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終章 輝きを増す銀獣
緊急集会
学校では生徒会の仕事と勉強に追われ、部屋では太一と他愛のない話をして過ごす日々が続いた。
今日も同じだろうなと考えていた所で事件は起きた。
『皆様おはようございます。急なご連絡となり申し訳ありませんが、只今より緊急集会を行います。速やかに移動してください。繰り返しご案内いたします……』
この学校に転校してきてもうすぐで二年経つが、緊急集会など行われた記憶はない。それだけ重要な案件ということか。
今だに流れ続ける放送に耳を傾けながら考える。
緊急性が高い案件なら生徒会に話が下りてきていなくてもおかしくはない。だが、面倒ごとを嫌う教員の主要メンバーなら放り投げてきそうなものだ。
「なーに怖い顔で考え込んでんの?」
無意識のうちに寄っていたであろう眉間を突かれる。
「いや、緊急集会なんて初めてだなと」
「確かにな。でもまぁ、大丈夫だろ」
「お前の大丈夫は当てにならない」
「信用なさすぎて泣きそーう」
シクシクと嘘泣きを始める隼人。視界の端には戸惑いながらも続々と教室を出ていくクラスメイト達が映った。
「嘘泣きキモいからやめなー?」
「可愛いだろうが」
「そう思ってるの自分だけだからね?ほら、春都も行くよー。立って立って」
出口側の腕を掴まれ、無理矢理立たされる。潤はドアの所で欠伸をしながら俺たちを待っていた。
腕に抱きつく類はそのままに、隣に並ぶとのんびりと歩き出す。
「内容、なんだと思う?」
「んー?そんな大したことないと思うけど」
欠伸によって涙が薄く張った目で言う。隼人と同じく楽観的な反応。
「何で」
「何でも」
「潤」
「なーに」
「お前、知ってるだろ。内容」
そう言えばピクリと肩を震わせる。無言で何かを考えているようだが、反応を見るかぎり当たっているのだろう。
「鋭すぎるの良くないよー。潤が可哀想」
抱きついていた類が腹を叩いてくる。
変に言い訳をしないのは、俺が“知っているだろ”と言い切ったからだと思う。
「マジで大丈夫だって。夏休みなくなりまーすとかそういうんじゃねーから」
「夏休みなくなる話だったら全力でこの学校潰すぞ」
「いやん。春都くん過激」
「きしょい」
大丈夫と言うだけで、結局内容は教えてもらえなかった。
不安そうな表情を浮かべる生徒達とは裏腹に、三人の顔は晴れやかだ。その姿を見て“悪いことじゃないならいいか”と思うことにした。
「何で強制参加なんだよ。後から他の人に聞くとかでいいじゃん」
「理事長命令だからな。仕方ねぇ」
「叔父さんには俺から言っとくから生徒会室行こ」
「正人、今回ばかりは無理ですよ。来なかったら退学だそうですから」
「……めんどくさい」
「拗ねない拗ねなーい!終わったらまたみんなで楽しいことしよー」
そろそろ始まるという時、気怠げにやってきた四人。声を潜める気はないらしく、数メートル離れた状態でも会話が筒抜けだ。
比較的近い距離にはいるが、周りに興味がないのかこちらには一切気づいていない。
麗華の言葉に頷きながら欠伸をするマリモ達。
「チッ。なに眠そうにしてんだって感じ。ぜーんぶ春都に丸投げなくせに」
お腹に回っていた腕に力が込もる。視線を下げると物凄い形相でマリモを睨んでいた。
「るーい。般若みてーになってんぞ」
「だってムカつくじゃん」
「まぁな。あと、抱きつき過ぎ。ずるいぞお前」
「うるさいな。隼人も抱きつけばいいじゃん」
「あ、いいの?じゃあ遠慮なく」
類よりも逞しい腕が首に巻きつく。締まりはしないが、時期的に暑苦しい。
「お前ら暑い」
「冷房効いてるから大丈夫でしょー」
「そーだそーだー」
その会話を聞いて前にいた潤が振り返り、目をパチパチと瞬かせる。
「三人でイチャつくなよ。俺も入れて」
止めろ、という言葉を期待していたのに発せられたのは真逆だった。両腕を掴まれ、潤の腰に無理矢理持っていかれる。
腹には類。
首には隼人。
前には潤。
「どういう状況だ。これは」
されるがままな俺がそう呟けば、三人が声を揃えて「春都が大好きってことー」と口にする。どこのバカップルだ。
「大丈夫大丈夫。ちゃんと友達としてだから」
「そこは疑ってねーよ」
「だよなー」
「なー」
三人にくっつかれながら集会が始まるのを待つ。
マリモが苛立ちで眉間に皺を寄せ始めた所で、ようやく理事長が壇上に上がった。
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