7 / 9
私の見た目は私のもの
6(最終話)
しおりを挟む週明け、晴れやかな心持ちで出社する。
土日も彼から連絡は無かったし、既読スルーが答えなのだろうからチャットもブロックさせてもらった。
「ふんふ~ん♪」
今日は髪をハーフアップにして、インナーカラーを大きく見せている。
昨夜カラートリートメントで色を足したから、鮮やかさも蘇って良い感じだ。
足取り軽く歩くたびに毛束が揺れて、微かに視界に入るのがワクワクした。
「こんにちは、お邪魔しまーす」
「…ども」
提携先の作業場に伺えば、いつもの無骨な職人・隼人さんが愛想を返してくれた。
今日の訪問は定期健診みたいなもので、御用聞きも兼ねている。
特に要望でも言われない限り、数分の滞在で済んでしまう仕事だ。
「隼人さん、順調ですか?」
「あぁ」
「頼まれてたもの、置いておきます」
「ども」
「メンテ予定、また決まったら教えて下さいね。ここ新しいカタログも置いときます」
「うん」
「何か、お困りのこと…あの?」
大柄な隼人さんは作業の手を止めて立ち上がり、私の前に立ちはだかる。
何か粗相があったろうか、アワアワしていると彼は側面に回り込み、
「やっぱ良い色だな」
と呟いて離れた。
「えっ」
また同じ言葉で褒められて面食らってしまう。
隼人さんはもう作業に戻ってしまって、こちらの反応は求めてないようだ。
けれどむずむずと湧き上がる喜びと感謝を伝えたくて、私は彼の背中へ声を張る。
「あ、ありがとうございますっ」
ほら、きちんと評価してくれるってこんなに嬉しい。
自分に都合の良い答えだとしても、それを求めて何が悪いの。
新しい世界はきらきらと輝いて、爽やかに私を彩ってくれた。
おわり
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる