幼馴染はイケメン高学歴リア充、だけどぽっちゃり喪女の私に夢中でなかなかの変態だからもったいない。

茜琉ぴーたん

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episode:4…修行

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「……(篤人あつと?)」
ビクッと体が強張って、階段の壁に忍者のように貼り付き隠れる。
 廊下の先は玄関で明り取りの大きなりガラスの引き戸…こっそり窺えば篤人のシルエットがそこで動いていた。
「(…来た、居留守だ、居留守…)」
 本日親は仕事で祖母は出掛けたのか留守だ。田舎ゆえに隣の家まで距離があるので、助けを呼ぶには最終手段の通報しかない。
 運動で上がった心拍数がまた跳ね上がる、喉の奥に鼓動を感じるほどにばくばくと心臓がうるさい。ゾンビ射撃ゲームを初めてプレイした時みたいな緊張、こうして壁に貼り付いていると余計にそうだった。
「(…チャイムとか…鳴らさねぇのか…?……あ、やべぇ!)」
 勝手口が無施錠だったことを思い出した私の嫌な予感は的中しており…影がゆっくり動いてこちらも無施錠の玄関扉に手を掛ける。
 慌てて飛び出すも、軽薄そうな男の顔が隙間から覗いた。
「ひっ……篤人、」
「だま、ぢゃん…」
私と同じくらい息を切らした篤人はゆっくり扉を開けて入り込み、靴箱に片手をついて私を睨んだ。
「ふー、ふー…自転車漕ぐの、相変わらず速いなぁ、ふー、太ってるのに」
「うるせぇな!おい、不法侵入だぞ、出てけ」
「お邪魔します、ふー、あー疲れた」
ふらりふらりと玄関マットを踏んで篤人が廊下を進む。
 ゲームさながらの切迫した危機感に、心臓が千切れそうなほどドキドキして息が詰まる。
 台所へ逃げて勝手口のドアノブに手を掛けたその時、
たまちゃん」
「ひぃ」
人生で初めての壁ドン…ありがたいんだか分からない貴重な経験をした。
「やめ……はァ……おいって、通報するぞ」
「してもいいよ、そしたらボクは退学だ、中卒ニートになって珠ちゃんの家の周りを毎日徘徊してやる」
 頼むからそんな綺麗な顔で私を見つめないでくれ。イケメンと半径1メートル以内に居るだけで気が気じゃないってのにこんなに接近されると息が止まって死んでしまう。ツンデレもヤンデレも嫌いじゃないけどゲームだけで充分なんだよ、実体験したいなんて望んだことは無い。
「馬鹿か…それも通報してやるわ」
「…珠ちゃん、お願い、お願いしますっ‼︎ぼ、ボクの童貞、貰って下さいっ」
「要らねぇ」
 涙ぐんだ美男子は眼福だが要求を鑑みるとそれで「良し」とはならない。
 私がほだされないと分かると、篤人は壁から手を離してすすすと身を小さくして膝を床へとついた。
 そして
「この通り!」
とお決まりの土下座だ。
 そういうナンパ師が居ると聞いたことはあるがここまで鬼気迫る男はなかなか居ないだろう。
「やめろ、プライドねぇのかよ」
「無いよ‼︎保身で頭いっぱいだよ‼︎」
「カッコ悪…」
「カッコ悪いんだよ、だからお願い…エッチ、させて…」
「何が『だから』だよ…馬鹿じゃねぇの…」
「お願い、珠ちゃんが望むなら二度と目の前に現れないしこの秘密は墓まで持って行く。幼馴染みを助けると思って…お願い、ね、ボク、イケメンでしょ?」
 自分の容姿に自信を持つ人間はいけ好かないねぇ、元より私はそんな思想だがここまで床に這いつくばって懇願する男はもうイケメンではないと思えてきた。
 なんだって恵まれた男が私みたいな非モテ女に頭を下げるんだ、遠くでナンパでもして来れば良かろうに。そうかその度胸が無いのか、つくづく情けない奴だ。
「自分で言うな」
「カッコ良くない?」
「別に好みじゃない」
「良いじゃん…もうこんだけ話したんだから退けないよ、お願い、珠ちゃん」
 スニーカーで蒸れた靴下に篤人はひたいを擦り付ける。
 「やめろ」と止めても
「お願い…お願いだよ…」
と終いには私の大根足を捕まえてつたのように巻き付いてしまった。
 もう不憫ふびんというか引いている。この件が篤人にとっては重要なことだということはよく分かったし軽んじている訳でもないということも分かった、墓まで持って行くと言うなら信用はする。
 しかして実際問題どうなんだ、私は受け入れるだけだが男は大変だろう。好きでもない女で勃起するものなのか。
「篤人さぁ、その……私で…勃つのか?」
「その気になってくれたの?」
「いや、まぁ…」
「ありがとう、昔から面倒見が良かったもんね、珠ちゃんに頼んで正解…」
篤人は絡まった蔦のまま、すりすりと私のジーパンの股座部分に頬を付ける。
 安心したのだろう、深く目を閉じると涙がつぅと一筋流れて私のジーンズに吸われていった。
「それやめろて……でその、私で興奮出来んの?」
「………でき、る……よ?」
「自信ねぇのかよ」
「ごめん、具体的なことは考えてなかったんだ。童貞なもんで」
「あーそう」
「どうしよ…とりあえず裸にならない?」
 篤人は涙を拭って立ち上がり、ぽっぽと熱くなった私の頬に震える手で触れて口元だけ笑う。きっと緊張しているのだ。
 そしてそれは私もで、こんな昼間に裸になって男子に見せるという特大イベントにぞわぞわ腹の下辺りが締め付けられるような感覚がした。
「は、今かよ」
「うん、お家、誰か居る?」
「いや、留守だけど…ばあちゃんがいつ戻って来るか分かんねぇ」
「じゃあ帰って来るまで。…珠ちゃんの部屋、見てみたい…前と変わってない?」
「うん…いや……あ、あの、風呂とか…」
「あー、汗かいたもんね」
「うんうん」
 汗も毛とかどうにかしなければいけない部分は沢山あるのだ。風呂に入って体脂肪率が変わる訳でもないけど、最低限不愉快にさせてはならんと力強く頷くうなずく。
「ボク、濡れタオル貰えたらそれで拭くよ。珠ちゃん、入って来なよ。もしおばあちゃんが帰って来たら『汗かいたから入ってた』って言えば言い訳になるでしょ。そしたらボクは隙を見つけて帰るからさ」
「う、ん…」
「表の自転車、隠して来るね。靴も」
「うん…」
 よくよく考えればこの隙に玄関を施錠してしまえば良かったのだろう。
 けど、もうここまで来たら情とか性への好奇心とかが勝っていて、私は風呂場へ向かい一番新しくて肌触りの良いタオルを濡らしてキツく絞った。
 そして玄関からスニーカーを携えて戻って来た篤人へ渡して部屋へ上がらせて、改めて風呂場のシャワーで汗を流した。
 普段の制服で見える部分は綺麗にしている方だ。逆に見えない脇とかヘソの下とかは伸ばしっぱなしで…言い訳させてもらうと見せないからであって、見せる機会さえあれば整えていただろうと…思う。
 つるつるはみっともないんだろう、この前まで中学生だった体だ。贅肉ぜいにくが落ちたとはいえ腹の肉の下は幾分か茂っていた方がミステリアスで良かろうか。
「(私は…何を考えてるんだ…?)」
 あまり待たせても悪いし、周到な準備でも出てくるのがこれなんだから期待させても良くない。

 洗面所の扉から居間を確認してばあちゃんが帰宅してないことを確認、バスタオルだけ巻いてトトトと階段を上った。
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