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9◆ジルベルト視点

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マチルダと婚約することになり、かなり久しぶりだけど実家に連絡を入れた。

連絡の魔道具は、離れている相手と会話ができる優れものだ。

「あら、ジル君じゃないの!」

久しぶりに聞いた母の声に、懐かしさを感じた。

「母様、お久しぶりです」

「久しぶりねぇ。元気だったかしら?もう、ジル君ったら全然お家帰ってこないから、私もパパもお兄ちゃんも寂しかったのよ~!」

「………実は、この度婚約をすることになって、その報告をするために相手を連れて一度挨拶に行きたいのですが……」

「えっ!?婚約!!まぁまぁまぁ、あの引きこもりのジル君が、とうとう愛に目覚めたのね!!ママ嬉しいわぁ!」

「母様、俺は愛に目覚めてません。あと、断れなかったんです………」

「それでそれで!お相手はなんてお名前なのかしら!?」

「マチルダ・エルフィン公爵令嬢です」

「………」

何故か母様が黙ってしまった。

どうしたんだ?

「母様?」

「いえ、なんでもないわ!ぜひ今度連れていらっしゃい!」

「はい」

魔道具のスイッチを切って振り向くと、マチルダがタンクトップにズボンという格好で、筋トレをしていた。

母様……父様……兄様……俺の子の顔は………期待しないでくれ。

マチルダを………抱ける自信がないんだ………。
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