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終章 輝きを増す銀獣
時、既に遅し
今まで順調だった。
見た目がいい事もあって親衛隊ができ、抱いてほしいと沢山の男が言い寄って来る日々。
生徒会長になってからは授業免除。最高品質の部屋を与えられ、様々な特権を使えるようになった。
生徒会の仕事は多かったが、他のメンバーが優秀なこともあって滞ることはない。
狂いだしたのは、正人に入れ込んでからだろうな。
外出届をだし、三人で街へ繰り出していた時に出会った“黒犬”。
黒いカツラと眼鏡を突けて転校してきた“正人”。
時期が重なっていて、もしかしたらと興味を持ったのが始まりだ。
まさか葵達も入れ込むとは思っていなかったが、黒モジャの正体を突き止めるのに時間はかからない。政宗達がいれば少しの間なら大丈夫だろうと容認した。
一緒に過ごしていくうちに惹かれていき、正人が強姦された事で黒犬だと知る。やはりなと思う反面、よかったと安心した自分がいた。
塞ぎ込んでしまった正人。俺達では連れ出すことが出来なくて、春都に縋るしかないという事実が悔しかった。
こんなにも好きなのに、正人が思いを寄せているのは春都なのだと突きつけられる。
きっと春都は正人を抱くだろう。あの部屋で、優しく、淫らに。
「失恋、した」
「……正人」
「抱いてよ。お願い」
涙でグシャグシャな顔で俺の胸に飛び込んできた。付け入るなら今しかない。
大丈夫だと言い聞かせるよう丁寧に抱いた。犯された記憶も、振られた現実も、忘れてしまえばいい。
その日から正人は快楽に溺れていった。寂しさや嫌な思いを消す為に俺達を求める。
それでいいと思った。正人の側に居れるなら、正人が安心するのなら、何でもしてあげたい。
正人を一人にしないよう過ごしていたら、必然的に生徒会の仕事はおざなりになった。まずいと思いながらも二人なら大丈夫だろうという気持ちがあって、気付いたら二か月が経っていた。
「三人を除名処分とする」
前例のない除名。まさか自分の代でそんなことが起きると、誰が予想しただろうか。
生徒会に選ばれれば内申点は申し分ない評価を貰えるし、推薦で有名大学に進学して親父の会社を継ぐ。約束された未来だったはずなのに。
「話は聞いたぞ、蓮夜」
「はい」
「そこに書かれている大学のどこかには合格しろ。でなければ会社は蓮次に継がせる」
「わかりました」
紙に書かれた大学はどこも有名大学で、最低ラインというには高い目標だった。
期末テストの結果は中間よりもかなり落ちている。今までのように正人と一緒にいる事は難しい。
好きな人と過ごすことが出来ない。辛くはあるが、将来がかかっているのならば諦めるべきだ。
“夏期講習を受けるから夏休みは遊べそうにない。学校が始まっても受験もあるから今までみたいに会えなさそう”
正人に連絡すると、どうして?や少しぐらい大丈夫じゃないの?などと返ってきた。そうだったらよかったのにな、と乾いた笑みが零れる。
除名を言い渡された次の日に部屋を移り、格段に狭くなった部屋で勉強に励む。授業にも全て出なければならない。
この二か月、昼過ぎに置きて正人とセックスして、食べたい時に食事をする。そしてまたセックスして夜遅くに抱き合って眠る。そんな不規則な生活をしていた体には負担が大きかった。
でも弱音を吐くことは許されない。俺は親父を尊敬しているし、会社を継いで世の中に貢献したいという意志だってある。
「そういえば、この二か月忘れていたな。その気持ちを」
恋は盲目だと、誰かが言った。本当にその通りだ。
正人の事は好きだけど、今は構っている余裕が無い。教室や部屋に遊びに来るが、遅れた分を取り返すには時間が惜しい。
理由を伝えるけど、納得してくれないのはなぜだろうか。終いには「あおの所にいくからいいよ」と拗ねたように去っていく。
寂しいとは思うけど、葵達も親から叱責されているから正人のお願いに答えられないことを俺は知っている。
「道を間違えたな」
誰も居ない廊下で一人後悔する。
正人を好きになったことにではない。流され、己の目標を見失ってしまったことに対してだ。
「ごめんな」
肩を落として去っていった正人を思い出し、聞こえていないであろう謝罪の口にする。
「勉強、しないとな」
溜息を一つ零してから、俺は自室へと戻った。
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