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終章 輝きを増す銀獣
決別
「あ」
俺の手からスマホを抜き取り、表示されているメッセージを睨みつけている。画面を操作してブロックのボタンに指を近づけるが、寸での所で止めた。
「ブロックしてもまたアカウント作って連絡してくる気がする」
俺にはなしかけてるのか独り言なのかわからなくて、心の中で“確かに”と同意する。
チクタクという秒針の音だけが響いていた。
「電話しよ」
「え?」
「ハルとやれるって思ってる気がするし、きっぱり断らないと永遠と同じことしてきそう」
「太一が電話してくれんの?俺、話したくないんだけど」
「うん。引き下がらなかったら社会的に潰すから任せて」
真剣な眼差しで頷く太一。後半は不穏だが、過去を完全に断ち切るにはハッキリ断った方が良いように思えた。
同意すれば、躊躇なく右上の通話ボタンを押す。
『もしもし?ハル』
繋がらないことも考えられた。しかし、俺と同じく終業式だったのか、それとも昼休憩中なのかツーコールで繋がった。
春都呼びにしろと言ったのに元通り。その声でハルと呼ばれただけで吐き気がした。
「春都って呼ぶように言われたはずだけど?」
『……誰?』
陽気な声から一変、二段階ぐらい声が低くなった。
「ハルの彼氏。ハルが嫌がってるから連絡してこないでもらえる?」
『はぁ?本当にハルが言ったの?』
「春都、な。隣にいる」
『代わってよ。本人に聞く』
あの日、触るなと叫んだり呼び方を指摘してあからさまに嫌いな態度を取ったのに、太一の言葉を信じようとしない。
他の男と遊んでんの?とからかってきたくせに、まだ自分の事が好きだとでも思っているのだろうか。
照れ隠しでもなんでもなく関わりたくない。あの時も遭遇したことに動揺しただけで未練があっての行動ではないのに。
「どうする?」
嫌がっていると言っても引かない事に呆れ気味の太一。面倒くさそうに聞いてきた。
話したくないと事前に伝えていたから、変わる気がないのは表情から伝わってくる。それでも投げかけてきたのは何故か。
「無理。話したくない。二度と関わるなって言って」
そう口にすると、口元を綻ばせて嬉しそうに笑った。
明らかな拒絶。これを言わせたくてワザと聞いたのだろう。
「そういうことだから、止めてくれる?迷惑」
『チッ。わかったよ!別にお前と会えなくても支障ねーし』
最後のは完全に負け犬の遠吠えというか、強がっているようだった。俺が断ると思っていなかったのだろうか。
会いたいと言った覚えも、態度に出した覚えもない。付き合っていたという過去も含めて、自分の事をまだ好きという謎の自信があったのか。
「スマホありがとう。学校に乗り込んで来るとかはないと思うけど、一応見張っとくか」
数秒前まであいつと繋がっていたスマホが戻ってきた。
太一はというと、自分のスマホを取り出してフリック入力をし始めた。文章を入力しているみたいだけど、どこに、何の連絡をしているのかは聞かないでおく。
「ふー……」
直接話したわけではないけど無意識に体が強張っていたらしく、ソファに背を預けると一気に力が抜けた。
太一に本音を話したことで一歩前進したのは間違いない。でも電話をしたことで、本当の意味で前を向けた気がする。
過去との決別、というやつだ。
「ハル」
連絡を取り終えた太一が噛みつくようなキスをしてきた。
セットしていない髪が頬に当たる。耳にかけてやると、太一は隙間から小さく息を漏らした。
「太一」
「ん?」
名前を呼ぶと、優しく微笑んで続きを待っている。
「~~~~、する気ある?」
「……え?」
太一の両頬を包み込み、今度が俺から口付ける。
聞こえていないのならそれでいい。俺の言葉が届いていたのなら、このキスの後に答えが返ってくるだろう。
「……っ、ある」
惚けた顔で呟く太一に、俺は無言で微笑み返した。
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