上 下
33 / 35

33◆ベルモット視点

しおりを挟む
「「あっ!」」

僕は、お買い物をしようと市場に来た。

そこで、あの人物に会ってしまったんだ。

その人物とは、シルク様と一緒にいた人物だ。

シルク様の妻……名前は知らない。

「今日は一人なんだな」

「はい」

ルチル様はグイグイと僕に迫ってきて、僕は前向きにルチル様の気持ちを考えようとは思っている。

けれど、まだ完全には受け入れきれていない。

だから、一人になりたかったんだ。

僕が暗い顔をしているせいか、彼は僕に時間はあるかと聞いてきた。 

「ありますよ」

「じゃあ、ちょっと話さないか?カフェで奢るからさ」

「………はい」

そういうわけで、僕は彼と一緒に近くのカフェに入り話をすることにした。



「俺はランバートだ。お前の名前はルーカスに聞いてるけれど、一応名乗ってくれよ」

「はい。ベルモット・クロックです」

なるほど。

シルク様の妻は、ランバートというのか。

やはりシルク様の妻なのだから、ランバート様と言った方がいいのだろうか?

わからないから、本人に聞いてみよう。

「ランバート様と呼べば良いでしょうか?」

「普通にランバートでいい」

僕達は、お互いに注文したジュースを飲みながら話をする。

「ベルモット、ルーカスは前の職場に帰る気はないんだ。だから諦めてほしい」

「もう諦めかけているので、そこは安心してください。今の僕の悩みは、シルク様のことではありません。ルチル様のことです」

「あの一緒にいた人?」

「はい。実は求愛されていまして……前向きに考えてはいるんですけど、まだ受け入れきれていないんです」

「ちなみに、その人優秀だったりする?」

「はい。とても優秀な人です」

「ちなみに、ベルモットは?」

「僕は優秀ではないですね」

「じゃあ、優秀なルーカスに求愛されてしまった俺からのアドバイスを言おう。諦めて受け入れちまえ。優秀な奴には凡人は敵わない。俺はもう諦めた」

「それ、アドバイスって言うんですか………?」

ランバートに何があったのかはわからないけれど、何かとても苦労したんだろうなとは思う。

そのアドバイスもあって、僕はやっとルチル様を受け入れようという気持ちを固めた。

すっきりした僕は、ランバートが奢ると言ってはいたけれど、ここは僕が奢らせてもらった。

スッキリしたお礼のつもりだ。
しおりを挟む

処理中です...