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あー、恥ずい恥ずい恥ずい‼︎
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しおりを挟む「えぇっ⁉︎」
「ざわ…ざわ…」
店内は、さも私がおかしいみたいな空気に包まれる。
もう悪女扱いでも構わないのだが、彼が「どうして?」と尋ねてくるので教えてあげることにした。
「あのー、フラッシュモブは素晴らしかったです。でも、その…私たち、付き合い始めてまだ2週間でしょう?」
「ざわ…」
「サプライズって聞こえは良いですけど、既に夕食も済ませてゆっくりしてたところを呼び出されて」
「ざわわ…」
「着の身着のままで出て来たらこんなドレスコードありそうなお店に連れて来られて」
「かわいそう…」
近くの女性ダンサーさんから、うっかり本音が漏れる。
他の人たちもお店のスタッフさんも「話が違うなぁ」と白けた雰囲気に変わっていった。
「自作ポエムはまぁ、その、ごめんなさい、私、あぁいうので感動できなくて…プロポーズも正直、そこまでの関係性が築けてないのでお受けできません。私を驚かせるため、自己満足のため、頑張ったのは分かるんですけど…嬉しくなかったです、私の気持ちが考えられてなかったように思います」
「あの、でも、ここからやり直して」
彼は両膝をついて、愕然としている。
ところで彼の手の中の指輪だが、私はサイズを測られた覚えが無い。
デートで手は繋いだが、ぐりぐり触られた感じも無かった。
一体彼は何と付き合っているのだろう。
私ではない理想の『出逢って日は浅いけどサプライズプロポーズに泣いて喜ぶ恋人』を私に重ねているのだろうか。
「ごめんなさい。私の意志を尊重してくれてない感じが無理なんです。正直、普段の会話も自己顕示が強くて自分語りばっかりで、合わないと思ってました。良い機会なので、これを限りにお別れが良いと思います」
「えっ」
「自分の食べた分は支払いますので…すみません、お会計を」
固まっているウエイターさんに目配せすれば、素早く「伝票を持って参ります」と動いてくれた。
一方の彼は床で固まったまま、ダンサーさんたちもどうしたらと手持ち無沙汰で困っている。
素敵なショータイムだったがここまで私がお金を払う訳にはいかない。
しかも、あまり集中して見ていなかったし。
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