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2◆ランバート視点

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全力で走っているのに、ドンドン距離が縮まってしまう。

クソ!

平凡は所詮イケメンには勝てないのか!?

そう、変態はイケメンなんだよ。

ただ笑っているだけなら、王子様みたいなキラキラしているイケメン。

もし俺が乙女だったら、自ら捕まりにいくかもしれない。

でも、俺は捕まりたくない!

だって、あの男は変態だもん!!

「逃げるなんて、照れているんですね~!」

「照れてねぇよ!」

「愛しています~!」

「変態は変態の巣に帰れ!」

「私達の愛の巣に共に行きましょう~!」

「警備兵ーーー!!」

町の人々が、なんだなんだと俺達をみている。

なんで誰も助けてくれないの!?

俺が平凡だからか!!

なんて考えていると、盛大にすっ転んだ。

何故か落ちていたバナナの皮を踏んでしまったんだ。

あ、ヤバい!!

俺は、咄嗟に頭を腕でガードして目を閉じる。

ドサッ!

地面(?)と俺の身体がぶつかる。

しかし、痛みはいつまで待ってもこない。

おかしいなと思って目を開くと、俺はあの変態男を下敷きにして倒れていた。

「捕まえました♪私の胸に情熱的に飛び込み、積極的に押し倒すなんて……あぁ、素敵です!」

「………いや、意味不明なんだけど」

嬉しそうに俺を抱き締めているから、起き上がれない。

なんでコイツが俺の下敷きになっているのかはわからないけど、そのおかげで俺は助かったんだ。

………お礼はちゃんと言わないとダメだよな?

「助かった。ありがとう」

「ふふ、ではこのまま私の寝室に行きましょうね!」

「は?」

俺達は、今外にいる。

もしかしたら、コイツは頭を強く打ったのかもしれない。

早く医師にみせないと!

………そう思ったのは、一瞬だった。

「アンタ、転移魔術が使えるのか?」

「はい♪私はルーカス・シルクです。26歳で、男性用下着専門店の店長です。長いので、私のことはパンツ売りの変態とお呼びください!」

「店長さんでいいだろ!?………ランバート・サラフィスだ。24歳」

よくわからない変態……ルーカスに、強制的にお持ち帰りされた俺。

………逃げられるんだろうか?ガクガクブルブル。
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