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衷心—ちゅうしん—
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しおりを挟む「先生、落ち着いて下さいませ…とりあえず横に」
「すまない、本当に…僕は、僕は…」
「私の本来の使い方ですわ、気に病むことではございません」
私は先生の人形で、遊び道具である。役割を与えられてその通り演じる女優である。
だからご母堂の代わりに抱かれた胸の痛みなんてそれこそ気の迷い、私の心が傷付いていようが関係ない。唇の端が引きつった感覚がするが、きっと上手く隠せているはずだ。私の気持ちなんて勘違い、もしくは思い上がりだ。
必死に澄まして取り繕ったが、先生は私の手を取って
「きみを、母の代わりにしてしまったことに、自分自身に憤りを感じているんだ。もうしない、許してくれ」
と涙を流した。
「…え?」
「最初は母を思い浮かべて抱いていた、良い気分だったよ、若い頃に想像したそのままだと思った。でも今ここに…掛けてしまった瞬間、サァっと霧が晴れたような感覚がした。真っ赤になった関口くんを見た瞬間、なんてことをしてしまったんだと…後悔した」
「それは、事後ゆえのというやつでは?」
「違う、こんなオジサンでも差くらい分かるさ…きみに失礼だと思ったんだ、せっかくの気遣いをしてくれて申し訳ないが…僕はこういった遊びには不向きみたいだよ」
「そんな」
もうお払い箱?養母の元へ返される?先のことをつい考えていると繋がった手に熱と力を感じる。
「関口くん、僕はその…きみに母を重ねるのはもうやめたいんだ。長年の願いが叶って、夢から覚めたみたいな晴れやかな気分だよ。死者を冒涜するのも良くないし…その、また一から、関係を築いていきたいんだ」
「先生、それは」
「きみの本分も尊重してあげたいとは思う、え、SMも…心地良いと思うし…いたぶってくれて構わない」
はて、先生は私が好んでこの仕事をしているとお思いなのだろうか。自ら志願して性技を教わり望んで生き甲斐にしていると。
「(まぁ、先生となら楽しいし…他に行くところも無いから良いんだけど…)」
宙ぶらりんなのは私の気持ち、身代わりにされてきゅうと狭くなった心はどう落とし前を付けてやろうか。
先生は私にシャワーを勧めて、こてんとベッドへ横になった。
私は仰せのままに風呂場で汗や精液を流し、これからのことを悶々と考える。
一から、それは恋愛なのだろうか。それともセックスパートナーとしての新規分野の開拓のことなのだろうか。
教え込まれた感情と価値観から生み出されたこのモヤモヤとした気持ち。
やはり正面からぶつけねばなるまい。
「よし」
いざ尋常に勝負、と意気込んでベッドルームに戻ったものの、先生はグーグー寝息を立てていらした。
「……お疲れになったんですのね」
初老の男性に抱く感情として間違いかもしれないが、私はやはりこの人を「可愛い」と思った。尊敬の念はもちろんだし労わりたいとか優しくしたいとかも思う。けれど頑張りを讃えて褒めてあげたい、ともどんな気持ちだったのか教えて欲しい、とも思う。
私は先生に布団を掛けて、横に静かに寝転んだ。そして寝顔を眺めて、よしよしと側頭部を撫でる。
「(不思議…これってやっぱり母性?)」
先生に悦んで頂くには、母子プレイを続けるのが良いのだろう。しかし私の知る母像は空想上のもので、果たして先生に満足して頂けるだろうか。
母になる予定も無いし意志も無い、経験も無いし見知ったことも無い。養母から受けた施しは実際の母親のそれとは明らかに異なるし、実母からは可哀想なことしかされていない。
ならば映画などを観て"理想の母親像"を知っていこうか。振る舞いを学習して、また研鑽に励もうか。
「(勉強の日々ね…私って努力家ぁ…)」
うとうとしては目を覚まして、しかし私は数分後には寝落ちしていた。
電気は点けっ放し、服もまともに着ずにスキンケアも怠って寝てしまった。
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