銀獣-王道BLを傍観するつもりが巻き込まれました-【本編完結。SS公開予定】

レイエンダ

文字の大きさ
95 / 103
終章 輝きを増す銀獣

自己中なお姫様


 緊急集会が終わった後、教師や生徒問わず落ち着かない様子だった。
 生徒は戸惑いや驚きは多少あるようだが、どちらかというと喜んでいる者の方が多いように思える。



「あのね、口に出さなくても日に日に隈酷くなる春都見てたら気付くに決まってんでしょ。みんなに好かれてる自覚あるのに何でそこは疎いかねー」



 ため息交じりで小突いてくる類。
 ファンデーションでも隠しきれていないとは思っていたけど、そこまで心配されているとは思っていなかったので反論のしようがない。



「でもなんで先生たちがソワソワ……というか、ビクビクしてんだろ」
「生徒会に自分たちの仕事横流ししてたのが理事長にバレてるのかきになってんじゃねーの」



 授業の準備をしながら言えば、三人は顔を見合わせる。



「ちょっと!なにそれ!」
「初耳。生徒会の仕事だけじゃねーの?」
「というか、生徒会の仕事と先生の仕事を二人で回してたってこと?いや、西条は自分よりも春都の方が大量に処理してたって言ってたし……」



 それぞれ思うことを口にしていた。その言葉は俺に向けられたものではないように思えて視線を逸らす。



「あ」



 不意に出た一文字は三人の声でかき消された。
 普段目を向けることの少ない廊下側。そこにいたのは可愛らしい顔を歪めたマリモで、顎を突き出すようにして顔ごと動かした。
 そして同じ方向に歩き出す。“ついて来い”ということなのだろう。
 声をかけるでもなく、お願いするわけでもなく、顎で人を連れ出そうとするなんて何様だ?やんちゃな者たちの間で黒犬だとか呼ばれているらしいけど、駄犬の間違いだと思う。
 素直について行く理由も義務もない。しかし、無視する方が面倒な気もする。
 深くため息をつきながら立ち上がり、マリモの後を追った。



「何てことしてくれたのさ」



 無言の誘いにのってやったというのに開口一番がこれだ。理事長を含め、周りの人間に甘やかされてきたのが伺える。



「俺じゃないぞ」



 苛立ちを押し込めて返事をすれば、目を吊り上げて反撃してきた。


 直接何かしたわけじゃなくても先輩の周りの人がやってるんだから一緒だ。
 周りからお前のせいで三人が除名になったと非難された。
 一緒にいてほしいなんて俺からは言ってない。
 全部俺のせいみたいに言われるのは心外だ。
 嫌がらせをされていて教室に居ずらいから、許可を得て生徒会室にいた。


 他にも何か言っていたような気もするが、馬鹿らしくなって聞くのを止めた。
 そこに至るまでに自分が関わっているという事に気付いていないらしい。少し考えればわかることなのに、自分は悪くないという前提があるからそこに辿りつけない。
 苛立ちよりも呆れや哀れむ気持ちの方が強くなる。




「ちょっと、聞いてんの!?」



 そして敬語を使うという事さえも忘れてしまったらしい。



「責任転換しないでもらえる?三人が溺愛していたのは事実だとしても、迷惑だったなら止めてくれと断るなり、何かしらのアクションを起こせば良かった話だ。関わり方や距離感をかえるとかな。その選択肢を取らず好意に甘えたのはお前だろ?ここで俺に怒鳴るのはお門違いだ」
「俺は断ってた!」
「最初はな?途中からは受け入れてただろ」
「だってそれは、先輩が……」
「また人のせいか。みんながみんな、自分の好意に答えてくれるわけじゃない。断られたり拒絶されることもあるのが普通だ」



 でも、と口にしてから下唇を噛む。
 素直に受け入れられないのは、今まで自分の思うようになってきたからだろうな。
 これはマリモだけが悪いわけじゃない。根気よく指摘したり、一緒に考えてくるような人が周りにいなかったという環境のせいもある。



「可愛がってくれる人間ばかりじゃないんだよ。それに気付くいい機会だったんじゃねーの?」



 それだけ言い残し、俺は教室へと戻る。マリモの口から発せられているであろう嗚咽は、聞こえないフリをした。



感想 43

あなたにおすすめの小説

お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!「………私は男なのだが」

ミクリ21
BL
エリアスの初恋は、森で遊んでくれる美人のお姉ちゃん。エリアスは、美人のお姉ちゃんに約束をした。 「お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!」 しかし、お姉ちゃんは………実はお兄ちゃんだということを、学園入学と同時に知ってしまった。

同室のアイツが俺のシャワータイムを侵略してくるんだが

カシナシ
BL
聞いてくれ。 騎士科学年一位のアイツと、二位の俺は同じ部屋。これまでトラブルなく同居人として、良きライバルとして切磋琢磨してきたのに。 最近のアイツ、俺のシャワー中に絶対入ってくるんだ。しかも振り向けば目も合う。それとなく先に用を済ませるよう言ったり対策もしてみたが、何も効かない。 とうとう直接指摘することにしたけど……? 距離の詰め方おかしい攻め × 女の子が好きなはず?の受け 短編ラブコメです。ふわふわにライトです。 頭空っぽにしてお楽しみください。

【BL】SNSで出会ったイケメンに捕まるまで

久遠院 純
BL
タイトル通りの内容です。 自称平凡モブ顔の主人公が、イケメンに捕まるまでのお話。 他サイトでも公開しています。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

双子のイケメン執事達と恋愛しています

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、平野家の息子となった勇人。超お金持ちの家では、驚く事ばかり。そんな勇人は、双子のイケメン執事に気に入られてしまう。やがて双子の気持ちを知った勇人は、驚きながらもその気持ちを受け入れる事を決める。 回を重ねるごとに、勇人と双子の関係が濃厚になっていきます。 長編ですが、1話1話は短めです。 第5話で一旦完結となります。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる