不遇ショタ勇者は魔王様の過保護に今日も幸せ！！

6◆マフユ視点

久しぶりのちゃんとした食事は、泣くほど美味しいものだった。

辛くないって思っていた。
苦しくないって思っていた。
悲しくないって思っていた。

嘘。

辛かった。
苦しかった。
悲しかった。

でも、その気持ちはずっと麻痺していたみたい。

スープを飲んで、気づいたんだ。
その僕の本当の気持ちを………。

僕は、忘れたかったんだ。

本当の気持ちを忘れないと、生きてられなかった。

ああ、でも、思い出しちゃった。
………思い出しちゃったよ……。
ずっと忘れていたかった。


魔王は僕に優しくしてくれる。
僕が勇者として来たのはわかってるはずなのに…僕をみる目が暖かい。

僕を撫でる手が優しくて気持ちいい。

………僕は勇者だから、きっと後で殺されるんだろうな。

でも、こんなに優しい人なんだったら……死んでもこの人を恨まないですむ。

…………できたら、あまり痛くなかったら………。
ううん。贅沢は良くない。
こんなに美味しいスープも飲ませてくれたんだから、どんな死に方でも受け入れよう。

……本当は死にたくなかったけど、もう自分の命が大事に思えなくなった。

魔王の城に来るまでの長い孤独な旅は、僕の心を変えてしまった。

最後にいい思いができて良かった。