って。使わないかもしれないけど」
「ん?あー……まぁ、いいけど」
プライバシーの侵害だとかそんな考えが頭をよぎったけど、そもそも盗撮した時点でアウトだ。俺は開き直ることにした。
圭なら悪用はしないだろう。そう自分に言い聞かせ、四人の仲睦まじい写真を送信した。
「ふふふ。ありがとう」
既に仕事へと意識が向いていた俺は、スマホを見ながら怪しく微笑んでいる圭に気付かなかった。
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