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10(最終話)
しおりを挟むそして、私たちは以前のようにとまではいかないが、それなりに睦まじく過ごせるようになった。毎日顔を合わせて、他愛無いことを話したり料理を渡したり。
一般的な熟年夫婦のそれなのかも、なんて思ったりしている。一緒に住む気は無くて、でも互いに万が一のことがあれば一番に駆け付けようと決めている。
「都合の良い関係だね」
夜、お酒を傾けて私は呟く。
「そう?僕は気に入ってるよ。別々に暮らしてても家族だって感じられる」
「子は鎹、みたいな?」
「そうかも。僕ら二人だけなら…終わってたかもね」
相変わらず、裕大くんは独りモードに入っているとチャイムを鳴らしても出て来ない。私と子供は、それを「留守」と捉えて追及もしない。
子供がもう少し育ったら、このややこしい関係の説明をしようと思っている。案外、「そうなんだ」で済みそうだが。
血の繋がりと、心の繋がりと、どちらも揃ってこそ立派な家族だと思う。
同じ時間を共有して、共に苦楽を共有して。だから私たちは家族じゃないのかも、でもその考えも正しくないのかも。
意識の高い人が使いそうな言葉で言うと『パートナー』、それとも友人かも。
「…難しいね、家庭を作るって」
「みんな、当たり前のようにしてるのにね」
「ふふっ…」
歳のせいか酔いのせいか、涙がつぅと流れる。
それを裕大くんの指が拾って、
「僕たちはこれで良いんだよ」
と正当化してくれた。
この日、私は本当に久々に…キスの感触を思い出した。ここからまた恋が再燃するのかも、それも悪くないなと思えた。私が彼のベッドで寝る日もあるのかも、そう遠くないうちに。
「沙耶ちゃん、おやすみ」
顔を離した裕大くんは、私の頭をポンと叩いて玄関から出て行く。
追わない、でも離れ難い…胸騒ぎを冷やすように、酒を呷る私だった。
おわり
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