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数分後、やっと
「先生、解けたから見て」
と悠里はイスを引く。
「うん…」
「汗だくじゃん。心平先生、何してたのさ」
「悠里くんが閉じ込めたんだろ…単純に、空気がこもって暑かったんだよ…」
心平は、パタパタとTシャツの首元から冷気を入れる。
背中も胸も汗で濡れて、悠里はそれを見て「ふふ」と笑った。
「先生、辞めないでね?もし辞めたら、さっきの写真、SNSに載せちゃうし大学にも送り付けちゃうから」
「…分かったけど…目的は?」
「…先生の、慌てる顔、見るの好きなんだ♡」
「はぁ」
哀しきイジられ役の性、心平は悠里の言葉を鵜呑みにしてしまう。
だから舐められるのだ、でもそれが魅力なのだと…悠里はこっそりガッツポーズを決めた。
実は悠里は、昔から心平のことが好きだった。優しいお兄さんで、年下の子とも仲良くできる心平を慕っていた。
悠里はモテる男児だったが女の子に興味は無く、自身の性分に気付いたのは小学生の頃であった。
心平とは3学年離れているので中学も高校も一緒にはなれず、いよいよ堪らなくなり父へ「家庭教師を付けてもらえないかな」と相談した。手近なところで心平に依頼する流れにならないかなと画策したのだ。
しかし幸司は塾ではなく家庭教師を選んだという意図を曲解して、最初は大手派遣業に登録して女性教師に来てもらうよう手配した。
悠里は「あの先生はちょっと」と難癖を付けて、ひと月でチェンジを繰り返し…会社の方から「希望に添い兼ねますので解約してください」と通告されてしまった。
困った幸司は「女子大生と戯れたいんじゃないの?」とストレートに聞き、悠里も「心平くんと触れ合いたいんだ」とストレートに返した。
フットワークの軽い幸司は「そうなの?なら頼んでみよう」と早速口説き落とし、心平はここに通い出したという経緯だ。
その時、幸司は悠里の性分を理解した。そして、そこまでの抵抗も感じなかった。
父は博愛主義というか愛を重んじるタイプで、そのキッカケがワンナイトであれ貫き通すものであれ尊いものだと信じている。責任を持つのであれば愛を謳歌する人生が至高であると、家族にも伝えている。
ちなみに悠里の母・民恵はサッパリした性格で、夫のラブが重すぎるのか塩対応である。
家業は悠里が継ぐ予定だが、その後の代で他者に譲っても構わない。悠里が好きな相手と幸せになってくれればそれで良い、幸司はキューピッドとなりキッカケを作り、後は見守ってくれている。
しかし悠里はまだ17歳、ピュアな心平とはいえ決定的な行為などされては困る。先ほど部屋を覗いたのは「一線は越えるなよ」という牽制でもあった。
そして幸司は悠里の性癖もなんとなく理解しており、息子ではなく心平への配慮であった。なので扉を閉めた後は「心平くん大丈夫かなぁ…悠里の愛は重そうだからなぁ…」などと見当違いとはいえ心配していた。
さて採点を済ませた心平は、いつも通り満点の解答用紙を机上に戻す。
「…悠里くんさ、家庭教師とか要らないんじゃない?」
「あれ、お金もらってる立場なのにそんなこと言って良いの?」
「ご、ごめんなさい」
別に困窮している訳でもないのに、心平は不満を飲み込んだ。
「心平先生、また遊ぼうね」
「え、勉強だよね」
「んー?僕に言わせる気?」
「い、いいよ、言わなくて良いから」
やはりイジられている、でも強く拒否できない。
少年の股間に埋もれた写真を質にしているからだけではない。ひどく心拍を早打ちさせたハプニングが、心平にとって苦痛ではなかったからだ。
そしてむしろ楽しい…いや、そんなことは、と葛藤していると勉強時間終了のアラームが鳴った。
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