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5◆ラグナー視点

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「遠慮するな。行くあてがないと言っていただろう」

私とルチアーノは、フヨフヨと浮いたまま家の中に招き入れられた。

世の中には、魔法を使える種族が何種類かいる。

人間は残念ながら使えない種族だ。

これが魔法なのだとしたら、男は人間ではない種族ということになる。

「アハハッ!兄ちゃん、みてみて!僕泳いでるよ!」

ルチアーノの楽しそうな声を聞いて、ルチアーノをみたら浮いてるのをいいことに泳いで遊んでいる。

「ルチアーノ………」

「ふむ………」

何事か考えていた男は、ルチアーノの泳ぎにあわせてゆっくりとルチアーノの身体を前に進ませた。

「この方が泳いでいる感じがするだろ?」

「わぁーい!わぁーい!アハハッ!」

ルチアーノを、まるで保護者のように穏やかにみつめ微笑む男。

………好んで素っ裸でいることで、変態だと思い逃げようとしたことは、謝罪するべきだと私は思った。

「先ほどは、失礼な態度をとって申し訳ありませんでした」

私は、フヨフヨ浮いたまま男に頭を下げた。

そのせいで、空中で一回転してしまった……。

「変態だと思ったんだろう?大丈夫だ。慣れている。俺の名前はラズロッドだ。ラズと呼ぶといい。お前達は?」

変態だと自覚しているのか……。

というか、慣れているのか………。

「私は兄のラグナーです。8歳です」

「僕はルチアーノだよ!6歳!」

ルチアーノは元気よく名乗った。

「そうか。事情を聞きたい所だが、子供は眠る時間だ。俺と同じベッドになるが、充分な広さのベッドだから大丈夫だろう。ちなみに、腹は空いているか?」

私は、できるだけ腹が鳴らないように腹に力を入れた。

「………私は空いていませんが、ルチアーノは空いています」

半分嘘で、半分本当だ。

実際にルチアーノの腹は空いているはずだから。

「そうなのか?」

先ほどまで楽しそうだったルチアーノは、ションボリと首を横に振った。

「ううん。兄ちゃん嘘ついてるの。僕もお腹空いてるけど、兄ちゃんの方が僕よりお腹空いているよ」

ルチアーノ!?

そんなことを言ってはいけない!!

そんなことを言えば、ルチアーノがあんまり食べられないじゃないか!!

ルチアーノの口を塞ぎたいのに、浮いたままの身体はルチアーノの下に進まなかった。

「つまり、二人共空いているということだな。何か食事を用意してやろう」

ラズは、私とルチアーノをソファーに座らせてキッチンに向かった。

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